ものづくりプレス

2026-09-24

ゴムは配合で成形性が変わる|同じ材質名でも起こる4つの違い

「NBRで」と材質名を指定して発注したのに、前の仕入先の部品と成形品の寸法が微妙に違う。同じ材質名なら同じ物になると思っていたが、実際には違いが出る。ゴム部品を扱う担当者が、切り替えのたびに直面する疑問です。

この記事では、ゴムが配合によって成形性や収縮率が変わる理由と、この違いをふまえて発注時に何を伝えればよいかを整理します。当社がクライアントから訂正を受けた経緯をふまえて書いています。

作成者 橋本(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年9月24日 最終更新日 2026年9月24日 本記事は2026年9月時点の情報です 読了時間 約8分

材質名が同じでも、成形性が変わるのはなぜですか?

ゴムには配合によって何十万通り以上の種類があります。同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが異なり、材質によって収縮率も異なります。「材質名」は分類の名前であって、1つの材料を指しているわけではありません。

当社は次のように説明しています。

「ゴムと一言で言っても何十万通り以上の配合があり、同じ材質でも配合により成形しやすさが異なります。」

材質名は「カテゴリ」、配合は「中身」

NBRやシリコーンといった材質名は、ゴムの大まかな分類を示す言葉です。実際に成形される材料は、そのカテゴリの中で無数の配合パターンから選ばれます。配合によって、硬さ、成形のしやすさ、収縮率、耐久性などが変わります。材質名だけの指定では、この配合の違いが見えません。

配合を決めているのは、当社ではなく材料メーカー

当社は材料配合を行っておらず、卸売が主となる立場です。材料の配合は主に材料メーカーの管轄で、当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わります。そのため配合そのものをカスタムするご要望は、材料メーカーとの調整が必要になる場合があります。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

配合の違いは、何に影響しますか?

成形のしやすさと、成形後の収縮率です。同じ金型を使って成形しても、配合が違えば仕上がりの寸法が変わることがあります。この影響は、とくに金型成形の部品で公差を考えるときに関わってきます。

影響する点 内容 発注時の対応
成形のしやすさ複雑な形状への対応度形状が複雑な場合は事前に相談
収縮率金型寸法と成形品寸法の差公差は品物ごとに決める
硬さ・弾性同じ材質名でも幅がある使用条件から候補を絞る
耐久性配合によって差が出ることがある過去の不具合があれば伝える

収縮率の違いは、公差の考え方に直結する

金型成形は一般的にVDI規格に書かれる公差で金型が作られるとされていますが、実際の収縮率は配合によって変わるため、公差は品物ごとに決めていく必要があります。公差の考え方はゴム部品の図面公差は「1段緩める」が正解で詳しく整理しています。

切り替え時に「同じ材質名」だけを引き継ぐと、不具合が起こる

仕入先を切り替える際、材質名だけを指定して発注すると、配合の違いにより前の部品と性能が異なることがあります。試作段階での評価を挟むことで、この違いに気づき、対応できます。

出典:富士ゴム化成の説明(2026年6月・自社情報)。

発注時には、何を伝えればよいですか?

材質名に加えて、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)です。この4条件が分かれば、配合の違いを含めて用途に合う材料の候補をご提案できます。

材質名の指定に加えて使用条件を伝えることで用途に合う材料が決まるまでの4段階を示す図 図1 材質名だけでなく使用条件を伝える流れ STEP 1 材質名を伝える 分かる範囲で (未定でも可) STEP 2 使用条件を伝える 温度・接触物 圧力・時間 STEP 3 候補を提案 配合を含めた 材料の候補 STEP 4 試作で評価 実機での 確認 材質名だけでは配合の違いが見えないため、使用条件をあわせて伝えることが重要です。

前の部品の情報も、配合の違いに気づく手がかりになる

前の部品がどう傷んだか、どんな条件で使われていたかが分かれば、配合の違いによる影響を推測しやすくなります。現物調査では、寸法と硬度に加えてこうした状態も確認します。

相見積もりでは、使用条件をそろえて出す

材質名だけで各社に見積りを依頼すると、各社が異なる配合を前提に金額を出すため、比較になりません。使用条件と数量を同じ内容で伝えることが、意味のある比較につながります。当社は相見積もりを歓迎しています。

出典:富士ゴム化成「お問い合わせ」ページ(見積り時に必要なもの・相見積もり歓迎)(自社情報・2026年9月確認)。

配合の違いを、実際にどう確認しますか?

試作品を実機に取り付けて評価する段階を置くことが、確認の要になります。図面上の材質名だけでは分からない性能の差を、実際の使用条件で確かめられます。

材質名だけを伝えて発注した場合と使用条件をあわせて伝えて発注した場合の違いを対比した図 図2 材質名だけで発注した場合と、使用条件を伝えて発注した場合 使用条件も伝えた 材質名だけ 配合を含めた候補が出る 公差の考え方が合う 試作評価で確認できる 切り替え後の不具合が少ない 配合の違いが見えない 公差の前提がずれる イメージと違う仕上がり 切り替え後に不具合が出ることも 材質名は入口であって、使用条件と組み合わせて初めて具体的な材料が決まります。 材質名だけの指定と使用条件がそろった指定とで材料選定の精度が変わることを示す図 図3 伝える情報の詳しさで、材料選定の精度が変わる 材質名だけ 材質名+4条件 使用条件が詳しいほど、配合の違いまで含めた材料選定の精度が上がる。 4条件は温度・接触するもの・圧力・使用時間です。数値でなくても、使われ方が分かれば絞り込めます。

組み付く相手部品の材質も、あわせて確認する

ゴム部品は単体で機能することが少なく、相手部品との組み合わせで働きます。配合の違いで硬さが変わると、相手部品との当たり方が変わり、想定していなかった摩耗につながることがあります。相手部品の材質や締め付け方が分かれば、配合の違いによる影響もあわせて検討できます。

過去の不具合は、配合の違いに気づく最も具体的な手がかり

前の部品が硬くなって割れたのか、膨らんで抜けたのかによって、疑うべき条件が変わります。配合の違いが疑われる場合も、この不具合の状態を伝えていただくことで、材料選定の材料として活用できます。

自社の材料指定は、どこまで整理できていますか?

当てはまる項目が多いほど、発注前に整理しておくと配合の違いによる不具合を防げます。下のチェックは診断ではなく、材料指定の情報がそろっているかを確かめるための整理です。個人情報の入力はありません。

材料指定の整理チェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個材料指定の整理が進んでいます。見積り依頼に進めます。
2〜3個一部が未整理です。使用条件の書き出しから始めてください。
4〜6個整理から始める段階です。まず前の部品の使用条件を振り返ることをおすすめします。

ゴムの配合について、よくいただくご質問は?

同じ材質名での再現性、配合のカスタム、切り替え時の対応、収縮率への影響、伝えるべき情報についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。個別の品物については、使用条件をうかがったうえでお答えしています。

材質名を指定すれば、どこに発注しても同じものができますか?
できません。ゴムには配合によって何十万通り以上の種類があり、同じ材質名でも配合により成形しやすさが異なります。材質名に加えて使用条件を伝えていただくことをおすすめします。

配合は自社で調整してもらえますか?
当社では材料配合を行っておりません。当社は卸売が主となり、材料の配合は主に材料メーカーの管轄になります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わります。

前の仕入先と同じ配合で作ってもらえますか?
同じ配合を指定として再現することは難しい場合があります。前の部品の材質名・硬度・使用条件をうかがい、近い性能の材料をご提案する形になります。

配合が違うと、何が変わりますか?
成形のしやすさと、成形後の収縮率が変わります。同じ金型を使っても、配合によって仕上がりの寸法が変わることがあります。硬さや弾性が変わることで、相手部品との当たり方にも影響が出ることがあります。

材質名だけでなく、何を伝えればよいですか?
使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)です。これが分かれば、配合の違いも含めて用途に合う材料をご提案できます。

相談するとき、何をそろえればよいですか?

材質名(分かる範囲で)、使用条件、数量があれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。決まっていない項目は、決まっている条件から一緒に詰めていきます。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

材料の選び方と寸法表を先に確認する

SF-JOINT総合カタログ・施工要領・Oリング寸法表などの資料をご用意しています。会社名とご連絡先のご入力でダウンロードいただけます。

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