ものづくりプレス
2024-04-29
プラスチック射出成形の方法と適した素材・用途
プラスチックを原料として製品をつくる際には、さまざまな成形方法が用いられています。その代表的な方法のひとつとして挙げられるのが射出成形です。
この記事では、プラスチック射出成形の特徴や、この方法を使って成形できるもの、使用に適したプラスチック材料の種類について解説しています。
プラスチック射出成形とは
射出成形は金型を使用した成形方法のひとつで、いろいろな原料の加工に用いられています。特にプラスチックの成形方法としては、最も一般的です。
成形には、射出成形機を使用します。熱で溶かしたプラスチック原料をシリンダーで金型の中に流し込んだ後、冷却してプラスチックを硬化させ、成形品を取り出します。この原料を注入する工程の様子が注射と似ているため、射出成形と呼ばれています。複雑な形状でも連続して成形できることから、大量生産向きの方法と言えます。
射出成形機の構造と工程
射出成形機は、基本的に以下3つの構造で成り立っています。
■コントローラー
射出する圧力や速度、材料の射出量、シリンダーや金型の温度など、成形条件を制御する装置
■射出ユニット
プラスチック材料を熱で溶かし、金型に入れるための装置。プラスチックの材料を投入するホッパー、材料を加熱するシリンダー、噴射ノズルなどから成る
■型締めユニット
金型の装着や開閉、成形後の突き出しを行なう装置
射出成形は、以下の工程で進んでいきます。
①ホッパー(漏斗状の材料貯蔵装置)に粒状のプラスチック材料(ペレット)を投入
②ホッパーからシリンダーに材料を入れ、加熱して液状にする
③射出ユニットの噴射ノズルから、液状になった材料を金型に注入
④金型を冷却して材料を硬化
⑤金型を開き、成形された材料を排出
⑥仕上げ加工
射出成形に適したプラスチック素材とは
プラスチック素材は、「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」の2種類に大きく分けることができますが、射出成形は主に熱可塑性樹脂の加工に適しています。
熱可塑性樹脂は熱を加えると溶け、冷却すると硬化するプラスチックです。加工性が高いだけでなく、再び加熱すれば溶かすことができるため、リサイクル性にも優れています。このほか、プラスチック成形のほぼすべての方法に対応できるのが特徴です。
一方の熱硬化性樹脂は、熱を加えると硬化し、その後は溶融することはありません。その性質上の理由から射出成形が行なわれることは少なく、圧縮成形やトランスファー成形、注型成形、積層成形などの方法が一般的です。
射出成形に向いている熱可塑性樹脂の種類と主な特徴は以下のとおりです。
・ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)
強度、耐衝撃性が強い。伸縮率が低く加工の安定性に優れている。安価。
・PC(ポリカーボネート)
強度、耐衝撃性、耐熱性、透明性がいずれも高い。
・PPA(ポリフタルアミド)
強度、耐熱性が高い。強酸や強塩基以外の化学薬品に対する耐性を強化したものもある。
・POM(ポリオキシメチレン)
強靭性や、剛性、硬度、強度が高い。潤滑性にも優れる。ポリアセタールとも呼ばれる。
・PMMA(ポリメチルメタクリレート)
アクリル樹脂として知られている。透明度が高く、耐候性に優れている。
・PP(ポリプロピレン)
機械的強度、耐摩耗性、耐熱性などが高い。加工性に優れた安価な素材。
・PBT(ポリブチレンテレフタレート)
寸法安定性や電気特性に優れている。ガラス繊維で強化することで、機械的強度がさらに高くなる。
以下のような材料は、射出成形は可能ではありますが、その性質から一般的に不向きとされています。
・加熱により有害ガスが発生する樹脂:PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)など
・加熱による溶融・流動性が良好でない樹脂:PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)など
プラスチック射出成形で成形できる製品
プラスチック射出成形は、金型があれば複雑な形状でも成形が可能で、大量生産にも向いています。
そのため、以下のような幅広い分野の製品の成形に利用されています。
・スマホ、携帯電話、パソコンなどの部品
・自動車のパーツ
・テレビや洗濯機、プリンターなどの電子製品の部品
・DVDやブルーレイディスク
・ドライバーやハサミの取手
・テレビゲームのコントローラー
・電卓のキーボード
・コンセント
・キッチン雑貨
・医療機器部品
・アウトドア用品
・リサイクル材を使用したプラスチックパーツ
・鏡面仕上げのプラスチックパーツ など
成形が難しい製品として、極端なサイズや肉厚・肉薄製品などが挙げられます。
理由として、極小だと材料が入りにくく、無理に圧をあげるとフローが発生したり、肉厚だとヒケ発生したり、といった不具合が発生する場合もあるからです。
それらの問題は、成形条件などで解決できる場合もあれば、形状を変更する必要がある場合もあります。
※詳しくは、不具合や品質の記事をご参照ください
射出成形はプラスチックで最も一般的な成形方法
プラスチック製品の多くは、射出成形でつくられています。複雑な形状でも金型があれば、同じ製品を大量に生産できる生産性のよさが主な理由です。
しかしその反面で、材料の選択、金型の精度、成形時の温度や速度のコントロールなど、さまざまな条件をクリアする必要があります。そのため、精度の高い製品づくりのためには、経験や知識が豊富な信頼できる業者に依頼するよう心がけましょう。
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