ものづくりプレス

2025-01-20

ゴム業界の今後の展望:エコ素材や再生ゴムがもたらす未来

ゴムは私たちの生活に欠かせない素材の一つです。その優れた柔軟性や衝撃吸収性、電気絶縁性などの特性から、さまざまな製品に利用されています。しかし、その生産および使用の過程で、環境破壊や社会的な課題が発生していることをご存じでしょうか。
ゴムの需要増加は、森林の減少やタイヤ摩耗による海洋プラスチック汚染といった問題を引き起こしています。本記事では、ゴムの生産や使用に伴う課題を整理し、持続可能なゴムの生産と利用を目指した取り組みについて解説します。


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ゴムの生産と用途

ゴムは、その柔軟性や復元力、衝撃を吸収する性質から、産業界で幅広い用途に活用されています。また、電気絶縁性にも優れており、自動車部品、家電製品、医療機器、建設資材など多岐にわたる分野で必要不可欠な素材となっています。


ゴムの種類と特徴
ゴムは、主に以下の2種類に分類されます。


1.天然ゴム
ゴムの木(Hevea brasiliensis)の樹液を採取して凝固させたもの。タイヤ生産が主な用途で、世界の天然ゴム生産量の70%以上がタイヤ産業で使用されています。


2.合成ゴム
石油由来のナフサを基に化学的に合成され、さまざまな特性を持つ100種類以上の製品が存在します。用途に応じて配合を調整し、特定の性能を最大限に発揮できるように作られています。


タイヤ製品では、一般的に天然ゴムと合成ゴムを組み合わせて使用します。その割合は、天然ゴム45%:合成ゴム55%程度とされています。ゴムの需要は年々増加しており、2016年には天然ゴム約1,260万トン、合成ゴムを含めた総量は約2,700万トンに達しました。


ゴムの木の栽培が引き起こす環境破壊と社会的問題

天然ゴムの需要増加に伴い、大規模なゴム農園の設立が進んでいます。しかし、この急速な拡大は深刻な環境問題を引き起こしています。


森林の減少と生態系への影響
タイは天然ゴムの主要生産国であり、2001年から2014年の間に約160万ヘクタールの新しいゴム農園が設立されました。この結果、約120万ヘクタールの森林が失われ、森林減少率の増加に拍車をかけています。森林破壊は、二酸化炭素の吸収能力の低下、生物多様性の損失、気候変動の加速といった影響をもたらします。


タイヤ摩耗による海洋プラスチック汚染
タイヤが摩耗すると微細なゴム片(タイヤくず)が発生します。このゴム片は風や雨により川や海へと運ばれ、海洋プラスチック汚染の原因の一つとなっています。この汚染は海洋生態系に深刻な影響を与えるだけでなく、漁業や観光業にも悪影響を及ぼしています。


持続可能なゴム生産と利用に向けた取り組み

ゴム産業における環境負荷を軽減し、持続可能性を追求するためのさまざまな取り組みが進められています。


世界自然保護基金(WWF)の活動 WWFは、持続可能なゴム生産を目指し、企業や地域社会と協力して以下のプロジェクトを展開しています:
・インドネシアのスマトラ島とカリマンタン島での取り組み
約88,000ヘクタールのエリアで、自然林と野生生物の保護を行うとともに、持続可能な農園の設立を進めています。このプロジェクトでは、地域住民24,000人の生活向上も目指し、土地の権利確認や技術支援、インフラ整備を実施しています。


グローバルプラットフォームの設立
2018年には、天然ゴムの持続可能な生産を推進するため、「持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム(GPSNR)」が設立されました。この組織には11のタイヤメーカーが参加し、持続可能な資源利用や環境保護に取り組んでいます。


再生ゴムや生分解性タイヤの開発
日本の大手タイヤメーカーを含む各国企業は、再生ゴムの利用促進や生分解性タイヤの開発に注力しています。これらの技術は、ゴム産業が抱える環境問題の解決策として期待されています。

持続可能なゴム産業の未来へ向けて

ゴムの生産と使用が引き起こす環境・社会的課題に対処するためには、産業界の取り組みだけでなく、消費者一人ひとりの意識変革も重要です。持続可能な製品を選び、責任ある行動を取ることで、ゴム産業の課題解決に寄与することができます。
環境保護と社会的責任を考慮した選択が、未来の地球を守る鍵となります。私たちの生活に欠かせないゴムを、より持続可能な形で利用するための努力を続けましょう。