ものづくりプレス

2024-03-12

合成ゴムの値上がりの要因

近年、合成ゴムの価格改定が相次いでおります。原因は主原料のナフサ価格上昇などがあります。 ナフサ価格の上昇は、合成ゴムの価格だけでなく、ベルトやパッキン、Оリングなどの工業用ゴム部品の価格にも影響を及ぼしています。


今回は、そんな合成ゴムの価格高騰の原因について解説します。

値上げ

■合成ゴム取り扱い主要企業の合成ゴム価格改定概要

合成ゴムを取り扱っている主要企業の合成ゴム価格改定概要を紹介します。


会社名

価格改定開始時期

対象製品

価格変動

旭化成株式会社

2022年04月01日

・BR

・SBR(油展、非油展)

(ジタン、タフテン、アサプレン)

+40円/kg 以上

JSR株式会社

2020年07月01日

・合成ゴム

・エマルジョン製品

+20円/kg 以上

UBEエラストマー株式会社

2022年09月01日

・合成ゴム全製品BR

+80円/kg 以上

日本ゼオン株式会社

2011年01月21日

・ESBR非油展 

・ESBR油展 

・SSBR非油展 

・SSBR油展 

・BR 

・NBR 

・HNBR 

・PB 

・IR  

・ESD 

+22円/kg

+19円/kg 

+24円/kg

+21円/kg

+26円/kg 

+17円/kg 

+24円/kg 

+16円/kg 

+26円/kg

+19円/kg


各社の価格改定を見ると、合成ゴムの価格が高騰していることが見て取れます。

■合成ゴムが値上がりしている要因

◇世界/日本国内の需要

合成ゴムは自動車部品や工業用ゴム製品など様々なゴム製品の原料として使用されています。合成ゴムの需要はゴム製品の売れ行きに依存しており、それは世界や地域の景気動向と密接に関わっています。


例えば、先進国はもとより、多くの人口を有する中国やインドなどの途上国で自動車需要が高まり、合成ゴムの需要量が供給量を上回れば、合成ゴムの価格高騰に繋がります。

◇生産的要因

ゴムの基本的な用途は自動車部品、工業用ゴム製品なので、自動車の生産は合成ゴムの価格に大きく影響します。
自動車の生産・販売を牽引するのは世界の景気です。経済の伸張に応じて生産・販売台数も増減しますが、いまや世界最大の自動車生産国・ゴムの消費大国である中国、米国、日本の景気が重要です。

こうした観点から、タイヤメーカーや自動車メーカーの株価とゴム物価格の関係がゴムの価格変動の要因になります。


▽アジア各国の乗用車の生産台数推移(台)


国名

2021年

2022年

2024年

中国

20,177,731

21,311,069

23,563,289

インド

2,433,473

3,082,279

3,792,356

インドネシア

388,925

659,809

783,563

日本

3,809,981

3,675,698

3,448,297

マレーシア

480,965

452,663

544,838

韓国

1,618,333

1,468,873

1,420,486

タイ

343,494

312,200

343,349


◇為替要因

日本は、合成ゴムの原料(石油、ブタジエン)を輸入に依存しています。合成ゴムはその原料の大元の原料はナフサであり、その価格は「輸入ナフサUS$価格」がベースとなり、輸入時の為替レートにより円価格が決まります。
従って、為替が円安になると合成ゴムの価格が上がるということになります。

◇ナフサ価格要因

自動車部品や工業用ゴム製品の原料として利用されている合成ゴムですが、合成ゴムの原料として使用されているのがナフサです。


石油価格が高くなるとゴム価格は上昇し、逆に石油価格が安くなるとゴム価格も下落する傾向があります。
その理由は、合成ゴムが石油製品のナフサから作られているためです。一般的に、原油や石油製品価格が上昇すればナフサの取引価格も高くなり、それに伴って合成ゴムの価格も上昇します。


しかし合成ゴムの価格が上昇すると天然ゴムの価格が合成ゴムの価格よりも安くなるため、天然ゴムの需要が増えます。
結果として天然ゴムの価格上昇につながります。石油の価格が下がれば、その逆の現象が起きる要因となります。

■まとめ

今回は、合成ゴムの価格が値上がりしている要因についてご紹介しました。
合成ゴムの価格が値上がりしている背景には、世界各国の景気や合成ゴムの需要量、供給量の変動など様々な要因があります。