ものづくりプレス

2025-04-05

ジエン系ゴムとは

合成ゴムは、ジエン系と非ジエン系に分けることができます。それぞれ性質や特徴が異なるため、製造したいゴム製品の形状や用途に応じた合成ゴムを選ぶのが重要です。

この記事では、ジエン系ゴムの特徴と非ジエン系ゴムの違い、それぞれの代表的な合成ゴムの種類について解説します。

ゴム

ジエン系ゴムの特徴

一般的なゴムは、その化学構造から「天然ゴム」と「合成ゴム」に分類できます。この合成ゴムのうち、構成する主鎖に二重結合を含むものをジエン系ゴムと言います。

ジエン系の合成ゴムには、主に以下の種類があります。  


・ブタジエンゴム(BR)

・スチレン・ブタジエンゴム(SBR)

・ニトリルゴム(NBR)

・水素化ニトリルゴム(HNBR)

・クロロプレンゴム(CR)

・イソプレンゴム(IR)  

ジエン系ゴムの長所

ゴム原料から合成ゴムを製造する過程で、弾性などを付与する加硫と呼ばれる工程が必要になります。一般に硫黄が使用されますが、ジエン系ゴムは化学的な反応性が高く、硫黄による加硫が簡単に行なえるというメリットがあります。また加工が容易で、品質も一定であるため、コストパフォーマンスが高いのも特長です。

ジエン系ゴムの短所

しかし一方で、耐オゾン性、耐候性、耐老化性に劣る点が短所として挙げられます。使用環境の影響により化学・物理反応を起こしやすいという二重結合の性質が原因となり、本来の物性を失うのがその理由です。

ジエン系ゴムの劣化を引き起こす要因には、次のようなものがあります。  


▼添加物

合成ゴムには、老化防止剤や加硫促進剤などが添加されています。長期間合成ゴムを放置していると、これらの添加剤がゴムの表面に浮き出して粉末化・結晶化するブルームと呼ばれる現象が起こることがあります。ブルームは合成ゴムだけでなく、それに接触するプラスチック成型品も劣化させる原因になります。

▼熱(熱酸化劣化)

熱は合成ゴムの分子運動を活発化させます。すると分子全体が振動するようになり、やがてゴムの結合がそれに耐えられなくなって分子の断裂が起こります。酸化が起こる環境ではこれが原因でゴムが硬化し、クラックと呼ばれる亀裂がゴムに入ることがあります。

▼光(光酸化劣化)

合成ゴムの中には、特定の光の波長成分が内部に入り込むことでポリマーが活性化し、表面に劣化が起こる種類があります。特に紫外線のような短い波長ではその現象が顕著で、劣化の速度を促進させます。光酸化劣化は、非ジエン系ゴムよりのジエン系ゴムの方が生じやすいという特徴があります。

▼オゾン

オゾンは、紫外線などから生成される強力な酸化作用を持つ気体です。このオゾンが主鎖の二重結合に作用すると分子鎖を分断し、その結果としてゴムの表面に小さなクラックが(オゾンクラック)が生じます。光化学スモッグにはオゾンを発生させる物質が含まれていることから、都市部では耐オゾン性のゴムを使用するのがいいでしょう。

▼残留塩素

水道水などに含まれる残留塩素の濃度が高いと、ゴムが硬化してクラックなどの現象を、反対に低い場合は軟化するため、ボロボロになったゴムの粉が水に混ざる黒粉現象が起こります。

▼金属化合物(金属イオン)

ジエン系ゴムと金属の接触面では、金属イオンが触媒となってゴムのポリマーが持つ自動酸化反応を加速させるため、劣化の原因となります。特に銅(Cu)や鉄(Fe)場合には注意が必要です。

▼溶剤膨潤

溶剤が合成ゴムに浸入すると、ゴム分子同士を引き離そうと作用するだけでなく、ゴムに含まれる老化防止剤などが溶け出してしまうことで、崩壊や硬化に進行することがあります。

ジエン系ゴムと非ジエン系ゴムの違い

ジエン系だけでなく、合成ゴムには非ジエン系と呼ばれる種類があり、それぞれに構造や物性などが異なります。

両者の違いについて説明します。 

非ジエン系ゴムとは

ジエン系ゴムとは反対に、主鎖に二重結合を持たない、あるいはわずかに持っている合成ゴムは、非ジエン系に分類されます。光や熱、オゾンからの化学反応による影響を受けにくい性質を持っており、酸化に対する抵抗力が高いのが特徴です。

代表的な非ジエン系ゴムは、以下の合成ゴムです。  


・エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)

・ブチルゴム(IIR)

・シリコーンゴム(Q)

・フッ素ゴム(FKM)

・ウレタンゴム(U)  


非ジエン系ゴムは耐候性や耐オゾン性、耐老化性に優れています。そのため、自動車用の部品、建築資材など、屋外や過酷な環境下で長く使用される用途に適しています。

ジエン系ゴムと非ジエン系ゴムの性質を理解しよう

合成ゴムは、その構造の違いによりジエン系と非ジエン系があることを解説しました。ジエン系ゴムは加工性が高い一方で、コストが低く、大量生産に向いていますが、耐候性や耐オゾン性が低いというデメリットがあります。また非ジエン系ゴムは、そのデメリットをカバーできる特性を持っているなど、両者の特徴はそれぞれ異なります。  


どちらが優れているかどうかではなく、ゴム製品をつくる際は、用途や使用する環境なども含めてゴムを選ぶことが重要です。経験と実績が豊富なゴムの専門家に相談すれば、最適なゴムを提案してくれます。