ものづくりプレス
2025-07-30
生活に身近な素材「ポリエチレン(PE)」とは
ビニール袋やリサイクルマークでよく見かける「PE」の文字。これは「ポリエチレン」を意味しています。プラスチック製品の原料としてはいちばん多く使用されており、身の周りにあるプラスチックを代表する素材とも言えます。
なぜポリエチレン(PE)はこれほど汎用性が高いのでしょうか。その特性を理解すれば、理由は明らかです。
目次
■ポリエチレン(PE)はどんな素材?
ポリエチレン(PE)は、炭化水素のひとつであるエチレンを原料とした、もっとも単純な高分子構造を持つ樹脂です。成形が容易で安価なことから、さまざまな用途に使用できるコストパフォーマンスの高い素材です。食品衛生性や低温特性にも優れています。
◇ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)の違い
同じく炭素と水素から成る合成樹脂で、分子構造が異なる素材にポリプロピレン(PP)があります。ポリエチレン(PE)に次ぐ生産量で、汎用性の高さにおいても共通しています。
▼共通点
・熱可塑性樹脂で加工性が高い
・耐熱性が低い
・安価で大量生産に最適
・軽量で、水よりも比重が小さい
・電気を通さない絶縁体
・誘電率が低く、高周波材料にも使用可能(電子レンジで発熱しない)
・吸水率が低く、水を吸いにくい ・無毒、無臭
▼相違点
・硬度や耐衝撃性はポリプロピレン(PP)が優れている
・融点、熱変形温度、常用温度はいずれもポリプロピレン(PP)が優れている
・速乾性はポリプロピレン(PP)に劣る ・耐候性はポリエチレン(PE)が優れている
・ポリエチレン(PE)は半透明で乳白色、ポリプロピレン(PP)は無色に近い透明
以上のような特性を生かし、ポリエチレン(PE)は軟質フィルム・シート、水道管、ガス管、キャップなどに、ポリプロピレン(PP)は硬質シート・食品樹脂部品・発泡体、繊維や不織布、粘着テープなどに使用されます。
■ポリエチレン(PE)の性質
一般に、酸やアルカリに対して安定した性質を持っています。また分子量によってその性質が異なり、低分子量では炭化水素系の溶剤に膨潤し、反対に高分子量のものでは耐薬性が非常に優れています。さらに炭化水素やハロゲン置換炭化水素には高温で融解する、という特徴があります。
◇ポリエチレン(PE)のメリットとデメリット
ポリエチレン(PE)のメリットとデメリットには、以下のようなものがあります。
▼メリット
・軽量、安価、加工しやすい
・高い機械的強度
・優れた耐衝撃性
・低温時の機械的強度に優れている
・高い耐薬品性
・優れた耐寒性
・吸水性低いため防水性が高い
・非粘着性
▼デメリット
・耐熱性が低い
・接着性が低く、表面への印刷や塗装が困難
・熱線膨張係数が高く、成形時の収縮率が高いため、寸法が変化しやすい
・耐候性が低く、紫外線に弱い
◇種類で異なるポリエチレン(PE)の性質
ポリエチレン(PE)は密度や製造方法で分けることができます。しかし製造時の圧力により密度が変化するため、一般には密度・分子構造・製造方法を含めて分類します。
組成上は同じポリエチレン(PE)でも、密度(結晶化度)に応じて剛性や強度が高くなるなど、分子構造にによって性質が異なります。
<密度による分類の一例>
|
種類 |
特徴 |
主な用途 |
|
低密度ポリエチレン/軟質ポリエチレン (LDPE / PE-LD) |
■長所 ・柔軟性 ・耐薬品性(耐酸、耐アルカリ) ・耐水性 ・電気的絶縁特性が比較的良好 ・耐寒性(実用温度:-60度程度) ・加工性 ・無毒 ■短所 ・耐熱性 ・剛性 ・耐候性 ・着色が難しい |
・ラップフィルム ・農業用フィルム ・透明のポリ袋・包装材 ・食品容器 ・気泡緩衝材 ・電線やケーブルの被覆 ・絶縁材 ・ホース |
|
直鎖状低密度ポリエチレン/リニアポリエチレン/高圧法低密度ポリエチレン (LLDPE) |
広義的には低密度ポリエチレンと同 様の扱いで、特性もほぼ同じ 。 ■低密度ポリエチレンとの特性の違 い ・剛性が高い ・物理的強度が高い ・ヒートシール強度が高い |
|
|
高密度ポリエチレン (HDPE) |
■長所 ・低比重 ・耐薬品性(耐酸、耐アルカリ) ・耐水性 ・機械的特性(引張、衝撃など) ・耐寒性(実用温度:-80度程度) ・電気特性、絶縁性 ・燃焼カロリーが高い ・加工性 ・フィルムでのガスバリア性・防湿 性 ・無毒 ■短所 ・耐候性 ・成形収縮率が大きい ・染料による着色不可 |
・食品容器、各種容器 ・各種フィルム、袋 ・バケツ ・ガソリンタンク、灯油缶 ・コンテナ ・パイプ ・雑貨全般 ・工業部品 ・発泡材 |
低密度ポリエチレン(LDPE / PE-LD)の一種として扱われることが多い中密度ポリエチレン(MDPE)、密度により性質が変化する超低密度ポリエチレン(VLDPE)、分子量を高め、ほかのポリエチレンとは大きく性能が異なる超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)のほか、エチレンと酢酸ビニル共重合体させた合成樹脂であるEVA樹脂などが分類に含まれることもあります。
■毒性は?環境への影響は?ポリエチレン(PE)の安全性
直接食品に触れる包装や容器のほか、電気コードのカバーなどにも使用されているため、気になるのがその安全性です。人体や環境への影響、発火などの心配はないのでしょうか。
ポリエチレン(PE)は科学的に安定した構造を持つ不活性物質です。万一体内に入った場合でも、科学的変化を起こしたり消化されることがなく、そのまま体外に排出されます。皮膚刺激性や皮膚感作もほとんどないため、アレルギーの心配もありません。 また食品包装に関しては、食品衛生法による個別の規格や、樹脂生産メーカー団体が独自の安全基準を設けています。薬品包装容器に対しても、薬事法で安全基準が定められています。
耐熱温度は一般に70~90度程度と低く、加熱により軟化・収縮して変形しますが、成分が溶け出す心配はありません。ポリエチレン(PE)単体を燃やした場合でも、発生するのは二酸化炭素と水、熱だけで、塩化水素ガスやダイオキシンなどの有害な物質は出ません。近年では、熱に強く、耐燃性が高いポリエチレンなども開発されています。 さらにポリエチレン(PE)そのものは電気を通さない性質で、絶縁性などの電気特性にも優れています。
このように、ポリエチレン(PE)は人体や環境などに対して、安全な物質と言えます。
■レジ袋から大型タンクまで。ポリエチレン(PE)の幅広い用途
プラスチック製品の中で、ポリエチレン(PE)がもっとも使用されている理由のひとつが、加工のしやすさです。射出(インジェクション)成形、ブロー(中空)成形、押出(チューブ)成形など、一般的な加工方法にはすべて対応します。
代表的な加工方法を使用して、ポリエチレン(PE)自体の物質特性に応じた次のような製品が主につくられています。
◇主な加工製品
▼射出成形
各種包装容器、日用品、雑貨、おもちゃ、食器、コンテナなど
▼吹込(ブロー)成形
小型ボトル容器、化学薬品容器、ドラム缶、ポリタンク、自動車燃料タンク、紙容器の内装缶など
▼押出成形
ラップ、各種フィルム(工業用、医療用、農業用など)、飲料紙容器内側用コーティング用シート、パイプ、糸・繊維、ロープ、網、電話線などの被覆用など
◇その他の用途
▼リサイクル
ポリエチレン(PE)はリサイクル可能な資源です。プラスチックのリサイクル方法は3種類ありますが、そのうち、ポリエチレン(PE)が適しているのは、マテリアルリサイクルとサーマルリサイクルです。
▽マテリアルリサイクル
粉砕、溶融し、新たな製品に加工する再生方法です。
■主な再生品
パレット、コンテナ、容器、建築資材、自動車部品、容器包装など
▽サーマルリサイクル
焼却の際に発生する熱エネルギーを回収して再利用する方法(固形燃料化)です。
特に軟質ポリエチレンの発熱量は灯油並みに高いとされており、ゴミ焼却の助燃材としても利用されています。
■スーパーエンプラとしてのポリエチレン
ポリエチレン(PE)は、安価で汎用性の高い樹脂です。しかし近年、耐熱性や機械的性質を強化した高機能樹脂である「スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)」としてのポリエチレンが次々に開発。今後はさらなる使用用途の拡大が期待されています。
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