ものづくりプレス

2026-09-12

樹脂ギヤの試作は切削で|3Dプリントとの違いと選び方4条件

歯車の試作を、まず形だけでも作りたい。その相談で3Dプリントを検討される方は多いのですが、ギヤは噛み合ってはじめて機能する部品です。

この記事では、樹脂ギヤの試作に切削加工が向く理由と、3Dプリントを使う場面との違いを整理します。確かめたいことが形状なのか機能なのかで、選ぶ工法が変わります。

作成者 柴田(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年9月12日 最終更新日 2026年9月12日 本記事は2026年8月時点の情報です 読了時間 約8分

樹脂ギヤの試作は、なぜ切削が向くのですか?

噛み合いの精度が機能に直結するためです。当社の比較でも、ギヤは機能を要する部品として切削加工が適した用途に挙げています。積層痕や歪みが生じやすい造形では、歯面の精度を確かめきれません。

樹脂ギヤの試作で形状確認と機能評価のどちらを目的にするかで工法が変わることを示す図 図1 ギヤの試作で確かめたいこと別の工法 機能を確かめる → 切削 形だけ見る → 3Dプリント 歯面の精度が出る 素材本来の強度を維持 噛み合いを実機で見られる 1個から作れる 短期間で形になる 干渉の確認に使える 積層方向に弱い 歯面の精度は出にくい 確かめたいことが決まれば、工法も決まります。

ギヤは、単体ではなく組で成立する部品

歯車は相手のギヤと噛み合ってはじめて働きます。片方だけを作って寸法どおりでも、組み合わせたときに当たりが出ることがあります。相手側の情報もあわせてうかがえると、どこを優先して合わせるかが決まります。相手が金属なのか樹脂なのかでも、見るべき点は変わります。

積層方向の弱さは、歯に効く

3Dプリントは積層方向に弱く、折れやすいという課題があります。歯は繰り返し力を受ける部位のため、この弱点がそのまま寿命に出ます。荷重をかけて確かめたい段階では、素材本来の強度を維持できる切削が向きます。

出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」ページ掲載の比較表と説明(2026年8月確認)。

どんな材質が選べますか?

汎用樹脂からスーパーエンプラまで対応しています。使用温度、接触するもの、荷重の条件によって候補が変わります。

分類 材質の例 選ぶときの見どころ
汎用樹脂PLA、ABS形状確認や軽負荷の用途
スーパーエンプラピーク、PPS、PEI耐熱や強度が要る用途
エラストマー柔らかい樹脂緩衝や静音が目的の場合
ゴムNBR、FKM ほか弾性が機能に必要な場合

温度と荷重を先に決める

同じ樹脂でも、連続で高温にさらされるか、短時間だけかで選ぶ材質が変わります。荷重も同じで、常時かかるのか瞬間的にかかるのかで判断が分かれます。数値でなくても構わないので、どんな使われ方をするかをお知らせください。

摺動する部位は、相手材との組み合わせで考える

樹脂どうし、樹脂と金属、どちらで擦れるかによって摩耗の出方が変わります。当社の比較でも、摺動部品は切削加工が適した用途に含めています。相手材が決まっている場合は、その情報も材質選定の材料になります。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

自社のギヤ試作は、切削と3Dプリントのどちらですか?

当てはまる項目が多いほど、切削加工に寄せたほうがよい状態です。下のチェックは診断ではなく、目的を言葉にするための整理として使ってください。

工法の見当チェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。個人情報の入力はありません。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個形状の確認が目的なら3Dプリントで足ります。短期間で形にできます。
2〜3個機能の確認が入ってきています。切削加工での試作をご検討ください。
4〜6個機能評価が目的です。切削加工で、量産に近い物性の試作を作ることをおすすめします。

量産に移るとき、何が変わりますか?

数量がまとまれば射出成形に切り替える選択肢があります。ただし工法が変わると寸法の決まり方も変わるため、切り替えの段階で公差を見直します。

数量が少ない場合と継続量産の場合で、切削と射出成形のどちらが向くかを示す図 図2 数量で変わる、工法の分かれ目 少量 継続量産 少量なら金型を作らない切削から。継続して使うなら成形のほうが1個あたりを抑えられる。 分かれ目は形状と年間数量によって変わります。数量計画をうかがったうえでご提案します。

切削で確かめてから金型に進むと、手戻りが減る

金型を作ってから歯形を直すと、型から作り直しになります。切削で1個作り、実機で噛み合いを確かめてから金型に進めば、その手戻りを避けられます。工法ごとの費用の分かれ目は切削・射出成形・3Dプリントのコスト比較で整理しています。

工法が変われば、公差も書き換える

切削は素材を削って寸法を出しますが、成形は金型の形を材料に写し取ります。成形では材料の収縮が寸法に直接効いてくるため、同じ公差のままでは噛み合いません。切り替えのタイミングで、公差と検査項目を見直してください。

依頼するとき、何を伝えればよいですか?

歯形が分かる図面か現品、相手側の情報、使用条件、必要数量です。図面がない場合も、現品と相手側があれば進められます。

樹脂ギヤの試作を依頼するまでの流れを4段階で示す図 図3 ギヤの試作を依頼するまで STEP 1 目的を決める 形状確認か 機能評価か STEP 2 条件を書く 温度・荷重・ 相手材 STEP 3 形状を渡す 図面か現品 相手側もあれば STEP 4 工法を決める 切削か3Dプリントか 数量も含めて 目的が決まっていれば、あとは条件を渡すだけで工法が決まります。

図面がない場合は、相手側もあわせて預ける

歯形は現品からもっとも読み取りにくい部位です。摩耗していれば歯先も歯元も削れており、元の形が分かりません。相手側のギヤが健全であれば、そこから噛み合いの条件を逆算できます。片方だけでなく、組で預けていただけると精度が上がります。

先に見せてもらえると、判断が早い

ゴム・樹脂のノウハウにより、加工前に強度の足りない所や、どうすればご要望の品物を作れるかを提案できます。図面を作り込む前に一度見せていただくと、作り直しの回数が減ります。

試作の数は、1個では足りないことがある

1個だけ作って組んでみると、たまたま合っただけなのか、安定して合うのかが分かりません。相手側との組み合わせを見る場合、2〜3個作って個体差を見ておくと判断が確かになります。当社は多品種少量生産を得意としており、少数の製作にも対応しています。評価の目的が決まっていれば、必要な個数もあわせてご提案できます。

騒音や振動が目的なら、材質の選び方が変わる

金属の歯車から樹脂に置き換える目的が静音であれば、強度だけでなく減衰の性質も見ることになります。当社ではエラストマーやゴムも扱っており、弾性が機能に必要な場合はそちらの材質も候補になります。何を良くしたくて樹脂にするのかを、最初にお知らせください。目的が静音なのか軽量化なのか防錆なのかで、選ぶ材質はかなり変わります。

樹脂ギヤの試作について、よくいただくご質問は?

3Dプリントとの違い、材質、少量対応、図面がない場合についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。

ギヤの試作は3Dプリントではだめですか?
形状の確認までなら使えます。ただし積層痕や歪みが生じやすく、噛み合いの精度を見る用途には向きません。機能を確かめる段階では切削加工をご提案します。

どんな材質で作れますか?
汎用樹脂からスーパーエンプラ(ピーク、PPS、PEIなど)まで対応しています。使用温度や接触するものによって候補が変わるため、条件をお知らせください。

1個からでも作ってもらえますか?
「金型を作るほどでもないが、高品質なものを1個からほしい」というニーズに最適な方法です。多品種少量生産を得意としており、1点からのご相談も承っています。

図面がなくても作れますか?
現品があれば、そこから形状を読み取って進められます。ただし歯形は測りにくい部位のため、相手側のギヤもあわせてご相談ください。

量産に移るときはどうなりますか?
数量がまとまれば射出成形に切り替える選択肢があります。工法が変わると寸法の決まり方も変わるため、切り替えの段階で公差を見直します。

相談するとき、何をそろえればよいですか?

形状が分かるもの、使用条件、必要数量の3つがあれば話を始められます。決まっていない項目は、決まっている条件から一緒に詰めていきます。すべてが決まっていない状態でも構いません。内容に応じてご提案します。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

当社は相見積もりを歓迎しています。工法が違う見積りを金額だけで並べても比較になりませんので、「どの工法で、どの精度で、何個作るか」をそろえて各社に出すことをおすすめします。

材料の選び方と寸法表を先に確認する

SF-JOINT総合カタログ・施工要領・Oリング寸法表などの資料をご用意しています。会社名とご連絡先のご入力でダウンロードいただけます。

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樹脂ギヤの試作は切削で|3Dプリントとの違いと選び方4条件

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