ものづくりプレス

2026-09-10

3Dプリント試作でゴム材料は使える?|選べる材質と限界

ゴムの試作を3Dプリントで作りたい。その相談をいただくとき、最初にお伝えするのは「どこまでを確かめたいのか」という問いです。

この記事では、3Dプリントの試作で選べる材質と、ゴム部品を作るうえでの限界、そして限界に当たったときの代わりの手を整理します。

作成者 柴田(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年9月10日 最終更新日 2026年9月10日 本記事は2026年8月時点の情報です 読了時間 約8分

3Dプリントの試作で、ゴム材料は使えますか?

柔らかい材質としてはエラストマーとシリコンに対応しています。ただし造形に使うのは3Dプリント用の材料であり、量産で使う配合のゴムをそのまま造形するものではありません。

3Dプリントの試作で確認できる項目と、確認しきれない項目を対比した図 図1 3Dプリントで確かめられること、確かめられないこと 確かめられる 確かめきれない 形状と寸法の見当 組み付けたときの干渉 操作したときの感触 関係者との合意形成 量産品と同じ物性 長期の耐久性 精度が要る嵌合 積層方向にかかる強度 何を確かめたいかが決まれば、3Dプリントで足りるかどうかも決まります。

造形用の材料と、量産用の材料は別物

3Dプリントは、プラスチックでもゴムでも3Dプリント用の材料を使います。またゴムは圧力を加えることで物性を高めるため、圧力を加えられない3Dプリントは物性として見劣りします。この前提を共有したうえで使えば、試作としての価値は十分にあります。

だから「何を確かめたいか」を先に決める

形が合うかを見たいのか、強度を確かめたいのか、関係者に現物を見せて話を進めたいのか。目的が形状の確認や合意形成なら3Dプリントで足ります。物性の確認が目的なら、別の方法を選んだほうが早く着地します。

出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」ページ掲載の説明とFAQ(2026年8月確認)。

選べる材質には、どんなものがありますか?

汎用樹脂からスーパーエンプラ、エラストマー、シリコンまで対応しています。用途と確かめたいことに応じて、造形方法とあわせてご提案します。

分類 材質の例 向いている確認
汎用樹脂PLA、ABS形状の確認、組み付けの見当
スーパーエンプラピーク、PPS、PEI耐熱が要る部位の形状確認
エラストマー柔らかい樹脂弾性のある部品の形状・感触の確認
シリコンシリコン柔らかい部品の形状・感触の確認

造形サイズと積層ピッチには目安がある

造形サイズは3辺の合計が1000mmまで(高さは最大340mm)を目安としています。積層ピッチは標準0.2mmからノズル径の半分の0.1mmが目安です。設備上の最小は0.01mmですが、造形時間が数百時間になるため現実的ではありません。長尺のものは、ベルト搬送式の硬質樹脂用3Dプリントで対応できる場合があります。

3Dプリントの積層ピッチが標準0.2mmから0.1mmを目安とし、設備上の最小は0.01mmであることを示す図 図2 積層ピッチの目安 0.2mm(標準) 0.1mm(ノズル径の半分) 設備上の最小は0.01mmだが、造形時間が数百時間になるため現実的ではない。 目安の値です。形状と材質によって選べる範囲は変わります。 出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」FAQ(2026年8月確認)

出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」FAQ(2026年8月確認)。

自社の試作は、3Dプリントで足りますか?

当てはまる項目が多いほど、3Dプリント以外の方法を検討したほうがよい状態です。目的を整理する材料として使ってください。

3Dプリントで足りるかのチェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。個人情報の入力はありません。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個3Dプリントで足りる可能性が高い状態です。形状の確認や合意形成には十分に使えます。
2〜3個確かめたい内容によっては別の方法が向きます。切削加工との比較をおすすめします。
4〜6個3Dプリントでは確かめきれない項目が多い状態です。切削加工や金型成形をご検討ください。

納期の目安はどのくらいですか?

参考期間として、シリコンは2週間、硬質樹脂は1週間、エラストマは1週間を目安としています。形状と数量によって変わるため、実際の日数はご相談時にお伝えします。

シリコンは2週間、硬質樹脂とエラストマは1週間という造形の参考期間を横棒で示す図 図3 造形の参考期間 シリコン 2週間 硬質樹脂 1週間 エラストマ 1週間 形状と数量によって変わります。急ぎの場合はご相談ください。 参考期間です。実際の日数は形状・数量・混雑状況で変わります。 出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」ページ(2026年8月確認)

造形前の相談で、手戻りが減る

ゴム・樹脂のノウハウにより、造形前に強度の足りない所や、どうすればご要望の品物を造形できるかを提案できます。データを作り込む前に一度見せていただくと、作り直しの回数が減ります。

オリジナル配合のフィラメントも相談できる

ご使用量や物性により、オリジナル配合のフィラメントの製造も可能です。特定の物性を確かめたい場合は、材料の相談から入ることもできます。まずはどんな物性が必要かをお知らせください。ご使用量によっては対応が難しい場合もあるため、想定している数量もあわせてうかがいます。

3Dプリントで足りないときは、どうしますか?

切削加工に切り替えます。3Dプリントは形状の自由度が高い反面、精度や耐久性に課題が残るためです。ゴム板から切削加工を行うことで、より物性の高い部品を製作できます。

比較項目 切削加工 3Dプリント
精度◎(高精度・嵌合部もスムーズ)△(積層痕や歪みが生じやすい)
強度・耐久性◎(素材本来の強度を維持)△(積層方向に弱く、折れやすい)
形状自由度△(ワークが届かない箇所は不可)◎(中空構造なども可能)
適した用途機能を要する部品、機能評価、ギヤ、摺動部品、高圧部品、パッキンデザイン確認、簡易治具

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

切削加工と3Dプリントの使い分けは切削加工・3Dプリントのページでも整理しています。工法ごとの費用の分かれ目は切削・射出成形・3Dプリントのコスト比較をご覧ください。

試作の使い道は、性能評価だけではない

形のあるものを関係者に見せられると、話の進み方が変わります。図面上のやりとりでは意見が出なかった点も、手に取ると具体的な指摘に変わります。当社の3Dプリント活用事例でも、試作時に実際の形状や感触を確認できることで、具体的な改善案が生まれやすくなる点を挙げています。営業やプレゼンの場で使うという用途もあります。

検査用の治具にも使える

量産品の検査効率や検査レベルを標準化するための治具も、3Dプリントで製作できます。治具の軽量化、小ロットからの製作、製作時間の削減といった利点があります。部品そのものではなく、部品を測るための道具として使う方法です。

量産の前段として使うと、金型の手戻りが減る

試作品を作って評価し、その後に金型を作るという順番にすれば、金型を作ってから修正するより時間と費用を抑えられます。当社の活用事例でも、この進め方を挙げています。ロットが少ない場合は、製品を直接造形して在庫を圧縮する、型を造形して時間と費用を削減するといった使い方もあります。

3Dプリントの試作について、よくいただくご質問は?

材質、期間、オリジナル配合、量産への使用可否についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。

どんな材質が造形できますか?
汎用樹脂(PLAやABS)、スーパーエンプラ(ピーク、PPS、PEI)、エラストマー(柔らかい樹脂)、シリコンなどに対応しています。

造形にどのくらいかかりますか?
参考期間として、シリコンは2週間、硬質樹脂は1週間、エラストマは1週間を目安としています。形状と数量によって変わるため、実際の日数はご相談時にお伝えします。

オリジナルの配合で造形できますか?
ご使用量や物性により可能です。まずはお問い合わせください。

造形前に設計の不備を見てもらえますか?
ゴム・樹脂のノウハウにより、造形前に強度の足りない所や、どうすればご要望の品物を造形できるかを提案できます。

3Dプリントで作ったものを、そのまま量産品として使えますか?
3Dプリントは形状の自由度が高い反面、精度や耐久性に課題が残ります。実機での検証に耐える精度や強度が要る場合は、切削加工や金型成形をご提案します。

相談するとき、何をそろえればよいですか?

確かめたいこと、形状が分かるデータか現品、必要数量の3つがあれば話を始められます。決まっていない項目は、決まっている条件から一緒に詰めていきます。すべてが決まっていない状態でも構いません。内容に応じてご提案します。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

材料の選び方と寸法表を先に確認する

SF-JOINT総合カタログ・施工要領・Oリング寸法表などの資料をご用意しています。会社名とご連絡先のご入力でダウンロードいただけます。

資料をダウンロードする

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