ものづくりプレス

2024-01-15

ガラス加工の種類と方法

私たちの日常にはなくてはならないガラスですが、その歴史は古い上にほかの素材とは異なる特殊な性質を持っています。ガラスは金属ともプラスチックとも違う特徴を持っているものの、両者と同じく加工のしやすさや加工後の製品は優れています。
当記事では、ガラスの概要や特徴・特性、ガラスの分類、ガラスの加工方法について解説します。

ガラス加工の種類と方法

ガラスについて

ガラスとは、石英や炭酸ナトリウム、石炭石などの原料を高温で溶融させた後、冷却して固めた素材のことです。「非晶質(アモルファス)」と呼ばれる、結晶ではない固体の1種です。


ガラスは素材を溶かした後に急激に冷やしてつくることから、溶液内の原子や分子、イオンなどが再配列する前に固まっています。そのため、ガラスは液体と同じく内部構造がランダムに形成されています。ガラスは固体ではなく「動きが凍結した液体」、要するに固体と液体の中間状態という特殊な物質といえるでしょう(参考:東京大学・一般社団法人日本物理会など)。
ただし、ガラス関連についてはまだ研究が進んでいる最中でもあり、今後もさまざまな新情報が出るかもしれません。


なお、原子や分子、イオンが規則正しく配列している「結晶体」には、主に金属が当てはまります。

ガラスの歴史

日本では紀元前3~1世紀前の弥生前期から、既に小さなガラスビーズがあったと言われています。実際に弥生後期の遺跡からも、土器と一緒にガラスが出土されました。遺跡からはガラス炉跡も見つかっていることから、加工技術はこの時代からある程度確立していたとみられています。


その後、再びガラスが日本に広まったのは室町時代の末期で、長崎に渡来したオランダ人から製法を学んだからだと言われています。製法自体は約4500年前から存在し、西ヨーロッパを中心に世界中へ伝わっていきました。
現在の製法でもっとも有名な宙吹きが登場したのは、紀元前1世紀頃だとされています。宙吹きが誕生したことで、それまで貴重品だったガラスは、裕福層以外の人にも行き渡るようになったと言われています。

ガラスの特徴と特性

数千年に渡って用いられているだけあり、ガラスにはさまざまな特徴や特性が存在しています。


ガラスが持つ大きな特徴は透明性です。物体が透明であるためには「可視光(人間の目に光として感じる波長範囲の電磁波)を吸収しないこと」と「可視光を散乱させないこと」が条件ですが、ガラスはそのどちらも満たしています。
また、ガラスは硬さを持ちながら、衝撃に対して脆いという特徴を持っています。


生産面での特性として挙げられるのは、加工性の良さです。ガラスは温度によって粘度が変化するため、必要な粘度になるように温度調整を行なえば、加工に応じた柔らかさを得ることができます。


このように、ガラス製品は自由な形状に成形しやすいことから、さまざまな形状の製品が市場に出回っています。成形後に切削、研磨、結晶化などを容易に行なえるのも特徴です。
ほかの特性としては、「高温下でも安定性を保てる」「電気絶縁性が高い」「科学的に安定性が高く、耐候性や気密性が良好である」「着色ができる」などが挙げられます。

成分によるガラスの分類

ガラスの分類にはいくつかありますが、当記事では成分別の分類方法を解説します。

成分によるガラスの分類は次のとおりです。


▼ソーダライムガラス
けい酸、ソーダ、石炭を主成分としたものです。ガラスの中でもっとも生産量が多いとされ、材料費も安価で済みます。コップや窓、瓶など多くのガラス製品に用いられます。


▼ホウケイ酸ガラス
けい酸、ソーダ灰、アルミナ、酸化ホウ素を主成分とし、熱膨張率の低さによる熱衝撃への強さ、絶縁性、酸性の高さが特徴です。理化学容器や耐熱ガラス容器などのガラス製品に用いられます。


▼石英ガラス
100%近いけい酸の水晶や石英の粉末を2,000℃以上で溶融・冷却して製造します。ホウケイ酸ガラスよりも熱膨張率が低く、熱に対して強いという性質があります。ほかにも透明性の高さや紫外線透過率などの特性を持つことから、レンズやプリズムに用いられます。


▼クリスタルガラス
酸化鉛を主要成分とするガラス、または酸化カリウム、酸化バリウム、酸化チタニウムなどを主要成分に含んだガラスです。非常に高い透明性や屈折率を持っていることから、アクセサリーやシャンデリア、技術品などによく使われます。


▼水ガラス
二酸化ケイ素や炭酸ナトリウムなどのアルカリを主成分とするガラスです。主に防水材や防火剤、接着剤などに用いられます。

特殊ガラス(機能ガラス)

特殊ガラス(機能ガラス)は、科学・技術方面の特殊な分野での用途がある高機能タイプのもので、例えば次の種類が存在します。


▼強化ガラス
ガラス加熱後に急速冷却を行なうことで強度を高め、通常のガラスの約3~5倍の耐衝撃性を持つとされています。


▼合わせガラス
2枚のガラスの間に樹脂やフィルムなどを挟み込み、強度や防音性能、耐貫通性能などを高めたガラスです。


▼断熱・遮熱ガラス
外部の気温変化や結露、太陽熱などを遮断する仕組みを取り入れたガラスです。


▼耐熱・防火・耐火ガラス
調理場やストーブの熱、火事の炎などに耐える耐熱・防火・耐火性能を兼ね備えています。


▼薄板ガラス
液晶ディスプレイや基盤、光学機器などに用いられる、薄型(1mm未満など)のガラスです。強化ガラスもあります。


▼アクリルガラス
アクリル樹脂を使用したガラスのことで、優れた耐衝撃性や低反射性などの特徴があります。

ガラス加工の種類と方法、特徴

ガラスを加工する方法の種類や方法、それぞれの特徴をみていきます。また、加工方法によるガラスの割れ方の違いも解説します。

ガラス加工の種類

ガラス加工の種類として、主に以下の方法が挙げられます。


▼切断・穴あけ加工
ガラスを切ったり、くり抜いたりすることで、必要な形状に成形する方法です。主な切断・穴あけ加工は次のとおりです。
・切断:ガラス切断機を用いてさまざまなサイズにカット
・穴あけ:コアドリルやガラスドリル、ウォータージェットなどを用いて穴をあける
・コーナー:ガラスコーナー部分の角の部分を丸くして安全性を高める
・円きり:正円状にガラスをカット
・切り欠き:ガラスの一部を特定の形に切り欠く
・特殊形状:楕円形や台形など、特殊な形状にカット
・ウォータージェット:水圧によってガラスを切断したり穴をあけたりする


▼強化加工
既存のガラスの強度や性能を高めるための施す加工です。主な強化加工は次のとおりです。
・風冷強化:ガラスが軟化する温度付近まで加熱した後、急速冷却を行ない、表面に圧縮応力を持たせて表面強度を高める
・ケミカル強化:特殊な液体にガラスを漬け、表面に圧縮応力を持たせて表面強度を高める


▼小口加工
切断した後のガラスを手で持っても安全になるように、削ったり角を取ったりする加工です。主な小口加工は次のとおりです。
・磨き:ガラスの切断面を磨いて凸凹をなくす
・ラウンドエッジ:ガラスの側面を丸く磨いて角を取る
・OG:高度な形状で加工することで、外観の高級感を高める
・斜面取り:ガラスの側面を斜めにカットし、ほかのガラスと突き合わせたり接着させたりしやすいように整える


▼表面加工
ガラス表面に特殊な加工を施すことで、さまざまな性能を持たせる施策のことです。主な表面加工は次のとおりです。
・擦り:粉末状の鉱物(砂)をガラス表面に吹き付けることで擦りガラスにする
・フロスト:擦りガラスと同様に砂を吹き付けた後、フッ酸で化学処理を施して乳白色のガラスに仕立てる
・エッチング:ガラス表面に柄や模様を彫る加工を施す
・研磨:ガラス表面を磨き、平面性や透過率を高める
・Vカット:ガラスの表面にV溝を彫り、装飾を施す
・広幅面取り:ガラスの角を斜めに削り、高級感を出す
・サンドブラスト:ガラス表面に砂などを吹き付け、模様を付けたり削り込んだりする


▼塗装・印刷加工
ガラスの表面に有機塗料・無機塗料を塗ったり、塗装後に焼付を行なうセラミック塗装をしたりするのが印刷加工です。
またガラス表面に、専用のプリンターで印刷を行なう印刷加工などもあります。


▼その他の加工
上記の加工方法以外にも、次のような方法もあります。
・引手:ガラスに引き手用の溝を掘る
・蝶番:ガラスに金物を取り付ける
・曲げ:ガラスを曲げて型を作る
・合わせ:ガラスとガラスの間に布や和紙、カラーフィルムなどを挟む
・ペア:さまざまなガラスを用いた複層ガラスをつくる(断熱や強化など)
・接着:ガラス同士を接着させ、箱型やその他の形を製作する
・フィルム貼り:ガラス表面にデザインフィルムや飛散防止フィルムなどを貼る

加工による割れ方の違い

通常のガラスは、衝撃の中心点から周囲にひび割れが広がった後、鋭利な角を持つ大きな破片となって散りますが、施した加工により、ガラスの割れ方にも違いが出ます。


例えばガラスの内部に金属網が入っている場合、網の効果で破片の飛び散りを抑えることが可能です。また合わせガラスであれば、ガラス同士の接着効果によって破片の落下を防ぐことができます。


このほか、強化ガラスは表面に圧縮応力、内部に引張応力を発生させていることから、通常のガラスより割れにくいという性質があります。万が一割れたとしても、通常のガラスのように大きな破片とならず、細かい粒状になって破砕します。
強化ガラス同様、倍強度ガラスも割れを防止するためのガラスです。倍と付いていますがこれは通常ガラスの倍という意味で、強化ガラスよりも耐衝撃性や耐久性は劣ります。また、強度ガラスのように細かい粒状では破砕せず、大きな破片になります。

用途に合わせた機能を付与できるガラス加工

ガラスは、数千年前から用いられてきました。ソーダライムガラスやクリスタルガラスなど、成分の違いによる種類が存在するほか、用途に合わせて耐熱性や電気的特性などを強化することも可能です。さらに、自社が求める形状や性能に合わせた加工方法を選択できるなど、加工性にも優れた材料です。
ガラス加工について相談や希望がある場合は、ガラス加工を請け負うメーカーへ一度相談してみてはいかがでしょうか。

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