ものづくりプレス

2026-08-26

金型によるゴム成形品とは|コンプレッション・射出・押出|富士ゴム化成

金型によるゴム成形品とは|コンプレッション・射出・押出/焼付・インサート成形の違いと選び方

「ゴム部品は金型で作る」とは聞くものの、コンプレッション・射出・押出の違いや、どの形状・ロットから金型が向くのかが分からない。その状態のまま見積もりを取ると、工法の選択を誤り、コストや納期で損をしてしまうことがあります。

ゴム部品を設計する立場からすると、材質や形状には詳しくても、「どうやって作られるのか」という製造工法の部分は、意外とブラックボックスになりがちです。しかし、成形工法の特性を理解しておくと、設計の段階で「作りやすく、コストの合う形」を選べるようになります。工法を知ることは、より良い設計への近道でもあるのです。

逆に、工法を知らないまま設計を進めると、思わぬところでつまずくことがあります。図面上は問題なくても、「その形状では安定して成形できない」「その公差は金型成形では現実的でない」といった指摘を、後の工程で受けることになりかねません。そうなると設計に差し戻され、スケジュールにも影響します。工法の基礎を押さえておくことは、こうした手戻りを防ぐ意味でも役立ちます。ここでは、専門的になりすぎない範囲で、設計者が知っておくと役立つ工法の勘所を整理します。

結論です。金型ゴム成形は、安定した品質と単価で量産できる主力の工法です。 形状・要求精度・ロットに応じて成形方式を選び、試作段階では切削加工や3Dプリントを補助的に併用します。この記事では、代表的な成形方式の違いと選び方、そしてゴムならではの成形の勘所を整理します。

本記事は、ゴムの材料・成形の観点からの解説です。公差やシールの成立、耐久性の最終判断には、相手部品・取付側・製品全体の条件との擦り合わせが前提になります。富士ゴム化成は、ゴム側の知見でお客様の設計判断を支える立場から解説しています。

金型ゴム成形の全体像:主要な成形方式

ゴムの金型成形には、代表的な方式がいくつかあります。それぞれに向き不向きがあり、部品の条件によって使い分けられます。

コンプレッション成形(圧縮成形) は、金型に材料を入れて加熱・加圧する、最も基本的な方式です。構造がシンプルで、比較的大きな部品や、少〜中量の生産に向きます。金型費を抑えやすいのも特長です。一方で、複雑な形状や、非常に精密な寸法が求められる部品では、他の方式のほうが適する場合があります。

射出成形 は、材料を金型内に射出して充填する方式です。複雑な形状や、量産に適しています。サイクルが速く、安定した品質で数を作れる反面、金型の構造が複雑になり、初期費用は高めになる傾向があります。数がまとまる部品ほど、この方式のメリットが生きてきます。

押出成形 は、一定の断面形状を連続して成形する方式です。チューブ、ホース、シート、パッキンの長尺材など、「同じ断面がずっと続く」部品に用いられます。切断や後加工と組み合わせて、さまざまな部品に展開されます。

どの方式が向くかは、形状・肉厚・ロットで決まります。同じ部品でも、数が少なければコンプレッション、量が多く形状が複雑なら射出、長尺の断面形状なら押出、といった具合に、条件によって最適解が変わります。設計の段階で「この部品はどの方式で作られるのか」を意識できると、形状やロットの前提を踏まえた、現実的な設計ができます。

金型ゴム成形の強み:焼付・インサート成形

ゴム単体の成形にとどまらないのも、金型成形の強みです。ゴムと金属を組み合わせた部品を、一体で作ることができます。

焼付成形は、ゴムと金属を接着一体化する方法です。金属の表面に接着処理を施し、その上にゴムを成形して密着させます。防振ゴム、ゴムロール、金属フランジ付きのシールなど、「金属とゴムが一体になった部品」を作れます。振動や荷重がかかる部位で、ゴムと金属の界面が剥がれないことが求められる用途に適しています。

インサート成形は、金属部品(インサート)を金型内にあらかじめセットし、その周囲にゴムを成形して一体化する方法です。金属の芯を持つゴム部品や、取付用の金具が埋め込まれた部品などを、一工程で作れます。後から接着や組み立てをする手間が省け、部品としての信頼性も高まります。

私たち富士ゴム化成は、これらの成形技術に対応しています。ゴムと金属の一体部品を検討されている場合は、設計の段階からご相談いただけます。「ゴムと金属をどう組み合わせるか」は設計の自由度に関わる部分なので、早めに相談いただくほど、良い設計につながります。

金型ゴム成形が向く部品・向かない部品

金型成形が向くのは、パッキン、Oリング、ダイヤフラム、防振ゴムといった、繰り返し使われる定番部品や、一定量を安定して作りたい部品です。金型を作れば、同じ品質のものを繰り返し量産できます。

一方で、ごく少量の試作や、形状を確認したいだけの段階では、金型を作る前に切削加工や3Dプリントで対応するほうが合理的です。金型費をかけずに、素早く形を確かめられるからです。

つまり、量産は金型、試作・少量は切削・3D、という役割分担を意識すると、無駄がありません。この使い分けは、設計から量産までのコストとスピードに直結します。私たちは試作から量産までを社内で連続して対応できるため、「まず試作で確かめ、固まったら金型で量産する」という流れを、一貫してお引き受けできます。

▶ 試作から量産の流れを見る ゴム・プラスチック(成形サービス)のページで、主力サービスの全体像をご覧いただけます。

金型成形の精度はどう決まるか

ここは設計上、特に重要な点です。金属加工に慣れた方ほど、最初に戸惑うところかもしれません。

ゴムは材質・配合によって収縮率が異なります。 金属のように削り出して寸法を出すのではなく、金型の中で成形されたゴムが冷える際に収縮するため、その収縮を見込んで金型を作り込みます。同じ形状の部品でも、材質が変われば収縮量が変わり、金型の寸法も変える必要があります。「材質を後から変えれば金型もそのまま」とはいかないのは、このためです。

なお、金型成形の公差は、一般にVDI規格(ドイツ技術者協会の規格)に基づく金型公差で管理されます。よく「±0.1mm」という数値を目にしますが、これは切削加工での精度指標であり、金型成形にそのまま当てはまるものではありません。ゴムの金型成形と切削加工は、そもそも公差の決まり方が違うのです。この違いは設計・調達の現場で混同されやすく、混同したまま図面を書くと、実態に合わない公差を指定してしまうことになります。この点は重要なので、別の記事で詳しく解説しています。

加硫という工程が品質を決める

ゴムに弾力と強度を与えるのが「加硫」という工程です。加硫は、ゴム分子を橋渡し(架橋)させる化学反応で、温度・時間・圧力の管理が、仕上がりの物性を左右します。

加硫が足りなければ、ゴムは十分な強度や弾力を得られません。逆に過剰であれば、硬く脆くなってしまいます。適切な加硫条件は材質ごとに異なり、この見極めが品質を大きく左右します。金型成形は、この加硫を金型の中で行う工程だとも言えます。つまり、金型成形の品質は、金型の精度だけでなく、加硫条件の管理にも支えられているのです。加硫については、その仕組みや温度管理を別記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧いただくと理解が深まります。

材質と工法は切り離せない

もう一つ、設計の段階で意識しておきたいのが、材質と工法は切り離して考えられないという点です。

ゴム材料には、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴムなど、さまざまな種類があります。それぞれ耐熱性、耐油性、耐薬品性、耐候性などの特性が異なり、用途に応じて使い分けられます。そして、材質によって成形のしやすさや加硫条件が変わるため、選んだ材質が成形工法にも影響します。

たとえば、ある材質は流動性が高く射出成形に向く一方、別の材質は流動性が低くコンプレッション成形が適する、といった具合です。設計の段階で「この用途にはこの材質」と決めるとき、その材質がどの工法で、どのくらいのコストで作れるのかまで見通せると、より現実的な設計になります。

ここで大切なのは、材質選定を一人で抱え込まないことです。私たち自身は材料の配合を行いませんが、用途と要求性能をうかがえば、材料メーカーと連携して適した市販材料の候補を整理し、その材質に合った成形工法まで含めてご提案できます。「性能・コスト・作りやすさ」の三つを同時に満たす着地点を、一緒に探すことができます。

▶ 材料の選び方を確認する 耐薬品性・耐油性で選ぶゴム材料 完全早見表(記事)で、用途に合う材質を確認できます。

金型の費用・納期の決まり方

最後に、費用と納期の考え方に触れておきます。金型成形では、初期に金型費がかかり、その後は一個あたりの単価で量産します。

この構造から、ロットが増えるほど一個あたりのコストは下がり、ある数量を超えると金型化したほうが得になります。少量であれば金型を作らずに切削加工などで対応したほうが安く済むこともあり、この損益分岐は形状・材質・数量によって変わります。設計の段階で「この部品はどのくらいの数量で、どの工法が合うのか」を意識できると、コストの見通しが立てやすくなります。

納期については、金型の設計・製作に一定の期間が必要です。ただし、立ち上げ全体の期間は、金型加工そのものより、仕様が固まるまでのやり取りに左右される部分が大きくなります。この点は、金型立ち上げの期間を扱った別記事で詳しく解説しています。

設計者が押さえておきたい3つのチェックポイント

最後に、ゴム部品を金型成形で作ることを前提に設計する際、押さえておくと役立つ観点を3つに整理します。

ひとつめは、成形しやすい形状か。極端に薄い部分と厚い部分が混在していないか、無理な深さのリブや突起がないか。肉厚の差が大きいと、ひけ(へこみ)や充填不良の原因になります。

ふたつめは、公差が工法に合っているか。金型成形の部品に、切削加工前提の厳しい公差を指定していないか。ゴムは収縮し、温度で寸法が動くため、金属と同じ感覚の公差は現実的でないことがあります。

みっつめは、材質と工法・コストが噛み合っているか。選んだ材質が、想定する工法と数量に合っているか。性能だけで材質を決めると、成形性やコストで無理が生じることがあります。

これらは、設計が固まる前に相談いただければ、私たちの側から成形の観点でお手伝いできる部分です。「作れる図面」から「作りやすく、コストの合う図面」へ。その一歩を、設計の早い段階からご一緒できればと思います。

よくあるご質問(FAQ)

Q. どのくらいのロットから金型が得ですか?

形状・材質・数量によって損益分岐が変わります。数量をお知らせいただければ、目安をご案内します。

Q. モールドと金型は何が違いますか?

広義ではほぼ同じ意味で使われます。詳しくは既存記事「モールドとは?金型との違い」をご覧ください。

Q. ゴムと金属を一体化できますか?

焼付成形やインサート成形で対応しています。防振ゴムや金具付き部品などが該当します。

Q. 試作品と量産品で物性は変わりますか?

3Dプリントによる試作品は、量産品と物性が異なります。形状確認の手段としてお考えください。

Q. 材質を後から変えると、金型はそのまま使えますか?

材質により収縮率が異なるため、寸法への影響を確認する必要があります。金型の補正が必要になる場合があります。

最適な工法・材質は、図面が固まる前のご相談ほど織り込みやすくなります。作りやすくコストの合う設計を、一緒に詰めさせてください。

平日9:00〜17:30/図面・資料の添付にも対応しています。

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金型によるゴム成形品とは

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