ものづくりプレス

2026-09-13

ゴム材料の選定手順|使用条件から絞る4ステップと落とし穴

「材質はNBRで」。図面にそう書かれていても、それだけでは決まりません。ゴムは同じ材質名でも配合によって挙動が変わるためです。

この記事では、ゴム材料をどんな順番で絞り込むのか、そして材質名だけを指定したときに起きる落とし穴を整理します。順番さえ押さえておけば、選定にかかる時間はかなり短くなります。

作成者 西田(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年9月13日 最終更新日 2026年9月13日 本記事は2026年8月時点の情報です 読了時間 約8分

ゴム材料は、どんな順番で決めますか?

使用条件を書き出し、条件に合う材質を絞り、工法を決め、最後に公差と検査を決めます。材質から入るのではなく条件から入るのが、遠回りを避ける順番です。

ゴム材料を使用条件から絞り込み、工法と公差を決めるまでの4段階を示す図 図1 材料を絞り込む4ステップ STEP 1 条件を書く 温度・接触するもの 圧力・使用時間 STEP 2 材質を絞る 条件に合う候補を 主要ゴムから選ぶ STEP 3 工法を決める 数量と形状から 成形か切削か STEP 4 公差と検査 機能に効く部位 だけを厳しく 順番を逆にすると、決めたことをやり直すことになります。

材質名は入口であって、到達点ではない

ゴムには何十万通り以上の配合があり、同じ材質名でも成形のしやすさが変わります。また材質によって収縮率が異なるため、公差の考え方まで変わります。「NBRで」という指定は、候補を絞る手がかりにはなりますが、そこから先は条件で詰めていく必要があります。

配合は材料メーカーの領域

当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーが担っています。そのため「配合を調整して条件に合わせる」のではなく、「条件に合う材料を選ぶ」という進め方になります。だからこそ、条件の解像度がそのまま選定の精度になります。

出典:富士ゴム化成「ゴム・プラスチックとは」および2026年6月の当社説明(自社情報・2026年8月時点)。

使用条件は、何を書き出せばよいですか?

温度、接触するもの、圧力、使用時間の4つです。このうち1つでも欠けると、候補を1つに絞りきれません。

条件 書き出すこと 見落としやすい点
温度常用と最高・最低接触部の発熱で材料が受ける温度は上がる
接触するもの油・薬品・水・粉じん洗浄工程で別の薬品に触れることがある
圧力かかる範囲と方向瞬間的にかかる圧力も含める
使用時間連続か断続か、年数短時間なら耐える材料も連続では持たない

洗浄と停止中の条件も、条件のうち

運転時の条件だけを見て選ぶと、洗浄剤で膨潤するといった見落としが起こります。停止中に結露する、屋外に置かれて紫外線を受ける、そうした時間も材料には効いています。1日、あるいは1年を通してどんな環境に置かれるかで書き出してください。

ゴムには苦手な条件がある

ゴムはオゾンや紫外線に強くありません。また低温や高温の影響を受けて十分な弾性を発揮できない場合があります。こうした弱点を配合で補う努力が材料側で行われていますが、前提として苦手な条件があることを踏まえて選ぶ必要があります。

主要な材質は、どう使い分けますか?

耐油、耐熱、耐寒、耐候、耐薬品のどれを優先するかで決まります。当社が公開している主要合成ゴムの特性を出発点にしてください。

略号 名称 特徴
NBRニトリルゴム最も一般的な材料。耐油性や耐摩耗性が良い反面、耐候性は良くない
HNBR水素化ニトリルゴムNBRの耐候性や耐熱性を改良したグレード。耐寒性やコスト面ではNBRに劣る
CRクロロプレンゴム機械的強度や耐候性、難燃性に優れ、自己消化性のあるバランスの良いゴム
FKMフッ素ゴム耐熱性・耐油性・耐薬品性・耐オゾン性に優れる。耐寒性が低く、有機酸・ケトン・エステル・アミン系に耐性がない
VMQシリコーンゴム優れた耐熱性・耐オゾン性・耐寒性を持ち、生理不活性でもある

条件が競合したら、優先順位を決める

耐熱と耐寒の両方が要る、耐薬品と耐寒の両方が要る。こうした場合、1つの材質ですべてを満たせないことがあります。どちらを優先するか、あるいは使い方を変えられないかを一緒に検討します。FKMは耐熱性に優れる一方で耐寒性が低いというように、得意と苦手は表裏になっていることが多いためです。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

自社の選定は、どこで止まっていますか?

当てはまる項目が多いほど、条件の整理から始めたほうがよい状態です。下のチェックは診断ではなく、手順のどこにいるかを確かめるための整理です。

材料選定の準備チェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。個人情報の入力はありません。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個条件が整理されています。候補の絞り込みに進めます。
2〜3個条件に抜けがあります。温度と接触するものから埋めてください。
4〜6個条件の整理から始める段階です。1日と1年を通した環境を書き出すことをおすすめします。

材質を決めたあと、何をしますか?

工法を決め、公差と検査項目を決めます。材質が決まっても、成形か切削かで寸法の決まり方が変わるためです。

材質だけを決めた場合と工法まで決めた場合で、その後の進み方が変わることを示す図 図2 材質だけ決めた状態と、工法まで決めた状態 工法まで決めた 材質だけ決めた 公差の決め方が定まる 見積りの条件がそろう 検査項目を決められる 相見積もりを比較できる 公差が書けない 見積りがぶれる 検査の合否が決まらない 各社の条件が揃わない 材質は途中の到達点で、そこから工法と公差が続きます。

公差の考え方はゴム部品の図面公差は「1段緩める」が正解、見積りがぶれる理由はゴム・樹脂部品の見積がブレる本当の理由で整理しています。

材質を変えるときは、周辺への影響も見る

材質を変えると、硬さや弾性が変わります。その部品だけを見れば良くなっても、相手部品の当たり方が変われば、そちらが早く傷むということが起こります。組み付く相手が決まっている場合は、その情報もあわせてお知らせください。当社では量産に移る前に試作で評価する段階を置いており、そこで周辺への影響も確かめられます。

過去の不具合は、選定の材料になる

前の部品がどう傷んだかが分かれば、次に避けるべき条件が見えます。硬くなって割れたのか、膨らんで抜けたのか、表面が溶けたのか。当社では現物調査の段階で、寸法と硬度に加えてこうした状態も確認します。

使用条件の情報が少ない場合と詳しい場合で、材質選定の精度が変わることを示す図 図3 条件の解像度が、選定の精度を決める 材質名だけ 4条件がそろう 条件が細かいほど候補は絞れる。材質名だけの指定では、置き換えたあとの寿命が読めない。 4条件は温度・接触するもの・圧力・使用時間です。数値でなくても、使われ方が分かれば絞り込めます。

迷ったら、いちばん厳しい条件から埋める

4つの条件をすべて数値で出すのが難しい場合もあります。そのときは、いちばん厳しくなる場面から埋めてください。一年でもっとも高温になるとき、洗浄でもっとも強い薬品に触れるとき。そこで耐えられる材料を選んでおけば、通常時は問題になりません。

ゴム材料の選定について、よくいただくご質問は?

材質名の指定、条件の書き方、配合の変更、候補が競合する場合についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。

材質名だけ指定すれば足りますか?
足りないことが多いです。ゴムには何十万通り以上の配合があり、同じ材質でも成形のしやすさや物性が変わります。使用条件をあわせてお知らせください。

使用条件は何を書けばよいですか?
温度、接触するもの、圧力、使用時間の4つです。洗浄工程で別の薬品に触れる場合や、屋外に置く場合も条件に含めてください。

配合を変えてもらうことはできますか?
材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、条件から候補を絞り込みます。

候補が複数ある場合、どう決めますか?
もっとも厳しい条件から順に絞ります。耐熱と耐寒の両方が要る場合など、条件が競合するときは優先順位をうかがったうえで決めます。

過去に使っていた材質が分からない場合は?
現品があれば、硬度と表面の状態から候補を絞れます。ただし配合まで同定するものではないため、使用条件との突き合わせが前提になります。

相談するとき、何をそろえればよいですか?

使用条件、形状が分かるものか現品、必要数量の3つがあれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。内容に応じてご提案します。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

材質が決まっていない段階でのご相談も承ります。条件をうかがったうえで候補をご提案し、そこから工法と公差を一緒に決めていく進め方がもっとも手戻りが少なくなります。

材料の選び方と寸法表を先に確認する

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