ものづくりプレス
2023-08-18
ウレタンゴムの種類と特徴
ウレタンゴムは、ほかの合成ゴムより耐摩耗性や機械的強度が優れています。今日では工業用の製品だけでなく、日常生活の中でもウレタンゴムを見かけるようになりました。しかし、中には「実はウレタンゴムがほかのゴムとどう違うのかよくわかっていない」と感じる方も多いのではないでしょうか。 当記事ではウレタンゴムの概要や種類、ウレタンフォームとの違いなどについて解説します。
ウレタンゴムとは
ウレタンゴム(U)とは、「ポリエステルまたはポリエーテル」と「ジイソシアナート」との反応によって得たゴム状弾性体(エストラマー)の総称です。正式にはゴムではなく、「ゴムのような弾力を持ったプラスチック」となります。
しかしゴムと似た性質を持つこともあり、日本産業規格(JIS)でも合成ゴムとして分類されています。
ウレタンゴムの特性として挙げられるのは、「合成ゴムの柔らかさ(弾性)」と「プラスチックの固さ(剛性)」の両方を併せ持つ点です。
例えばほかのゴム体だと、ゴム製造時にゴム原料(ポリマー)と一緒に補強剤(充填剤の一種)を混合しなければ、製品として十分な強度や弾性を得られません。しかしウレタンゴムは補強剤を添加しなくても、それらの特性を失うことなく発揮できます。 さらに細かい特徴の傾向をみていきましょう。
ウレタンゴムの長所 |
ウレタンゴムの短所 |
· 耐摩耗性がほかのゴムより非常に優れる · 機械的強度(引張強度など)も非常に大きい · 耐油性がよい · 耐薬品性がよい |
· 耐水性や耐湿性が劣るため水分に弱く、加水分解による劣化の恐れあり · 耐熱性が悪い |
とはいえウレタンゴムの特性は、使用するポリエステルやポリエーテル、ジイソシアナートの種類はもちろん、反応条件や架橋方向などによっても大きく変化します。
工業用としてのウレタンゴム
ウレタンゴムは耐摩擦性や機械的強度に非常に優れたゴムである反面、水分に弱いという性質を持ちます。そのためウレタンゴムを工業用で使う場合は、摩擦や強い力が発生する箇所かつ水分が少ない現場を想定するとよいでしょう。
ウレタンゴムは次のケースでよく利用されます。
・ベルトコンベアーのベルト
・フォークリフトのタイヤ
・工業用ロール
・高圧がかかる箇所のパッキン
・そのほか過度な水分や熱が発生しない乾燥した製造現場
など
適さない環境下で使用すると、ウレタンゴムの劣化が早まります。適性を理解した上で、適切な箇所で使用しましょう。
ウレタンゴムの形状
ウレタンゴムは成形や加工方法によって、次の3種類が存在します。
・液状である「注型(キャスタブル)タイプ」
・一般的なゴムと同じように成形する「混練(ミラブル)タイプ」
・熱可塑性樹脂(熱可塑性プラスチック)と同じ加工を行う「熱可塑性エストラマータイプ」 上記の中でもっとも利用されているのは注型タイプです。
どのタイプを扱っているかはメーカーによって異なります。
ウレタンフォームってなに?
ウレタンフォームもウレタンゴムと同じく、ポリエステルやポリウールと、ジイソシアナートを反応させたものです。弾性を持つエストラマーとしてではなく、原料に発泡剤を加えた「発泡体(フォーム)」として生成します。
ウレタンフォームの使用用途は非常に広く、スポンジやスピーカー用クッション、ベッドのクッション、断熱材、防音対策グッズなどとして使用されます。
ウレタンゴムの種類と特徴
ウレタンゴムの種類や特徴について、今回は以下3つについて解説します。
・U ウレタンゴム
・EUポリエーテルウレタンゴム
・AUポリエステルウレタンゴム
U ウレタンゴム
ウレタンゴムの基本情報は次のとおりです。
基本情報 |
概要 |
比重 |
1.00~1.30 |
可能なJIS範囲硬さ |
60~100 |
引張強さ(kg/㎠) |
200~450 |
伸び(%) |
300~800 |
耐熱性 |
80℃ |
耐寒性 |
-30~60℃ |
そのほかの物理的特性 |
耐炎性に難があるが、老化や光、オゾンに対しては強い |
機械的特性 |
引裂き、反発弾、屈曲亀裂、摩耗すべてに対して非常に強い |
電気絶縁性(Ω/cm、25℃) |
109~1012 |
以下ではさらに耐油性や耐薬品性についてもまとめました。
物質名 |
相性 |
ガソリン・軽油 |
◎ |
ベンゼン・トルエン |
✕~△ |
トリクレン |
△~○ |
アルコール |
△ |
エーテル |
✕ |
ケトン |
✕ |
酢酸エチル |
△~○ |
水 |
○ |
有機酸 |
✕ |
高濃度無機酸 |
✕ |
低濃度無機酸 |
△ |
高濃度アルカリ |
✕ |
低濃度アルカリ |
✕ |
EU ポリエーテルウレタンゴム
ポリエステルウレタンゴムの特徴は次のとおりです。
・ポリエーテルウレタンゴムと比べて耐油性や機械的強度に優れる
・ポリエーテルウレタンゴムと比べて耐熱性や耐寒性が劣る
・耐水性が弱いため加水分解による劣化に注意が必要になる
そのほかの基本性能はポリエーテルウレタンゴムと類似しています。
ウレタンゴムの特性を理解して利用しよう!
ウレタンゴムは合成ゴムの中でもっとも優れた耐摩耗性や機械的強度を持っています。強い摩擦や圧力がかかる場所の使用に向いているといえるでしょう。しかし耐水性や100℃前後の温度には弱いため、水分が発生する場所や急激に熱が加わる場所での使用は避けるようにします。
ウレタンゴムの特性を理解し、特性に適したゴム製品の製造や製造現場での利用に役立ててください。
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