ものづくりプレス

2026-09-10

3Dプリント試作と金型の使い分け|切り替える3つの目安

試作は3Dプリント、量産は金型。この2つだけで考えると、「試作では通ったのに量産で問題が出る」という段差にぶつかります。

この記事では、3Dプリントと金型のあいだにある選択肢を含めて、どの段階で何に切り替えるかの目安を整理します。判断のもとになるのは、確かめたいこと・数量・精度の3つだけです。この3つを先に決めておけば、工法の相談は短時間で終わります。逆にどれかが決まっていないと、工法の議論が堂々巡りになります。

作成者 西田(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年9月10日 最終更新日 2026年9月10日 本記事は2026年8月時点の情報です 読了時間 約8分

3Dプリントと金型は、どこで切り替えますか?

切り替えの目安は、確かめたいこと・数量・精度の3つです。形状の確認なら3Dプリント、実機評価なら切削加工、継続量産なら金型成形。この3段階で考えると、飛び越えによる手戻りが減ります。

3Dプリントによる形状確認から、切削加工での実機評価、金型成形での量産までの3段階を示す図 図1 試作から量産までの3段階 STEP 1 形状を確かめる 3Dプリント 短期間で形にする STEP 2 実機で評価する 切削加工 物性と精度を確かめる STEP 3 量産する 金型成形 数量が出れば1個あたりを抑える STEP 4 仕様を残す 図面・材質・ 検査項目を保存 段階を飛ばすと、量産に入ってからの修正が高くつきます。

3Dプリントで確かめられるのは、形と組み付けまで

3Dプリントは形状の自由度が高い反面、精度や耐久性に課題が残ります。また造形には3Dプリント用の材料を使うため、量産品と同じ物性にはなりません。ここを承知したうえで使えば、形状の確認や関係者との合意形成には十分に働きます。

切削加工は、量産に近い物性で確かめられる

ゴムは圧力を加えることで物性を高めるため、圧力を加えられない3Dプリントは物性で見劣りします。ゴム板から切削加工を行えば、より物性の高い部品を製作できます。実機での検証に耐える精度が欲しい、本物の材質で強度を確かめたい。そうした段階では切削加工が向きます。

出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」ページ掲載の説明(2026年8月確認)。

金型に進む前に、何を固めておきますか?

形状、組み付け、そして使用条件に対する材質の見当です。金型を作ってから変更すると、費用と時間の両方がかかります。

比較項目 切削加工 3Dプリント
精度◎(高精度・嵌合部もスムーズ)△(積層痕や歪みが生じやすい)
強度・耐久性◎(素材本来の強度を維持)△(積層方向に弱く、折れやすい)
形状自由度△(ワークが届かない箇所は不可)◎(中空構造なども可能)
適した用途機能を要する部品、機能評価、ギヤ、摺動部品、高圧部品、パッキンデザイン確認、簡易治具

金型の費用は、数量で見え方が変わる

ロットが比較的少量な場合、金型投資に対する償却が難しいことがあります。3Dプリントを使えば、製品を直接造形して在庫を圧縮する、型を造形して時間と費用を削減するといった使い方もできます。どちらが合うかは、年間数量と形状によって変わります。

形状の自由度が要るなら、3Dプリントにしかできない領域がある

切削加工では、工具が届かない内側の形状は作れません。中空構造や複雑な内部形状は、3Dプリントの得意な領域です。金型では成形で作れない形状も造形できるため、形状の検討段階では3Dプリントの自由度が効いてきます。

出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」ページの比較表と活用事例(2026年8月確認)。

自社の案件は、どの段階にありますか?

当てはまる項目が多いほど、3Dプリントより先の段階に進んだほうがよい状態です。工法を決める材料として使ってください。

工法の切り替えチェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。個人情報の入力はありません。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個形状の確認段階です。3Dプリントで形にして、関係者と合意を取るところから進められます。
2〜3個実機評価の段階です。切削加工で物性に近い試作を作ることをご検討ください。
4〜6個量産を見据える段階です。数量計画から金型の要否を判断できます。

金型を使わない量産という選択肢はありますか?

あります。数量が出ない部品では、切削加工で用意し続けるほうが総額を抑えられる場合があります。金型の費用をどう扱うかが、この判断を左右します。

年間数量が少ない場合と多い場合で、金型を使わない方法と金型成形のどちらが向くかを示す図 図2 数量で変わる、工法の分かれ目 少量 継続量産 少量なら金型を使わない方法から。継続して使うなら金型成形のほうが1個あたりを抑えられる。 分かれ目は形状と年間数量によって変わります。数量計画をうかがったうえでご提案します。

工法ごとの費用の分かれ目は切削・射出成形・3Dプリントのコスト比較で整理しています。金型の見積りの見方はゴム金型見積もりで失敗しない秘訣と業者選びもあわせてご覧ください。

1個からの切削という手がある

「金型を作るほどでもないが、高品質なものを1個からほしい」というニーズには、切削加工が向きます。ゴムに関しては材料の選択肢も多くなります。当社は多品種少量生産を得意としており、1点からの試作のご相談も承っています。

工法を決めるとき、何を伝えればよいですか?

確かめたいこと、年間数量、そして使用条件の3つです。この3つがそろえば、どの段階から入るのが早いかをご提案できます。

工法を決めるために必要な情報と、それが欠けたときに止まる工程を対比した図 図3 伝えると決まること、伝えないと止まること 伝えると決まる 伝えないと止まる 確かめたいこと → 工法 年間数量 → 金型の要否 使用条件 → 材質 納期 → 進め方 試作を作ってから作り直し 金型を作ってから数量変更 材質を決められない 日程が組めない 最初の1回で3つを伝えるだけで、後の手戻りが大きく減ります。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

造形前の相談で、手戻りが減る

ゴム・樹脂のノウハウにより、造形前に強度の足りない所や、どうすればご要望の品物を造形できるかを提案できます。データを作り込む前に一度見せていただくと、作り直しの回数が減ります。

段階を飛ばすと、修正が高くつく

形状の確認をせずに金型を作ると、直したいところが出たときに型から作り直しになります。逆に、形状だけを何度も造形して満足してしまうと、物性の問題が量産の直前に出てきます。3段階のどこを省けるかは案件によりますが、省いた段階で確かめるはずだったことは、どこかで必ず確かめることになります。

検査の取り決めは、量産に入る前に決めておく

受け入れ時に何を確認するかを、図面を起こす段階で一緒に決めておいてください。寸法のどこを測るか、硬度をどの範囲で見るか、外観はどこまで許容するか。当社は品質保証部を設置し、ご要望に合わせて抜取り検査と全数検査を自社内で行える体制を整えています。ここが決まっていれば、2回目以降の発注で判断に迷わなくなります。

使い分けについて、よくいただくご質問は?

切り替えの目安、金型前に固めること、少量時の判断についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。

試作は3Dプリント、量産は金型と決めてよいですか?
多くの場合はその流れですが、間に切削加工という選択肢があります。精度や物性を確かめたい段階では、切削のほうが実機評価に耐えます。

金型を作る前に、何を確かめておくべきですか?
形状と組み付け、そして使用条件に対する材質の見当です。ここが固まってから金型に進むと、作り直しの手戻りを避けやすくなります。

少量しか使わない部品でも、金型は必要ですか?
数量によります。ロットが少ない場合、金型投資の償却が難しいことがあります。その場合は金型を使わない方法で用意する選択肢があります。

型そのものを3Dプリントで作れますか?
型を造形して時間と費用を削減するという使い方があります。形状と数量によって適否が変わるため、ご相談ください。

切り替えの判断を手伝ってもらえますか?
数量計画と確かめたいことをうかがったうえで、工法をご提案します。造形前に強度の足りない箇所を指摘することもできます。

相談するとき、何をそろえればよいですか?

確かめたいこと、形状が分かるデータか現品、必要数量の3つがあれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。内容に応じてご提案します。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

当社は相見積もりを歓迎しています。工法が違う見積りを金額だけで並べても比較になりませんので、「どの工法で、どの精度で、何個作るか」をそろえて各社に出すことをおすすめします。条件の整理からご相談いただいて構いません。

材料の選び方と寸法表を先に確認する

SF-JOINT総合カタログ・施工要領・Oリング寸法表などの資料をご用意しています。会社名とご連絡先のご入力でダウンロードいただけます。

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