ものづくりプレス
2026-09-19
全数検査は依頼できる?|抜取りと全数を分ける3基準と頼み方
重要な部品だから全数検査にしてほしい。しかし頼めるのか、頼んだら単価がどう変わるのか、そもそも全数にすれば安心なのか。品質保証や調達の担当者が発注のたびに迷う点です。
この記事では、全数検査を依頼できるかという問いに答えたうえで、抜取りと全数をどう分けるかの3つの基準と、依頼のときに決めておくことを整理します。当社の検査体制の公開情報を土台にしています。
作成者 橋本(富士ゴム化成株式会社) 会社情報
作成日 2026年9月19日 最終更新日 2026年9月19日 本記事は2026年9月時点の情報です 読了時間 約8分
全数検査は、依頼できますか?
できます。当社は品質保証部を設置し、ご要望に合わせて抜取り検査と全数検査を自社内で行える体制を整えています。どちらにするかは発注側のご要望で決まります。依頼の前に、何を全数で見たいのかを決めておくことが実務上の出発点です。
当社の会社情報ページには、次のように記載しています。
「品質保証部を設置し、ご要望に合わせて抜取り検査/全数検査を自社内で実施」
全数検査は「見つける」手段で、「作らない」手段ではない
全数検査にすると不良品がお客様の手元に届く可能性は下がります。ただし検査は出荷前に不良を見つける工程であって、不良を発生させない工程ではありません。検査項目にない不良は全数で見ても通り抜けます。そのため、何を検査項目にするかを決めることが全数か抜取りかを決めることより先に来ます。
「全数」の対象は、部品ではなく検査項目で考える
全数検査と言うとき、その部品のすべての項目を全数で見ると考えがちです。実務では、寸法のうち機能に効く1〜2か所を全数で見て、外観は抜取りで見るといった組み合わせが多くなります。部品単位でなく項目単位で全数か抜取りかを決めると、検査の手間と見つけたい不良の両方に合わせられます。
出典:富士ゴム化成「会社情報」ページ(品質保証部・抜取り検査/全数検査)(自社情報・2026年9月確認)。
抜取りと全数は、何で分けますか?
部品の重要度、不良が出たときの影響、検査項目の測りやすさの3つです。3つとも高い項目は全数、3つとも低い項目は抜取りが出発点になります。中間の項目は、過去に不良が出たかどうかで寄せる側を決めます。
| 基準 | 全数に寄せる条件 | 抜取りに寄せる条件 |
|---|---|---|
| 部品の重要度 | 密封・安全・停止に直結する部位 | 外観や補助的な部位 |
| 不良の影響 | 設備停止・回収・再組立が必要 | 交換で済む・組立前に気づける |
| 測りやすさ | 短時間で数値化できる寸法・硬度 | 判定に時間がかかる・破壊が必要 |
機能に効く部位だけを全数にする
ゴム部品の寸法は、すべてが同じ重みではありません。相手部品と接する面や密封する部分の寸法は機能に直結しますが、それ以外の寸法は多少ずれても機能に影響しないことがあります。機能に効く部位を図面の段階で特定しておくと、全数で見る項目が自然に絞れます。この考え方はゴム部品の図面公差は「1段緩める」が正解で整理しています。
影響の大きさは「見つかる場所」で変わる
同じ不良でも、組立前に気づけるものと、設備に取り付けて運転してから分かるものでは影響が違います。後者は設備停止や再組立を招くため、全数に寄せる理由になります。前の部品でどんな不良がどこで見つかったかを振り返ると、この基準は具体的になります。
測りにくい項目は、検査以外の手段で担保する
圧縮したときの戻り方や長期使用での劣化は、出荷時の検査では測れない項目です。こうした項目は検査で担保するより、材料の選定と試作評価で担保するほうが実務的です。当社では量産に移る前に試作で評価する段階を置いています。
なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。
検査水準は、どう決めますか?
検査項目、全数か抜取りか、抜取りなら水準、記録の残し方の4つを発注の段階で決めます。この4つが決まっていないと、見積りの前提がそろわず、納品後に「思っていた検査と違う」というずれが起きます。決まっていない項目は依頼のときに未定と伝えていただければ一緒に整理します。
抜取りの水準は、数量と過去の不良で決める
抜取り検査にする項目は、どれくらいの割合を見るかを決める必要があります。数量が多いほど、また過去に不良が出た項目ほど、見る割合を上げるのが一般的な考え方です。水準の決め方はゴム・樹脂部品の検査水準の考え方にまとめています。
記録は「何を、どの様式で、いつまで」を決める
検査をしても、記録が残っていなければ後から確認できません。納品時に添える書類の種類、測定値を残すか合否だけを残すか、保管期間をどうするか。この3点を発注の段階で決めておくと、不具合が出たときの原因確認が早くなります。初回納品時の証拠についてはFAI・PPAPの最小限の証拠も参考になります。
出典:富士ゴム化成「廃盤部品の再現」ページ掲載の再現フロー(試作・評価→量産・納品)(自社情報・2026年9月確認)。
全数検査にすると、何が変わりますか?
出荷前に不良を見つける確率が上がり、検査の手間が増えます。手間の増え方は項目数と測りやすさで決まるため、項目を絞ることが両立の鍵になります。全数にすれば単価がいくら変わるかは品物ごとに異なるため、見積りの中で明示しています。
外観の全数検査は、判定基準を先に決める
外観は寸法と違って数値で合否を決められないため、全数で見ても判定がぶれます。傷や色むらのどこまでを許容するかを、限度見本や写真で決めておくと判定がそろいます。ゴム部品の外観不良の見分け方はゴム部品の外観不良で解説しています。
検査の様子は、現地で確認できる
当社では必要に応じて工場視察や監査に対応しています。検査の実施場所、使っている測定器、記録の残し方を現地で見ていただくと、全数か抜取りかの判断に必要な情報がそろいます。
出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」FAQ(工場視察・監査の対応)(自社情報・2026年9月確認)。
自社の検査要求は、どこまで整理できていますか?
当てはまる項目が多いほど、依頼前に検査項目を整理しておくと見積りと納品物の前提がそろいます。下のチェックは診断ではなく、検査水準の4段階のどこが未定かを確かめるための整理です。個人情報の入力はありません。
検査要求の整理チェック(6項目)
当てはまるものにチェックを入れてください。
当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。
当てはまった数でみる読み取り方
| 当てはまる数 | 読み取り方 |
|---|---|
| 0〜1個 | 検査要求が整理されています。見積り依頼に進めます。 |
| 2〜3個 | 一部が未定です。機能に効く部位の特定から埋めると、全数の対象が絞れます。 |
| 4〜6個 | 整理から始める段階です。まず前の部品の不良がどこで見つかったかを書き出すことをおすすめします。 |
全数検査について、よくいただくご質問は?
依頼の可否、全数と不良ゼロの関係、分け方、記録、現地確認についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。個別の品物については、図面か現品を見たうえでお答えしています。
全数検査を依頼することはできますか?
できます。当社は品質保証部を設置し、ご要望に合わせて抜取り検査と全数検査を自社内で行える体制を整えています。どの項目を全数で見るかを決めていただくと、検査の設計がしやすくなります。
全数検査にすれば不良はゼロになりますか?
全数検査は「出荷前に見つける」手段であって、不良を作らない手段ではありません。検査で見つかる項目と見つからない項目があるため、何を検査項目にするかが結果を左右します。
どの部品を全数、どの部品を抜取りにすればよいですか?
部品の重要度、不良が出たときの影響、検査項目の測りやすさの3つで決めるのが実務的です。機能に直接効く部位は全数、外観など影響の小さい項目は抜取りという分け方が出発点になります。
検査の記録はもらえますか?
検査記録の残し方はご要望に合わせて相談しています。納品時に添える書類の種類と様式を、発注の段階で決めておくことをおすすめします。
検査の様子を見に行くことはできますか?
できます。必要に応じて工場視察や監査に対応しています。検査の実施場所や記録の残し方を現地で確認いただけます。
検査を含めて見積りを依頼するとき、どう進めればよいですか?
図面か現品、使用条件、数量に加えて、全数で見たい項目と記録の要望をお問い合わせフォームからお送りください。種別は「見積りのご依頼」をお選びいただき、検査の要望は決まっている範囲で構いません。未定の項目は未定とお書きいただければ、確認とお打ち合わせで一緒に詰めます。
| そろえるもの | 内容 | 無い場合 |
|---|---|---|
| 図面 | 寸法や形状が分かるもの | 現品があれば現品で代替できます |
| 仕様・用途 | どこに使い、何を止めるか | 使用条件を口頭でうかがいます |
| 数量 | 今回必要な数と年間見込み | 概算でかまいません |
| 材料・材質 | ご希望の材質があれば | 使用条件から候補をご提案します |
検査の要望は見積りの前提に直接関わるため、相見積もりを取る場合は同じ内容を各社に出すことをおすすめします。当社は相見積もりを歓迎しています。
検査の要望を含めて見積りを依頼する
全数で見たい項目が決まっていない段階でも構いません。品物の図面か現品と使い方をお知らせいただければ、検査項目の候補をご提示します。
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