ものづくりプレス

2026-10-08

エラストマーの3Dプリント精度|期待と現実のずれ4つの理由

エラストマー対応の3Dプリンターで試作品を作ったが、図面通りの寸法に仕上がらない。柔らかい材料ならではの理由があるのか、それとも別の原因があるのか判断がつかない。

この記事では、エラストマーの3Dプリントで精度について期待と現実がずれやすい4つの点を整理します。当社の切削加工・3Dプリントの公開情報を土台にしています。

作成者 柴田(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年10月8日 最終更新日 2026年10月8日 本記事は2026年10月時点の情報です 読了時間 約8分

エラストマーの3Dプリントで、精度が出にくいのはなぜですか?

硬質材料に比べて、造形後の収縮や変形の影響を受けやすいためです。金属や硬質樹脂の3Dプリントで得られる精度を、そのままエラストマーに当てはめると、期待とずれが生じます。

当社の公開情報では、切削加工と3Dプリントの適した用途を比較しています。

精度・強度耐久性は切削加工が優れ、形状自由度は3Dプリントが優れるとしています。

柔らかい材料ほど、変形の影響を受けやすい

硬度が低いエラストマーほど、造形後に自重や支持構造の取り外しによって変形しやすい傾向があります。図面通りの寸法で造形されていても、取り外した後に形が変わることがあります。

出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」ページ(切削と3Dプリントの比較表)(自社情報・2026年10月確認)。

期待と現実がずれやすい4つの点は、何ですか?

造形後の変形、積層方向による強度差、表面の仕上がり、そして公差の考え方の4つです。いずれも硬質材料の3Dプリントとは異なる視点が必要になります。

ずれやすい点 硬質材料での期待 エラストマーでの現実
造形後の変形図面通りの寸法で安定自重や取り外しで変形しやすい
積層方向の強度方向による差は限定的方向によって強度差が出やすい
表面の仕上がり積層跡は目立ちにくい柔らかい分、積層跡が触感に出やすい
公差の考え方厳しい公差も狙いやすい機能に効く部位に絞る考え方が実務的

表面の仕上がりは、触感や密封性に関わる

積層跡は硬質材料では目立ちにくくても、柔らかいエラストマーでは表面の触感として現れやすい傾向があります。密封に関わる部品では、表面の仕上がりが機能に影響することもあるため、用途に応じて確認します。

積層方向は、強度だけでなく動きにも影響する

3Dプリントは層を重ねて造形するため、積層方向によって強度や伸び方に差が出ます。繰り返し曲げたり伸ばしたりする用途では、この方向性が機能に影響することがあります。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

精度を確認するには、どう進めますか?

試作して実測し、必要な精度が出ているかを確認する段階を置きます。図面上の計算だけでは、柔らかい材料特有の変形までは分かりません。

エラストマーの3Dプリントで精度を確認するまでの流れを4段階で示す図 図1 エラストマー3Dプリントの精度確認の4段階 STEP 1 試作品を造形 支持構造の 位置を検討 STEP 2 取り外し・実測 変形の有無を 確認 STEP 3 機能部位を確認 相手部品との 組み合わせ STEP 4 工法を判断 精度が足りなければ 切削加工へ 試作段階での実測が、精度の判断材料になります。

同じ設備が社内に複数あれば、まとめて試作する

同じ条件で使う部品が複数箇所にある場合、まとめて試作を進めることで、評価の手間を減らせます。使用箇所を洗い出したうえでご相談ください。

精度が足りない場合は、切削加工が候補になる

当社の公開情報では、精度・強度耐久性が求められる機能部品、ギヤ、摺動部品には切削加工が向くとしています。エラストマーの3Dプリントで精度が足りないと分かった場合、切削加工への切り替えを検討します。

形状確認の段階では、3Dプリントが有効

精度よりも、まず形状や取り付けを確認したい段階では、3Dプリントの形状自由度の高さが活きます。目的を分けて考えることで、工法選びに迷いにくくなります。

出典:富士ゴム化成「金型を作る前に形状確認する方法」ページ(3Dプリントでの試作)(自社情報・2026年10月確認)。

精度を確認した試作は、どう活かしますか?

試作で確認した寸法・変形の傾向・公差の考え方を、量産の工法選びと検査基準に反映します。3Dプリントでの試作がそのまま量産にならない場合も、検討の材料として活かせます。

エラストマーの3Dプリント試作で精度を確認した場合と確認しなかった場合の違いを対比した図 図2 精度を試作で確認した場合と、確認しなかった場合 試作で精度を確認した 確認しなかった 変形の傾向が分かる 工法の判断が的確 量産での手戻りが少ない 検査基準が具体的 量産時に寸法のずれが発覚 工法変更が後手に 手戻りが発生しやすい 検査基準が曖昧 試作段階での実測は、量産に進む前の手戻りを減らします。 硬度が高い場合と低い場合とで造形後の変形の影響度が変わることを示す図 図3 硬度で、変形の影響度が変わる 硬度が低い(柔らかい) 硬度が高い(硬い) 硬度が低いほど、造形後の変形の影響を受けやすくなる。 必要な精度は用途によって異なるため、試作で確認します。

過去の不具合は、工法選びの材料になる

前の試作品がどのように変形したか、どの部分で寸法がずれたかが分かれば、次の工法選びに反映できます。当社の試作評価では、寸法の確認に加えてこうした傾向も確認します。思い出せる範囲で構いません。

相手部品がある場合は、組み合わせて確認する

単体の寸法だけでなく、相手部品と組み合わせたときにどう機能するかまで確認すると、精度の評価がより実態に近づきます。相手部品の情報が分かれば、あわせてお知らせください。

段階的に進めたい場合も、相談できる

いきなり量産工法を決めるのではなく、まず3Dプリントで形状を確認し、精度が必要な部分だけ切削加工に切り替えるという進め方にも対応しています。試作の段階で評価した条件は、そのまま量産の検査基準に引き継げます。

工場視察や監査で、試作の様子を確認できる

当社では必要に応じて工場視察や監査に対応しています。試作の工程や検査体制を現地でご確認いただくことも可能です。

相見積もりでも、必要な精度をそろえて出す

複数社に相談する場合、必要な精度(公差)と使用条件を同じ内容で各社に伝えることが比較の前提になります。当社は相見積もりを歓迎しています。

自社のエラストマー3Dプリント試作は、どこまで整理できていますか?

当てはまる項目が多いほど、試作前に整理しておくと精度の確認がスムーズになります。下のチェックは診断ではなく、何が未整理かを確かめるための整理です。個人情報の入力はありません。

エラストマー3Dプリント試作の準備チェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個準備が整っています。試作のご相談に進めます。
2〜3個一部が未整理です。必要な精度の整理から始めてください。
4〜6個整理から始める段階です。まず試作の目的を明確にすることをおすすめします。

エラストマー3Dプリントの精度について、よくいただくご質問は?

出せる精度の目安、寸法の安定性、精度不足の対処、量産への移行、硬度との関係についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。

エラストマーの3Dプリントは、どこまで精度が出ますか?
当社の公開情報では、3Dプリントは形状の自由度が高い反面、精度や耐久性に課題が残るとしています。精度が求められる用途では、切削加工との比較をおすすめしています。

ゴムのような柔らかい材料は、3Dプリントで寸法が安定しますか?
柔らかい材料ほど、造形後の収縮や変形の影響を受けやすい傾向があります。試作段階で実測しながら確認する進め方になります。

精度が足りない場合、どうすればよいですか?
精度・強度耐久性が求められる機能部品やギヤ、摺動部品には切削加工が向くとしています。用途に応じてご提案します。

3Dプリントの試作で精度を確認してから、量産は切削加工にできますか?
できます。試作で確認した寸法や公差の情報は、量産の検査基準に引き継げます。

硬度によって、精度の出方は変わりますか?
硬度が低いほど変形の影響を受けやすい傾向があります。現品があれば試作で実際の精度を確認いただくことをおすすめしています。

見積りを依頼するとき、何をそろえればよいですか?

図面(または現品)、必要な精度、使用条件があれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。決まっていない項目は、決まっている条件から一緒に詰めていきます。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

エラストマーの3Dプリント試作を相談する

必要な精度が決まっていない段階でも構いません。試作の目的をお知らせいただければ、進め方をご提案します。

見積りを依頼する

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