ものづくりプレス

2024-11-26

ゴムの熱劣化を防ぐために知っておくべきポイント

私たちの日常生活で目にするゴム製品は、その特性ゆえに広く利用されています。

しかし、ゴム製品は高温環境にさらされることで、劣化が進行することがあります。

この記事では、ゴムの熱劣化について詳しく探ります。

熱

ゴムの熱劣化とは?

環境温度の変化により、ゴムの分子構造に変化が生じ、それが劣化の原因となります。

高温下では、分子が柔らかくなり、弾力性が低下することがあります。

また、粘着性が増し、ゴムがべたついたり、場合によっては溶けてしまうこともあります。

分子に影響を与える温度はゴムの種類によって異なりますが、一般的には「暑い」と感じる環境で長時間ゴムを保管することは避けるべきです。

ゴムの耐熱温度

ゴムは樹脂とは異なり、熱硬化性の特性を持っているため、特定の温度を超えると溶けるという耐熱温度の定義はありません。

連続して使用する場合、すぐに溶けるわけではありませんが、時間が経過するにつれて柔らかくなったり、伸びたり、ちぎれたりといった物理特性の低下が見られる温度を耐熱限界温度と呼びます。

その一方で、連続して使用できる温度範囲を示す耐熱安全温度という概念も存在します。

熱がゴムに与える影響

一般的に、ゴム製品が振動を吸収したり、減衰させたり、軽減するために使用される場合、主に制御されるパラメータは硬度とばね特性です。

温度が高くなるほど、硬度が急速に上昇し、ばね特性も向上します。

この結果、製品が意図した特性を満たせなくなる可能性があります。


温度とばね特性、硬度の関係はゴムの種類によって異なりますが、硬度が3Hs上昇し(ばね特性が15%向上するまで)かかる時間を考慮すると、10℃で17年、15℃で9年、23℃で3.6年、30℃で1.6年、40℃では約5.5か月とされています。

つまり、この種の製品の場合、15℃の低温倉庫で保存することで品質を9年間維持できるのが有効期限となります。

温度管理がされていない倉庫で保管すると、夏には30℃を超え、場合によっては40℃近くになるため、設計通りの品質を保つのはせいぜい1年程度になるでしょう。

ゴムの熱劣化を防ぐ方法

ゴムの熱劣化を防ぐためには、以下の方法が効果的です。


温度管理

ゴム製品を使用する環境の温度を適切に管理することが重要です。

高温環境を避け、冷暗所で保管することで劣化を遅らせることができます。


直射日光の回避

直射日光にさらされると、紫外線による劣化が進行します。

ゴム製品を日光から遮ることで、劣化を防ぐことができます。


耐熱性のあるゴム

熱に強いゴムにはいくつかの種類があります。

以下に代表的なものを紹介します。


シリコーンゴム (VMQ)

耐熱温度: 約220°Cまで

非常に優れた耐熱性を持ち、高温環境でも安定した性能を発揮します。

自動車部品や医療用器具、電気絶縁材料などで広く利用されています。


フッ素ゴム (FKM)

耐熱温度: 約300°Cまで

耐熱性に加えて、耐薬品性や耐油性にも優れています。

化学プラントや航空宇宙産業、自動車部品などで使用されます。


エチレンプロピレンゴム (EPDM)

耐熱温度: 約150°Cまで

耐候性や耐オゾン性にも優れており、屋外での使用や紫外線にさらされる環境での利用に適しています。

建築材料や自動車部品、電気用ゴム部品などで広く用いられています。


ニトリルゴム (NBR)

耐熱温度: 約130°Cまで

耐油性や耐摩耗性にも優れており、工業用パッキンや自動車部品、防護手袋などに使用されています。


これらのゴム素材は、それぞれ異なる特性を持ち、特定の用途に適しています。

使用環境に応じて最適なゴム素材を選ぶことが重要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ゴムの特性を理解し、適切な方法で管理することが、製品の劣化を防ぐための鍵となります。

環境に応じたゴム素材の選択が、長期間にわたって高い性能を維持する助けとなるでしょう。

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