ものづくりプレス

2026-08-30

耐薬品性・耐油性で選ぶゴム材料 完全早見表|NBR・FKM・EPDM他|富士ゴム化成

耐薬品性・耐油性で選ぶゴム材料 完全早見表|NBR・FKM・EPDM・シリコーンほか主要材質を一覧比較

薬液や油に触れるシール材を、「とりあえずフッ素ゴム」で選んでいないでしょうか。フッ素ゴムは確かに優れた材料ですが、万能ではありません。薬品の種類によっては、フッ素ゴムが苦手とする相手もあり、そこを見誤ると、膨潤や早期劣化といったトラブルに直結します。

材料選定は、ゴム部品の設計で最も重要な判断のひとつです。ここを間違えると、どれだけ形状や公差を作り込んでも、部品は早期に劣化してしまいます。逆に、材質さえ正しく選べていれば、多少の設計上の余裕は材質の性能がカバーしてくれます。それほど、材料選定は結果を左右します。

しかし、材質の種類は多く、それぞれ得意な相手・苦手な相手があるため、頭の中だけで整理するのは容易ではありません。しかも、ひとつの材質がすべての性能で優れているわけではなく、耐薬品性を取れば耐油性が落ちる、といったトレードオフがあります。そこで役立つのが、薬品・油の種類ごとに主要材質の耐性を一覧化した「早見表」です。早見表を手元に置いておけば、「この用途にはこの材質系」という当たりを、素早く正確につけられます。

結論です。酸・アルカリ・有機溶剤・燃料・油といった分類ごとに、主要材質の耐性を一覧で押さえておけば、コストと用途を両立する材料が選べます。 この記事では、業界標準の耐性データをもとに、耐薬品性・耐油性の早見表と、選定時の落とし穴を整理します。

耐性の基本:薬品・油の分類と評価の読み方

材料選定に入る前に、2つの基本を押さえましょう。

ひとつは、相手を分類して考えることです。ゴムが接触する流体は、大きく「酸性」「アルカリ性」「有機溶剤」「燃料・油類」などに分けられます。この分類ごとに、得意な材質・苦手な材質の傾向があります。まず「自分の用途はどの分類か」を見極めることが出発点です。

もうひとつは、評価の読み方です。耐性データでは、材質と薬品の組み合わせごとに、影響の度合いが記号で示されます。一般に、影響が少ない順に「A(ほとんど影響されない)」「B(若干影響される)」「C(かなり影響される)」「D(使用不可)」といった段階で表されます。AやBなら使える可能性が高く、Dは避けるべき、という見方です。

ただし、注意点があります。こうした耐性データは、あくまで標準的な条件での目安です。実際の耐性は、濃度・温度・接触時間の組み合わせによって変わります。同じ薬品でも、濃度が高ければ、あるいは高温であれば、耐性は下がります。早見表はあくまで「当たりをつける」ためのものであり、重要な用途では、実環境に近い条件での確認が欠かせません。

▶ よく似た製作事例を見る 製品実績のページで、同じような部品の製作事例をご覧いただけます。

主要材質の耐薬品性 早見表

代表的なゴム材質の、薬品に対する耐性の傾向を整理します(詳細な組み合わせは、受領した薬品耐性データに基づき、記事内で表形式にて掲載予定)。

NBR(ニトリルゴム)は、耐油性に優れる一方、酸・アルカリや、屋外の耐候性はあまり得意ではありません。EPDM(エチレンプロピレンゴム)は、酸・アルカリや熱水、屋外環境に強い反面、油には弱いという、NBRとほぼ逆の性格を持ちます。CR(クロロプレンゴム)は、耐候性・耐オゾン性のバランスが良く、幅広い用途で使われます。FKM(フッ素ゴム)は、耐熱性・耐薬品性に優れ、多くの薬品や油に耐えますが、後述する苦手な相手があります。シリコーンゴムは、耐熱・耐寒性に優れ、無臭・無毒性が求められる用途に向きますが、機械的強度や耐油性では他材に劣る面があります。

このように、材質にはそれぞれ「性格」があります。ひとつの材質がすべてに強いわけではなく、用途に応じて使い分けるのが基本です。

主要材質の耐油性 早見表

油に触れる用途では、油の種類による使い分けが重要です。

鉱物油・作動油・潤滑油には、NBRやFKMが適します。一般的な鉱物油であればNBRで対応できることが多く、より高い耐熱性が要る場合にFKMを選びます。ガソリン・軽油などの燃料には、FKMやNBRが向きます。ATF(トランスミッション液)も、NBRやFKMが対応します。

ここで、特に注意したいのがブレーキ液(リン酸エステル系)です。「油だから耐油ゴムでいいだろう」と考えてNBRやFKMを選ぶと、失敗します。リン酸エステル系のブレーキ液には、NBRもFKMも適さず、EPDMやIIR(ブチルゴム)が正解です。「耐油ゴム」という言葉に引きずられると、この落とし穴にはまります。油の種類によって正解が入れ替わる――これが耐油材料選定の要点です。

薬品・油別の推奨材質(まとめ)

ここまでの内容を、用途別に整理します。

  • 強酸(濃硫酸・濃硝酸など) → FKMが有力
  • 強アルカリ(苛性ソーダなど) → EPDM・CR(※FKMは弱い)
  • 有機溶剤(トルエンなど芳香族) → FKM・FVMQ(フロロシリコーン)
  • 鉱物油・燃料 → NBR・FKM
  • ブレーキ液(リン酸エステル系) → EPDM・IIR(※NBR・FKMは不可)
  • 屋外・耐候・耐オゾン → EPDM・CR・CSM

この一覧を見ると、「最強の材料」は存在せず、「用途に合った材料」があるだけだということが分かります。FKMは確かに万能に近い性能を持ちますが、強アルカリや熱水、ブレーキ液では、より安価なEPDMに軍配が上がることもあります。用途を見極めて選べば、過剰なコストをかけずに、必要な性能を確保できます。

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用途特性も材質選定の判断材料になる

耐薬品性・耐油性に加えて、用途によっては別の性質が決め手になることがあります。材質選定では、こうした「用途特有の要求」も見落とせません。

食品・医療などの分野では、無臭・無毒性や、衛生面での適性が求められることがあります。シリコーンゴムは、こうした用途で選ばれることが多い材質です。ただし、これらの分野では規格適合の確認が重要になるため、適合性を断定せず、用途ごとに個別に確認することが前提になります。

屋外で使う部品では、耐候性・耐オゾン性が重要です。日光や大気にさらされ続けると、耐候性の弱い材質は表面が劣化し、ひび割れを起こします。EPDMやCRは、この耐候性に優れる材質です。屋外用途で、耐候性を考えずに耐油材のNBRを選ぶと、油には強くても、日光で早く劣化してしまいます。

低温環境では、耐寒性が問われます。ゴムは低温で硬くなり、柔軟性を失います。寒冷地や冷凍設備で使う部品では、低温でも硬くなりにくい材質を選ぶ必要があります。シリコーンは、この耐寒性に優れます。

このように、材質選定は「薬品・油への耐性」だけでなく、「その用途ならではの要求」まで含めて総合的に判断します。早見表で薬品・油への耐性の当たりをつけたうえで、こうした用途特性を重ねて考えると、より確実な選定ができます。用途をお知らせいただければ、これらの観点も含めて、最適な材質を一緒に絞り込みます。

表だけで選ぶと起きる落とし穴

早見表は便利ですが、それだけで最終判断をすると、いくつかの落とし穴があります。

第一に、濃度依存です。同じ薬品でも、濃度が高ければ耐性は下がります。表の値は特定の条件での目安であり、実際の濃度に合っているとは限りません。

第二に、温度依存です。高温になるほど、多くの材質で耐性は低下します。常温で使える材料が、高温では使えないこともあります。

第三に、膨潤です。耐性が「D」でなくても、多少の膨潤(ふくらみ)が起きる材質はあります。寸法精度が重要なシール部品では、わずかな膨潤が問題になることがあります。

第四に、「フッ素ゴム最強」という思い込みです。繰り返しになりますが、FKMにも苦手な相手があります。「迷ったらフッ素ゴム」で選ぶと、強アルカリや熱水の用途で早期劣化を招くことがあります。

これらの落とし穴を避けるには、早見表で候補を絞ったうえで、使用条件を具体的に確認することが大切です。私たちは、業界標準の耐性データを参照しながら、用途・環境に合った市販材料の候補を整理するお手伝いができます。なお、材料の配合そのものは材料メーカーの領域であり、私たち自身は配合を行いません。用途をうかがい、材料メーカーと連携して、最適な材質を一緒に絞り込んでいきます。

材質選定の実務:早見表をどう使うか

早見表を「見る」だけでなく、実務で「使う」ための流れを整理しておきます。おすすめは次の4ステップです。

Step1 使用環境を書き出す。 まず、その部品が接触する流体(薬品・油・水など)、温度、圧力、接触時間を書き出します。ここが曖昧なままだと、早見表を見ても候補を絞れません。

Step2 早見表で候補を絞る。 使用環境を、早見表の分類(酸・アルカリ・有機溶剤・燃料・油)に当てはめ、「A」「B」評価の材質を候補として拾います。

Step3 他の要求性能で絞り込む。 耐性だけでなく、硬度、耐熱・耐寒の範囲、機械的強度、コストといった条件で、候補をさらに絞ります。たとえば、耐性は満たしても、必要な硬度が出せない材質は外れます。

Step4 実条件で確認する。 重要な用途では、絞り込んだ材質について、実際の濃度・温度に近い条件で確認します。早見表は目安であり、最終判断は実条件が前提です。

この流れで進めると、「なんとなくフッ素ゴム」ではなく、根拠を持って材質を選べます。そして、選定に迷ったときは、Step1の使用環境さえ整理できていれば、あとは一緒に絞り込めます。

コストと性能のバランスをどう取るか

材料選定では、性能だけでなくコストも無視できません。一般に、高性能な材質ほど価格は高くなります。FKM(フッ素ゴム)は優れた性能を持ちますが、NBRやEPDMと比べると高価です。

ここで大切なのは、「オーバースペックを避ける」という視点です。用途が求める性能を、必要十分に満たす材質を選べば、無駄なコストをかけずに済みます。たとえば、常温の水回りで使う部品に、高価なFKMを選ぶ必要はありません。EPDMで十分な場合が多いからです。逆に、強酸や高温にさらされる過酷な用途で、安価な材質を無理に使えば、早期交換のコストがかさみ、かえって高くつきます。

「必要な性能を、最も合理的なコストで満たす」――これが材料選定の理想です。早見表で候補を絞ったうえで、性能とコストのバランスを取っていくことで、この理想に近づけます。私たちは、性能・コスト・入手性を踏まえた材質のご提案ができます。「一番良い材料」ではなく「その用途に最も合った材料」を、一緒に見つけていきましょう。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 「フッ素ゴム最強」は本当ですか?

耐熱性・耐薬品性に優れますが、強アルカリ・熱水・ブレーキ液には適しません。用途による見極めが必要です。

Q. バイトンとフッ素ゴムの違いは?

バイトンはフッ素ゴム(FKM)の商標のひとつです。材料の分類としては同じです。

Q. 耐油ゴムなら、ブレーキ液にも使えますか?

リン酸エステル系のブレーキ液には、EPDM・IIRが適します。NBR・FKMは不可です。

Q. 同じ材質でも、会社によって性能が違うのはなぜですか?

配合によって物性が異なるためです。配合は材料メーカーの領域です。

Q. 材質が決まっていない段階でも相談できますか?

はい。用途・使用環境をお知らせいただければ、候補の整理からご相談いただけます。

用途・使用環境から、最適な材質を一緒に絞り込みます。図面が固まっていなくても、接触する薬品・油・温度をお知らせいただければご相談いただけます。

平日9:00〜17:30/図面・資料の添付にも対応しています。

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