ものづくりプレス

2026-10-28

ゴムの長尺品を特注するとき|押出成形で伝える4つの項目

長いゴムの紐や帯、あるいは輪にしたリング状の部品を特注したい。ところが、押出成形で足りるのか、別の成形方法を考えるべきなのかが分からず、見積りを頼む前に手が止まってしまう。こうしたご相談は、設計や生産技術の現場でよく聞かれます。

この記事では、長尺のゴム部品を特注するときに、何を決めて何を伝えるかを整理します。成形方法の一般論は短くとどめ、依頼前に用意できる4つの項目を中心にまとめました。

作成者 柴田(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年10月28日 最終更新日 2026年10月28日 本記事は2026年10月時点の情報です 読了時間 約8分

ゴムの長尺品を特注するとき、最初に何を整理しますか?

断面の形と長さ、数量、つなぎ目の許容、使用環境の4つです。成形方法を先に決めなくても、この4つが伝われば、押出成形を入り口にするか、別の方法も並べるかを相談できます。

長尺ゴムの特注を相談する前に、断面と長さ、数量、つなぎ目の許容、使用環境の4項目を整理する流れを示す図 図1 長尺ゴムの特注で、依頼前に整理する4つの項目 STEP 1 断面と長さ 形を図か現物で 長さを分けて控える STEP 2 数量 今回と継続の 見込みを分ける STEP 3 つなぎ目 許容できるか 力が掛かるか STEP 4 使用環境 温度・接触物・ 設置の状況 成形方法は、この4項目を見たうえで一緒に絞り込みます。

「長尺」は、紐・帯・リングのどれなのかを先に書く

ひとことで長尺といっても、まっすぐな紐なのか、平らな帯状なのか、端をつないで輪にするリング状なのかで、検討の進め方が変わります。依頼文の冒頭に、どの形に近いかを書いておくだけで、最初の確認の往復が減ります。

当社の主力は金型によるゴム成形品で、その次がOリング、樹脂成型品と続きます。長尺品のご相談でも、まず形状・数量・使用条件をうかがう点は変わりません。自社の取り扱いの全体像は製品実績(ゴム成形品)のページにまとめています。

出典:富士ゴム化成「廃盤部品の再現」ページ・「製品実績」ページ(自社情報・2026年10月確認)。

押出成形と送り焼き成形は、検討の入り口でどう分かれますか?

長いひも状を口金のみで作れるのが押出成形、つなぎ合わせて金型以上の大きさにするのが送り焼き成形です。特注では、この2つのどちらを入り口にするかで、伝える内容の重みが変わります。

押出成形と送り焼き成形について、成形の考え方と長所短所を対比した図 図2 押出成形と送り焼き成形の考え方の違い 押出成形 送り焼き成形 長いひも状に成形できる 口金のみで初期投資が安価 少量生産には不向き 高い精度は出せない 繋ぎ合わせて加硫する 金型以上の紐やリングを成形 押出より製品コストが高い 納期がかかる 数量と、つなぎ目への要求の強さが、入り口を決める目安になります。

押出成形は、長いものを安価に始めやすい一方、少量には向きにくい

押出成形は、スクリューでゴム材料を押し出して、ひも状に成形する方法です。口金のみで初期投資が安価に済むのが利点で、長いものを作る入り口になりやすい成形方法です。一方で、少量生産には向かず、高い精度が出せないという面もあります。

送り焼き成形は、金型より大きいものや、つなぎ目に配慮したいときの選択肢

送り焼き成形は、繋ぎ合わせて加硫することで、金型以上の大きさの紐やリングを成形する方法です。何十mの長さでも成形でき、押出しで作ったものを接着してリングにする場合より繋ぎ目が目立ちにくく、圧力をかけられるため物性が高い、という利点があります。反面、押出成形より製品コストが高く、納期がかかります。

出典:富士ゴム化成「ゴム・プラスチックとは」ページ・「製品実績」ページ(押出し成形・送り焼き成形の定義)(自社情報・2026年10月確認)。

断面の形と長さは、どう伝えればよいですか?

断面は図か切り口の現物で、長さは「1本の長さ」と「全体で必要な長さ」を分けて伝えてください。寸法の数値を出す前の段階でも、形が伝わる資料があれば検討は進みます。

伝える項目 書き方のポイント 分からない場合
断面の形丸・角・中空など。図か切り口の写真を添える現物の端を切り出して写真に撮る
1本の長さつなぎ目なしで必要な長さか、切って使うのか使う場所の全長を測って控える
全体の長さ設備全体や取り付け範囲で必要な総量現状で使っている本数を数える
リングの場合輪にしたときの大きさ取り付け相手の部品の寸法を控える

長さは、「一続きで必要か」と「切って使うか」を分けて書く

使う場所では一続きの長さが必要なのか、受け取ったあとに切って使うのか。この違いで、検討する成形方法が変わることがあります。全体で必要な総量と、1本ごとに必要な長さを別々に書いておくと、方法の候補が絞りやすくなります。

図面がないときは、現物から起こす進め方がある

図面が残っていないという悩みは、当社の自社ページにも「廃盤し現物はあるが図面がない」と挙げられているものです。当社の廃盤部品の再現は、ヒアリング、現物調査・材料分析、設計・図面作成、試作・評価、量産・納品の5段階で進みます。長尺の紐やリングでも、現物があれば最初の段階から相談できます。

出典:富士ゴム化成「廃盤部品の再現」ページ・「3Dプリント」ページ(自社情報・2026年10月確認)。

つなぎ目は、どこまで許容できるか決められますか?

つなぎ目の「見た目」と「力が掛かるかどうか」を分けて決めてください。リング状の部品では特に、この線引きが成形方法の選び方に直結します。

つなぎ目を許容できる場合から許容しにくい場合へ向かうほど、繋ぎ目が目立ちにくい方法も含めて検討する方向を示す図 図3 つなぎ目の許容度と、検討する方向の目安 つなぎ目を許容できる つなぎ目を許容しにくい 許容の幅が狭いほど、つなぎ目の目立ちにくい方法も並べて検討します。 どちらに近いか分からない場合も、用途をお知らせください。

見た目の問題と、強度の問題は別に考える

つなぎ目が見えても問題がない用途もあれば、外から見える部分なので目立たせたくない用途もあります。また、見た目は気にしなくても、そこに引っ張る力や押す力が掛かる用途もあります。混ぜて「つなぎ目は困る」と書くと、避けたいことが伝わりません。

数量と納期の見込みは、どう伝えればよいですか?

今回の数量と、継続して使う場合の見込みを分けて伝えてください。押出成形は少量生産に向かず、送り焼き成形は押出成形より製品コストが高く納期がかかるため、数量と納期は方法選びと表裏の関係にあります。

今回の数量と、これから先の数量を別々に書く

今回は試しに少しだけ必要な場合と、今後も継続して使う場合とでは、検討の中身が変わります。確定していなくても、「増えるかもしれない」といった程度の書き方で構いません。

相見積もりのときは、数量の前提を各社でそろえる

当社は相見積もりを歓迎しています。複数社に見積りを依頼する場合は、断面の形、長さ、数量、つなぎ目の許容を同じ内容で伝えてください。数量の前提が各社でずれると、金額だけを並べても正しい比較になりません。

使用環境は、何を伝えればよいですか?

温度、接触するもの、設置の状況の3点を、分かる範囲で伝えてください。使用環境によって適したゴムの種類が変わり、成形方法の選び方にも影響するためです。

ゴムは、天然ゴムと合成ゴムに大別され、合成ゴムは配合によって多種多様な特性を発揮する、とされています。そのため、同じ「ゴム」と呼ばれるものでも、使用環境に合うかどうかは別の話になります。

温度と接触するものは、状況の説明でも構わない

高い温度だけでなく、低い温度で使う場面があるかも伝えてください。油、水、薬品のどれが付くのか、日光や雨にさらされるのかも、材質を選ぶ手がかりになります。数値が分からなければ、「冬場の屋外」「機械の発熱部のそば」といった説明で構いません。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

自社の長尺品は、特注の依頼情報がそろっていますか?

当てはまる項目が多いほど、依頼に必要な情報が欠けている状態です。下のチェックは診断ではなく、相談前の整理のためのものです。個人情報の入力はありません。

長尺ゴムの特注を依頼する前の情報チェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個依頼に必要な情報がほぼそろっています。現物や図を添えて、見積りの相談に進めます。
2〜3個形や数量か、つなぎ目と使用環境のどちらかが不足しています。足りない項目から整理してください。
4〜6個情報が不足した状態です。まず使用箇所の現物と、取り付け状態の写真を用意するところから始めることをおすすめします。

ゴムの長尺品の特注について、よくいただくご質問は?

成形方法が決まっていない場合、図面がない場合、つなぎ目の扱い、少量の場合、相見積もりについてご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。

長尺のゴムを特注したいのですが、押出成形と送り焼き成形のどちらか決まっていなくても相談できますか?
決まっていなくて構いません。断面の形、必要な長さ、数量、つなぎ目の許容、使用環境の4項目をうかがったうえで、どちらの方法を入り口に検討するかをご説明します。

図面がなく、現物の紐しかありません。それでも依頼できますか?
現物があれば、相談を始められます。当社の廃盤部品の再現は、ヒアリング、現物調査・材料分析、設計・図面作成、試作・評価、量産・納品の流れで進みます。切り口の写真と現物を添えていただくと、話が早くなります。

つなぎ目が一切あってはいけない場合は、どうすればよいですか?
そのまま、つなぎ目を許容できない旨をお伝えください。どの方法でもつなぎ目の有無や目立ち方は個別に確認する必要があるため、用途と、つなぎ目に力が掛かるかどうかを教えていただければ、方法の候補を検討します。

数量が少ないと、押出成形は頼めませんか?
押出成形は少量生産に向きにくい成形方法とされています。ただし、断面の形や長さによって事情が変わるため、一律にはお答えできません。想定数量を教えていただいたうえで、個別に検討します。

他社にも見積もりを取って構いませんか?
相見積もりを歓迎しています。断面の形、長さ、数量、つなぎ目の許容、使用環境を同じ内容で各社に伝えていただくと、見積りの前提がそろい、比較しやすくなります。

依頼するとき、何をそろえればよいですか?

図面または現物、仕様・用途、数量、材料・材質の4点があれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

長尺ゴムの特注を相談する

成形方法が決まっていない段階でも構いません。断面の形、長さ、数量、使用環境をお知らせいただければ、進め方をご提案します。

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