ものづくりプレス

2023-12-11

ゴムの成形不良の原因・対策

ゴムはさまざまな製品に使用できる素材ですが、何らかの原因によって加工の過程で成形不良が起こることがあります。

この記事では、トラブル事例ごとのゴムの成形不良の原因とその対策について解説します


ゴム 成形不良

ゴムの成形品の不良一例・原因と対策

ゴムの成形不良と言っても、その原因や状況は非常に多岐にわたります。また、製造工程のあらゆる箇所で生じ得ます。  


ここではゴムで生じる主な成形不良についてまとめ、その対策について簡単に解説していきます。

オゾンクラック

オゾン(酸素原子)が触れる場所にできるクラック(割れ、裂け目)のことで、ゴムが引っ張られる直角方向に現れるという特徴があります。  


この現象の発生を防ぐ方法としては、オゾンが触れない場所で使用するのがいちばんですが、それ以外にも、耐候性(耐オゾン性)を持つゴムの選定、原料ゴムの耐オゾン性に影響を与えない配合剤やオゾン防止剤の使用などが挙げられます。  


しかしオゾン防止剤はほかの素材に色が移る汚染性が高く、配合の際は注意が必要です。  


■対策

ゴムに耐オゾン性を付加する必要性を検討し、特別に必要としない場合は使用を極力抑えるのも、オゾンクラックを防ぐ方法のひとつと言えるでしょう。

ブルーム/ブルーミング

ブルーム(ブルーミング)は、ゴムの表面に白い粉が吹いたような状態です。  

ゴムの機能に影響を与えることはほとんどありませんが、色の濃いゴムの場合は外観を損ねます。原因として、混練や加硫の不足のほか、加硫工程で使用する薬剤や老化防止剤、表面に浮き出たワックス類の結晶化、などが考えられています。  


■対策

ブルームを解消するには原因をひとつずつ特定していく必要があり、また薬剤を変更した場合はゴムの物性に影響を与える可能性もあります。

しかしその一方で、酸素やオゾンからゴムの劣化を防ぐ保護膜として故意にブルームさせることもあるため、「ブルーム=良くない」とは一概に言うことはできません。

ブリード

ブリードは、使用した可塑剤や軟化剤がにじんでゴムの表面が濡れたようになる現象です。  


原料ゴムと充填剤の相性の悪さや、可塑剤などの過剰な使用、混練の甘さなどが原因で起こります。  


■対策

ブルーム同様、原因の特定にはしっかりした調査が必要で、対策が難しい問題のひとつです。

また、潤滑目的などで意図的にブリードさせ、運動用のゴムに使用する場合もあります。

ショート(充填不良/充填不足)類

成形の際に、金型に充填する原料の不足や不良により起こります。  


そのほかの原因として、金型内でのガスの発生や金型の問題(設計、汚れの付着など)により正常量の原料充填が不可能なこと、充填圧や射出速度の異常などが挙げられます。  


■対策

ショートの改善には、不良の原因となる設備の調整・最適化のほか、金型の温度や開閉速度、原料の流動性の見直しなどが求められます。

気泡(エアー)

ゴム内に気泡(エアー)が生じる現象で、製品の破損や破壊などにつながります。  


気泡が起こる原因には、加硫前の混錬材料内に含まれる揮発成分や残存している空気、加硫剤中の不純物のほか、加硫時間、金型などがあります。

また圧延の場合では、気泡の押し出し不足、ロールへの巻き付き不良などが考えられます。  


そのため、気泡をつくらない加硫工程は、品質を保つためにも大変重要です。


■対策

問題の解決には、以上の要因を排除していくことが求められます。

ヒケとボイド

ヒケとボイドは表裏一体のような関係にあります。  


ヒケ

加硫の際、ゴムは表面の薄い層から順に硬化(加硫)が始まります。

金型に接触している部分と内部では熱伝導率の違いによる温度差があり、膨張率に差が生じます。すると内圧の変化により未硬化の材料をいったん押し出し、成形時に再び元に戻る(収縮)ためにくぼみが発生します。これがヒケです。  


ヒケのうち、金型の割れ目部分に出たものは「バックライディング」と呼びます。  


■対策

ヒケを防ぐための方法には、ゴム加硫速度を遅くする、熱伝導性の配合剤の増量、材料の予備加熱、プレス圧の低下などがあります。  


ただしシリコーンゴムの場合は、硬化までの時間が比較的長く、金型内での材料の流動が可能であるため、ヒケが起こりにくいと考えられています。  


ボイド

ボイドは、成形品の表面に小さなくぼみや、内部に空洞(気泡)が生じた状態です。  


表面のボイドは、ゴムに配合する熱融解物質が加硫の際に正常に分散しないことで起こり、また内部に発生する場合は、材料に含まれる水分や空気、揮発性物質などが原因だと考えられています。  


■対策

充塡剤や配合剤の見直し、機械内の水分発生の防止・結露の除去、キャビティへの注入圧力や速度の調整などの対策は、ボイドの回避に有効です。

ピンボール

製品を引っ張った際、針孔のような小さい穴が開いてしまう現象です。

配合した充填剤の偏りや、異物が混入した場合などに生じます。  


■対策

材料の問題が原因であることが多いため、これらを見直すことで改善が可能です。

成形品を型から外す際に、必要以上に伸ばさないようにすることでも防止できることがあります。

金型汚染による表面模様

金型を使う成形では、素材となるゴムが本来持つ物性、充填剤や配合剤などが金型の表面に移行し、付着することがあります。

それが徐々に蓄積すると成形時に加工物に転写され、模様のように現れます。


■対策

この問題の解決方法としては、ゴム原料や配合剤などを変更することは現実的ではないため、金型そのものを考慮する必要があります。

例えば、金型の素材や設計の見直し、付着を減少させるための表面処理、洗浄などが挙げられます。


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フローライン/フローマーク

製品の表面に残った、材料が流れ込んだ跡や線をフローラインやフローマークと呼びます。

射出速度やゴムの粘度差、金型の汚れなどが原因となって、キャビティ内をゴムが均一に流動しないことで生じます。  


■対策

加工温度を上げて材料の流動性を上げる、材料を充填する口金(ダイ)を広くするなど、キャビティ内に材料が均等に行き渡るように調整することで対応できます。

ウエルドライン/ウェルドライン

何らかの理由により金型内で材料の流れが分断され、再び合流する際にその部分が融合不良を起こして線状に残り、硬化時にキズや裂け目のように見える現象です。  


■対策

この現象は材料の流れに沿って見られるため、材料同士の交差を防止するジグの使用、射出速度や流動速度の調整など、材料が正常に流れるような対策を施すことで改善できます。

バリ噛み

金型成形では同じ金型を繰り返し使用します。前回発生したバリが残った状態で次の成形をした場合、それが異物として入ってしまうことがあります。これがバリ噛みです。  


■対策

原因は完全にバリが除去されないことにあるため、バリが残らないような金型を使うなどの対策をします。

脈動(外径変動)

押出成形の際に材料が均一ではなく脈のように波打ちながら送り出されることで、外形寸法などに変動が起きてしまう現象です。  


材料の押出量、バレル(シリンダー)やその先端にある押し出し口(ダイ/ダイス)の不適切な温度調節、スクリュー部への負荷などが原因です。

 

■対策

材料量が一定に出るように、粘性の調節、スクリューや材料のフィード方法の改良、適切な温度調節などにより解決できます。

汚染(色移り)

老化防止剤など、ゴムに含まれる配合剤が表面に滲み出て、ほかの素材に変色や色移りなどのトラブルを引き起こすことを汚染と言います。   

成形をすべてやり直ししなければならない可能性もあるため、汚染の原因が何であるかを特定することが重要です。  


■対策

同じ効果を持つ複数の配合剤を少量ずつ添加するほか、ブルームやブリードを防止する薬剤の添加、最適な加硫促進剤の使用などの方法で対処します。

成形不良の原因の特定と迅速な解決が重要

成形不良は、品質の低下だけでなく、再成形の必要性が生じることもある深刻な問題です。

最悪の場合は製品に対する信頼や、コストなどに影響を与えることもあります。  


製造過程おいて成形不良が生じた場合に備えて、しっかり対応できる経験と知識のある専門家を調べておくと安心です。  


成形不良に関する相談や対策は、経験と実績が豊富な当社まで以下のお問合せフォームからご連絡ください。