カテゴリ:成形・加工方法
ゴム押出成形とは?工程と用途
2021.05.29 シリコーンゴム、フッ素ゴム、合成ゴム、押出成形
ゴム製品を成形する方法のひとつに、ゴム押出成形があります。連続した断面や、長尺のゴム製品を作るのに有効なため、多くのゴム製品に用いられている方法です。ゴム押出成形の概要や工程、押出成形によってできるゴム製品にはどんなものがあるかを解説します。ゴムの成形方法を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
ゴム押出成形とは
ゴム押出成形とは、押出機にゴム原料を入れ、高い圧力を加えて口金から押し出し、加硫させる成形方法です。塑性加工のひとつになっています。
押出機は材料が流れるスクリュー部分、製品の形にするための先端の口金(ダイ)から構成され、以下3つの押出加工方式があります。
- スクリュー式
- ラム押出成形
- プランジャー式押出成形
一般的なゴム押出成形にはスクリュー式が取られる場合が多いです。圧縮成形用生地の予備成形などを目的とする場合は、シリンダー内に充填したゴムをピストンで押出すラム押出成形や、プランジャー式押出成形を用いることがあります。
また、異なる材質をひとつの金型で成形する二色成形もありますが、今回の記事では通常の押出成形について説明しています。
ゴム押出成形のメリット
ゴム押出成形には、以下のメリットがあります。
- 同じ断面の長物製作に向いている
- 表面が滑らかなので仕上げ不要
- 切りくずが出ない
- 多数の製品を連続して成形できる
- プレス成形よりも口金製作費用が安い
- 規格形状が豊富
- 脆弱な素材も成形可能
ゴム押し型成形は、溶かした材料を口金から押出して製品にするため、長物製作や断面が一定の成形製作に向いています。切断面は一定ですが仕上げが不要、切りくずが出ないため加工にかかる時間も全体的に短めです。多数の製品を連続して成形できるため、大量生産にも向いています。
口金型の製作費用が安い、かつ形状も豊富にあるためいろいろなゴム製品製作も可能です。押出時に素材にかかる応力が圧縮応力とせん断応力のみのため、強い圧力では壊れてしまうもろい素材の成形にも応用できます。
ゴム押出成形のデメリット
ゴム押出成形には、以下のデメリットがあります。
- 断面が複雑な形状のものは成形できない
- 精度はプレス成形に劣る
- 加硫時に圧力をかけられないため、プレス成形に比べ物性が劣る
- プレス成形には出来ない断面形状も作れる
- 自重により底面がへこむ場合がある
ゴム押出成形は、ゴム原料をそのまま押し出すため断面が複雑な形状のものの成形には向いていません。加工精度はプレス成形よりも劣ります。ゴム製品の用途や形状に応じて、押出成形とプレス成形適した方法を用いるのが重要です。
ゴム押出成形の工程
ゴム押出成形は、以下の工程で進められます。
- ゴム原料を押出成形機の材料投入口から中に入れて、押出機の加熱シリンダーで加熱して溶かし、流動化させる。
- 回転と内圧により、溶かしたゴム原料を口金へ押し出す。
- 口金から出てきたゴム原料を形状に応じた加硫方法(※1)で加硫する。
※1 押出されたゴム原料を加硫する方法は主に以下の3つがあります。
・連続加硫
・粉蒸し加硫
・巻蒸し加硫 - 加硫を経た原料を引っ張り出しながら運ぶ。
- 切断機で製品サイズにカットする。
連続加硫
連続加硫とは、UHFという機構と熱風のスチームによって未加硫品を加熱して加硫する方法です。
粉蒸し加硫
粉蒸し加硫とは、タルクなどの粉の入ったトレイに未加硫品を入れたあと、加硫缶で直接、もしくは間接で蒸気加硫する方法です。形状が複雑なとき、押出されたものを一定の長さに切断しクランク状にするとき、エンドレス加工品の形状を保持するときに利用します。
巻蒸し加硫
巻蒸し加硫とは、粉蒸し加硫と同じく直接または間接で蒸気加硫する方法です。タルクなどの粉は使わず、未加硫品を巻いた状態でトレイに置き、加硫します。
押出成形で製作されたゴム製品の用途
押出成形により製作されるゴム材質には、以下のものがあります。
シリコンゴム | 形状はソリッド、単発泡スポンジ、連発砲スポンジがあり、難燃性シリコン、高引裂きシリコン、耐熱シリコンも製造可能。 |
合成ゴム | 形状はソリッド、スポンジがある。EPDM、CR、NR、NBR、ブチルゴムなどがある。 |
フッ素ゴム | 形状はソリッドのみ。耐久性や耐薬品性が高いがコストも高い。 |
ゴム材質から成形・切断を経て以下のゴム製品が作られます。
- コンクリート型枠のペースト漏れ防止の目地材としての目的ゴム
- ゴム製のパイプ、ホース、チューブ
- 断熱チューブ
- ベルト
- シール材やクッション材として使用するゴムスポンジ紐
- 耐薬品性、耐候性、防水性などにすぐれたシーリング材のブチルシール
- ヒューム管、コンクリート管、用水溝等の継ぎ目の止水用パッキン
- 窓の枠とガラスの間にあるパッキン、冷蔵庫の扉のパッキン、自動車のドアのパッキン
- 駐車場や工場、施設などの壁、柱、天井の梁等のコーナー部分やH鋼のクッション材として使うコーナーガード
- 建材としての難燃性シリコン、高引裂きシリコン、耐熱シリコン
- 電線を保護するケーブルプロテクター
など
ゴム押出成形は大量生産にも向いている
溶かしたゴム原料を押出て成形するゴム押出成形は、長物、断面が一定のものの製造に向いています。
口金型の製造コストが低い、成形して作られたゴム原料を切断すれば同じ断面の製品を多数作れる、断面仕上げがいらない、様々な機構に対応しているなどのメリットから、大量生産にも向いています。同じゴム金型成形と比較しどの成形方法がよいか迷ったときには、製造企業の担当者に相談してみるのが有効です。