ものづくりプレス

2025-08-05

日本で樹脂価格の決定基準となる「ナフサリンク/ナフサ運動」とは

ナフサリンクとは、会社間で樹脂製品の販売価格を決定する際の重要な指標です。知っておくことで、樹脂価格の相場や、合成樹脂の原料となる原油・ナフサの市場状況を読みやすくなるでしょう。


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▪️石化原料になる石油製品「ナフサ」


樹脂の価格決定において重要となるナフサについて、概要や原油価格との関係などをみていきます。


◇ナフサとは


ナフサとは、原油を蒸留することで得られる石油製品です。ガソリンのように透明な液体で、粗製ガソリンとも呼ばれます。

まず石油精製工場に運ばれた原油を蒸留塔で熱し、液体を蒸発させます。物質はそれぞれで異なる沸点を持つため、沸点が低い液体から蒸発して分離していきます。こうして蒸留させて得られる原料の1つがナフサです。


さらにナフサは、エチレンやプロピレン、ブタジエンなどの石化原料に分解されます。石化原料は最終的に、合成樹脂(プラスチック)や合成繊維、合成ゴム、溶剤、塗料などの製品として加工され市場に出回ります。


2020年のナフサの生産量は、石油製品の中でもジェット燃料油や灯油と並んで低い数値です。需要はあるものの、石油からはそもそもガソリンや軽油ほど生産されません。


(出典:経済産業省|令和2年度(2020年度)エネルギー需給実績(速報)

また、ナフサは原油、天然ガスに次ぐ輸入量となっており、国産と比較しても過半数となっています。輸入先は、主にアラブ首長国連邦、カタール、サウジアラビアなど中東からです。 このような特徴が見られるナフサですが、なぜナフサが樹脂価格の決定に関係するかについて、まずは原油価格が変動する理由から解説します。

◇原油価格が変動する要因


原油価格が変動する最大の要因は、需要と供給のバランスです。たとえば世界No.1の原油生産国である米国で原油の需要が減る(生産量が落ちる)と、価格は下落します。


その他にも、原油価格は以下の要因で変動します。


・製油所向け原油需要

・石油製品自体の需要

・米国のシェールガスの動向

・OPECなどの主要産油国の生産量の増減

・原油の在庫量

・ドルや円の相場

・戦争・紛争やその他の世界情勢 など


2022年現在ではSDGsの脱炭素が要因となり、原油価格の高騰が続いています。これは主要国が二酸化炭素の排出量が少ないエネルギー資源を買い占めたり、原油産出国が利益を上げようと供給を少なくして価格を上げたりなど、世界情勢のさまざまな影響が関連しています。


このように、原油価格は世界中で発生する複数の要因が絡み合って、価格が決定されるのです。


◇ナフサが価格決定の指標になった理由

ナフサが石油化学製品、つまり樹脂価格決定のための指標になるのかの理由は、「日本の石化原料は、ナフサを原料にして生産されているから」です。


先述のとおり、ナフサはプラスチックや合成ゴムの原料となる石化原料によって構成されており、分解することでエチレンやプロピレンなどを得ることが可能です。


要するに全体の生産工程においては、「ナフサ」→「石化原料」→「樹脂製品(ゴム)」という連鎖関係が成り立っています。


順を追って考えると、ナフサの価格が高騰すれば石化原料全般の価格も高騰し、石化原料を用いて作る合成樹脂全般の価格も高くなります。つまり、連鎖の原点となるナフサの価格によって、樹脂製品全般の価格が決まるのです。


よって、石油化学製品の価格決定の指標に、ナフサ価格が使用されます。言い換えれば、ナフサの原料となる原油価格が高くなると、樹脂製品も値上げされていきます。


2022年時点でも原油価格高騰を受け、大手化学メーカーでのプラスチック製品の値上げの動きが出ており、今後も注視が必要です。


▪️ナフサリンクを使った価格の決め方

ここからは実際に、ナフサリンクを使って樹脂価格を決定する流れを解説します。


ナフサリンクとは、ナフサの価格変動と樹脂価格を連動させる方法です。「いつの期間のナフサ価格を反映するか(改定時期)」「ナフサに対して樹脂価格をどれくらい改定するか(改定方法)」について、あらかじめ取引する会社同士で決定しておきます。


現在の主流ルールと言われているのが、3ヶ月ごとに決定する国産ナフサ価格とアジアのブタジエン価格を基準に、3ヶ月ごとに改定する方法です。


また、ナフサリンクの他には「単価後決め方式」もあります。単価後決め方式とは、樹脂製品の販売時点では価格を決めず、取引成立後に単価を決定する方法です。


◇ナフサリンクの計算式

ナフサリンクの計算式は、会社同士の取り決めによって変わります。多くの場合、「ナフサ価格がkl当たり、どれくらい樹脂価格を変動させるのか」で決定します。

単純な図式で考えると、「ナフサ1klの価格が200円上昇したら、樹脂1kgあたり220円値上げします」との決まりであれば、ナフサの価格が1,000円/kl上昇すると、樹脂製品は1kgあたり1,100円の値上げするということです。


以下では一般的に用いられる指標である、国産ナフサ価格の計算方法をまとめました。


・貿易統計の3ヶ月分(4月~6月分など)÷同時期の輸入数量=1klあたりのナフサ輸入価格

・1klあたりのナフサ輸入価格+2,000円/kl


(※)=国産ナフサ価格 ※輸入後にかかる諸経費の概算値


上記の国産ナフサ価格を基準に、樹脂価格をどれくらい上下するのかを決めます。この方式の場合、数値が反映されるのは貿易統計額が確定後になるので、現在ではなく過去のナフサ価格を基準に計算することになります。


なお、石油化学製品の国内価格の決め方として、「2N方式」と呼ばれるものもあります。2N方式とは、ナフサ価格が1kl当たり1,000円変動するごとに、石油化学製品の価格を1kg当たり2円変動させる方法です。

◇ナフサリンクを利用するメリットとデメリット

以下ではナフサリンクを利用して価格を決めるメリットとデメリットを解説します。


 ▼メリット

ナフサリンクのメリットは、販売側と仕入側での交渉の手間が省けることです。


たとえばナフサリンク決めていないと、ナフサ値上がりによる樹脂製品の値上げを交渉する際に「なぜ値上げするのか」「値上げ値は適正なのか(いつの期間を基準にしたのかなど)」という確認と根拠提示が発生します。


しかしナフサリンクを決めておけば、ナフサ価格の変動があっても計算式にしたがって価格を決定すればよいので、交渉する必要性がなくなるのです。


▼デメリット

ナフサリンクのデメリットは、現状の原料価格の実態を反映しづらい点です。


ナフサリンクはあくまで原油を中心に考える方法であり、市場の人件費や合成樹脂の在庫数などが価格に反映できません。平均賃金の変化や合成ゴム製品の過不足など、原料以外で市場の価格に影響を及ぼすファクターを無視して決定されてしまいます。


またナフサリンクは、樹脂製品を生産する際に必要なもの(充填剤や天然ゴム、着色料など)の需要・供給や価格も反映されません。仮にナフサが安くて他材料が高くなった状態になると、樹脂メーカー側が赤字になる可能性があります。

見直されているナフサリンクによる価格決定

近年では「非ナフサ系エチレン」の台頭などの影響もあり、ナフサリンクによる価格決定が見直されつつあります。すべてのナフサリンクをゼロにするのではなく、アジア市場をもとにした決定や、独自査定による規程の実施などです。


とはいえ、現在でもナフサリンクによって価格決定するメーカーは非常に多いと推測されます。今後も樹脂価格の動向を確認する際は、原油やナフサ価格をチェックするのが有効でしょう。