ものづくりプレス

2026-08-27

ゴム部品の公差設計|金型のVDI規格と切削の±0.1mmの違い|富士ゴム化成

ゴム部品の公差設計|金型成形のVDI規格と切削加工の±0.1mmはどう違うか

ゴム部品の図面に、公差を「とりあえず±0.3mm」と書いていないでしょうか。金属加工の感覚でゴムの公差を決めると、組立不良や漏れの原因になります。というのも、ゴムは金属とは公差の決まり方そのものが違うからです。

さらに厄介なのは、同じ「ゴム部品」でも、金型成形で作る場合と切削加工で作る場合とで、公差の考え方がまったく異なるという点です。この違いを知らないまま図面を書くと、現実には成り立たない公差を要求してしまい、見積もりの段階で「その精度は出せません」と差し戻されることになります。

結論を先にお伝えします。金型成形品(Oリングなど)の公差は、VDI規格に基づく金型公差で決まり、材質・配合によって収縮率が異なります。一方、±0.1mmは切削加工で実現する精度指標であり、両者は別物です。 この記事では、この違いを整理したうえで、Oリングの溝設計についても、ゴム側から見た留意点を補足します。

設計を担当されている方にとって、公差は「厳しくすれば品質が上がる」と考えがちな項目かもしれません。しかしゴムの場合、実態に合わない厳しい公差は、コストと納期を押し上げるだけで、必ずしも品質の向上につながりません。むしろ、ゴムの性質を理解したうえで「ちょうどよい公差」を設定することが、品質・コスト・納期のすべてを両立させる鍵になります。その前提として、金型成形と切削加工の違いを、まず正しく押さえておきましょう。

本記事は、ゴムの材料・成形の観点からの解説です。公差やシールの成立、耐久性の最終判断には、相手部品・取付側・製品全体の条件との擦り合わせが前提になります。富士ゴム化成は、ゴム側の知見でお客様の設計判断を支える立場から解説しています。

ゴム部品の公差を決める4つの要因

まず、ゴムの公差が何によって決まるのかを押さえましょう。金属加工では、削り出しの精度がほぼそのまま寸法精度になりますが、ゴムはそう単純ではありません。次の4つの要因が絡み合って、最終的な寸法が決まります。

第一に、成形方式です。金型で成形するのか、切削で削り出すのかによって、公差の考え方が根本から変わります。

第二に、材質・配合による収縮率です。ここが金属加工との最大の違いです。ゴムは金型の中で成形されたあと、冷える際に収縮します。その収縮量は材質によって異なり、さらに同じ材質でも配合によって変わります。

第三に、温度変化です。ゴムは金属よりも熱膨張・熱収縮が大きく、使用環境の温度によって寸法が動きます。

第四に、経時変化と測定時の変形です。ゴムは柔らかいため、測定の押し当て方ひとつで数値が変わることもあります。

これらを踏まえると、「ゴムの公差は金属より一段難しい」ことが見えてきます。だからこそ、成形方式に応じた正しい考え方が必要になります。

▶ 試作から量産の流れを見る ゴム・プラスチック(成形サービス)のページで、主力サービスの全体像をご覧いただけます。

金型成形の公差:VDI規格に基づく金型公差

Oリングやパッキン、ダイヤフラムといった量産部品の多くは、金型成形で作られます。この金型成形における公差は、一般にVDI規格(ドイツ技術者協会の規格)に基づく金型公差で管理されます。

ここで重要なのは、「ゴムの寸法を直接測って合わせる」のではなく、「金型の側で、ゴムの収縮を見込んで作り込む」という考え方です。前述のとおり、ゴムは成形後に収縮します。もし収縮を見込まずに、狙いの寸法どおりに金型を作ってしまうと、出来上がったゴム部品は収縮した分だけ小さくなってしまいます。そこで、あらかじめ収縮量を上乗せした寸法で金型を設計するのです。

そして、その収縮量は材質・配合によって異なります。ある材質では大きく縮み、別の材質ではあまり縮まない。同じ材質名でも、配合が違えば収縮率が変わります。だからこそ、材質が決まらないと、金型の寸法補正も決まりません。 「材質は後で決めればいい」と金型の話を先に進めてしまうと、材質確定後にやり直しになりかねない、というのはこのためです。

なお、ここで前提としてお伝えしておくと、私たち自身は材料の配合を行いません。 配合は材料メーカーの領域です。私たちは、材料メーカーから供給される材料の収縮特性を踏まえて、金型を設計・製作します。

切削加工の公差:±0.1mmの世界

一方、切削加工で作るゴム部品もあります。試作や少量生産、あるいは金型を作るほどの数量が出ない部品では、材料を削り出して形にすることがあります。

この切削加工では、±0.1mm程度の精度に対応できます(私たちの場合、旋盤で最大φ250まで対応しています)。「±0.1mm」という数値は、しばしばゴム加工の精度として紹介されますが、正確にはこの切削加工に限った指標です。

ここを混同すると、設計の現場で問題が起きます。たとえば、Oリングのような金型成形品に対して「±0.1mmでお願いします」と指定してしまうケースです。Oリングは金型成形で作るため、公差はVDI規格に基づく金型公差で管理されます。切削加工の±0.1mmという指標を、そのまま金型成形品に当てはめることはできません。「Oリングは切削ではなく金型成形」「±0.1mmは切削加工の話」――この2点を押さえておくだけで、実態に合わない図面指示を避けられます。

▶ よく似た製作事例を見る 製品実績のページで、同じような部品の製作事例をご覧いただけます。

材質が変われば、これだけ寸法が変わる

「材質・配合によって収縮率が異なる」と言われても、実感がわきにくいかもしれません。イメージをつかむために、考え方を整理しておきます。

ゴムは、金型の中で高温で成形され、その後、常温まで冷える過程で縮みます。この縮む割合が収縮率です。収縮率が大きい材質は、金型から取り出したあとに大きく縮むため、あらかじめその分だけ大きめに金型を作っておく必要があります。収縮率が小さい材質なら、上乗せする分も小さくて済みます。

問題は、この収縮率が材質ごとに違い、同じ材質名でも配合によって変わることです。つまり、同じ金型を使っても、流し込む材質が変われば、出来上がる部品の寸法が変わってしまうのです。「以前と同じ金型があるから、別の材質でも同じ寸法で作れるはず」という思い込みは、ここでつまずきます。

この性質は、設計だけでなく、材料を変更するときにも効いてきます。コストダウンや入手性の理由で材質を変える場合、金型の補正が必要になることがあります。材質変更を検討する際は、寸法への影響を必ず確認する――これは、ゴム部品ならではの鉄則です。

Oリング溝設計の基礎

公差の話と切り離せないのが、Oリングの溝設計です。Oリング自体の寸法が正しくても、それをはめ込む溝の設計が適切でなければ、シール性能は出ません。なお、溝は相手部品(取付側)の設計領域です。ここでは、ゴム側の視点から押さえておきたい留意点をお伝えします。実際の溝寸法は、使用圧力・相手部品の材質・組付け方法など、取付側の条件と合わせて最終決定してください。

Oリングは、溝の中で適度につぶされることで、隙間を密封します。このつぶれ具合を「締め代(つぶし代)」と呼びます。締め代が不足すれば密封できずに漏れ、逆に過大であれば組付けが困難になったり、ゴムに無理な力がかかって早期に劣化したりします。

溝設計では、用途に応じた寸法の考え方が必要です。内圧を受ける用途、外圧を受ける用途、回転運動を伴う用途、往復運動を伴う用途では、それぞれ適した溝の寸法が異なります。一般には、JIS B 2401などの規格を参考にしながら、締め代と、ゴムが逃げるための空間(逃げ)のバランスを取っていきます。

Oリング溝設計でやりがちな5つのミス

実務でよく見られる失敗を、5つ挙げておきます。

① 締め代の不足。つぶし代が足りず、密封しきれずに漏れるケースです。

② 締め代の過大。逆につぶしすぎて、組付けが困難になったり、ゴムが永久ひずみを起こして戻らなくなったりします。

③ 面取り角の不備。溝の入口に適切な面取りがないと、組付け時にOリングが傷つき、そこから漏れます。

④ 表面粗さの不適合。シール面が粗すぎれば漏れの原因になり、逆に鏡面に近すぎても油膜が保持されにくくなる場合があります。

⑤ 溝幅の誤算。ゴムがつぶれて広がる分の空間を見込まないと、ゴムの逃げ場がなくなり、無理な力がかかります。

これらはいずれも、Oリングそのものではなく「溝側」=取付側の設計に起因します。シール不良が起きたとき、Oリングの材質や寸法だけでなく、溝設計まで含めて見直すことが解決の近道です。私たちはゴム側の観点から、材質・硬度・寸法についてご相談に応じます。溝そのものの設計は、取付側の条件と合わせてご検討ください。

収縮率を踏まえた金型補正という実務

ここまでの内容を、実務の流れとして整理しておきましょう。金型成形でゴム部品を作る際は、まず使用環境から材質の方向性を定め、その材質の収縮特性を踏まえて金型の寸法を補正します。材質が変われば収縮率が変わるため、金型の作り込みも変わります。この一連の見込みが、仕上がりの寸法精度を左右します。

だからこそ、公差の設計は、材質選定と一体で進めるのが理想です。「図面で公差だけ先に決めて、材質は後から」という順序では、手戻りが生じやすくなります。私たちは、材料メーカーと連携しながら、材質選定と金型設計をあわせてご相談いただける体制を持っています。図面が固まる前の段階から、公差と材質をセットで詰めていくことが、精度とスピードの両立につながります。

温度・経時による寸法変化を設計に織り込む

公差を考えるとき、常温での寸法だけでなく、使用環境の温度を織り込むことも大切です。ゴムは金属より熱膨張・熱収縮が大きいため、高温環境で使う部品は、常温での寸法がぴったりでも、温度が上がると寸法が変わってシール性能に影響することがあります。

たとえば、高温になる部位のシールでは、熱膨張で締め代が増える方向に働くこともあれば、材料が軟化して反発力が落ちることもあります。逆に低温環境では、ゴムが硬くなり、追従性が下がってシール性が損なわれる場合があります。こうした温度による挙動を見込んで、公差や締め代に適切なマージンを持たせておくことが、実使用でのトラブルを防ぎます。

また、経時変化も無視できません。ゴムは時間の経過とともに、わずかに寸法が変化したり、圧縮永久ひずみによってへたったりします。長期間シール性能を維持したい用途では、初期の寸法精度だけでなく、時間が経ったあとの状態まで見据えた設計が求められます。「作った直後は問題なかったのに、しばらく使うと漏れ始める」という不具合の多くは、この経時変化を見込めていないことに起因します。

図面での公差指定を「伝わる」ものにする

最後に、実務で役立つ視点をひとつ。公差は、正しく設計するだけでなく、製造側に正しく伝わる形で図面に書くことも重要です。

前述のとおり、金型成形品と切削加工品では公差の考え方が異なります。ですから、図面には「その部品がどちらの工法を想定しているのか」が伝わるようにしておくと、認識の食い違いを防げます。切削加工前提の±0.1mmという指示を金型成形品に付けてしまうと、製造側は「この精度は金型成形では現実的でない」と判断し、確認のやり取りが増えます。

理想的なのは、図面を固める前の段階で、製造側と公差の妥当性をすり合わせることです。「この公差は成形上どこまで現実的か」「この用途なら、もっと緩められる箇所はないか」といった対話を通じて、実態に合った公差に落とし込めます。過剰に厳しい公差は、コストと納期をいたずらに押し上げます。逆に緩すぎれば品質が不安定になります。ちょうどよい落としどころを、成形の知見を持つ相手と一緒に探すことが、結果的に良い設計につながります。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 金型成形で狙える公差の目安は?

材質・配合・形状によって変わります。仕様を確認したうえでご相談ください。

Q. なぜ同じ材質なのに、会社によって寸法がばらつくのですか?

配合によって収縮率が異なるためです。配合は材料メーカーの領域であり、その違いが寸法に表れます。

Q. ±0.1mmはどの部品にも対応できますか?

±0.1mmは切削加工での指標です。金型成形品はVDI規格に基づく公差で管理します。

Q. Oリングは切削で作るのですか?

Oリングは金型成形品です。切削加工ではありません。

Q. シール不良が出たら、まず何を見直すべきですか?

Oリングの材質・寸法に加えて、溝設計(締め代・面取り・表面粗さ)まで含めて確認します。

公差と材質はセットで詰めるほど精度が安定します。図面が固まる前の段階でも、寸法・材質についてお気軽にご相談ください。

平日9:00〜17:30/図面・資料の添付にも対応しています。

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