ものづくりプレス

2026-09-12

ゴム板の切削加工でどこまで精度が出る?|公開値と使える条件

ゴムに精度は出るのか。図面を書く側からすると、ここが決まらないと公差の入れ方が決まりません。

この記事では、ゴム板の切削加工で当社が公開している精度の実測値と、その値が使える条件を整理します。金型成形との違いも、あわせて押さえておいてください。ここを取り違えると、図面が現実と噛み合わなくなります。

作成者 中村(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年9月12日 最終更新日 2026年9月12日 本記事は2026年8月時点の情報です 読了時間 約8分

ゴム板の切削加工では、どこまで精度が出ますか?

当社はゴム加工について、最大φ250の旋盤加工、寸法精度±0.1mmまで対応と公開しています。これは切削加工での値です。金型成形の公差はこれとは別の考え方になるため、混同しないよう注意が必要です。

ゴム加工における旋盤加工の最大径φ250と寸法精度±0.1mmという自社公開値を示す図 図1 切削加工の対応レンジ(自社公開値) 最大φ250 寸法精度±0.1mm 旋盤加工の最大径と、対応できる寸法精度。いずれも切削加工での値。 形状・材質・配合によって実際に出せる範囲は変わります。個別にご相談ください。 出典:富士ゴム化成「廃盤部品の再現」ページ(2026年8月確認)

この値は「切削加工の値」であって、成形の値ではない

±0.1mmという値は切削加工で書かれているものです。Oリングのように金型成形で作る部品には、この値をそのまま当てはめられません。金型成形は一般的にVDI規格(ドイツ技術者協会)に書かれる公差で金型が作られます。工法が違えば、公差の決まり方そのものが違います。

同じ材質でも、配合で収縮率が変わる

ゴムには何十万通り以上の配合があり、同じ材質名でも成形のしやすさが異なります。また材質によって収縮率が変わるため、公差も変わります。したがって「ゴムの公差は◯mm」と一律に決めることはできません。品物ごとに、機能と工法から決めていくことになります。

出典:富士ゴム化成「廃盤部品の再現」ページ、および2026年6月の当社説明(自社情報・2026年8月時点)。

切削と成形では、なぜ精度の考え方が違うのですか?

切削は素材を削って寸法を出すのに対し、成形は金型の形を材料に写し取るためです。成形では材料の収縮が寸法に直接効いてきます。

ゴム部品の寸法が切削で決まる場合と金型成形で決まる場合の違いを対比した図 図2 切削で寸法が決まる場合と、成形で決まる場合 切削で決める 成形で決める 素材を削って寸法を出す 収縮の影響を受けにくい 1個から作れる 公開値は±0.1mmまで対応 金型の形を写し取る 材質と配合で収縮率が変わる 金型の費用がかかる VDI規格の公差で金型を作る 同じ「ゴム部品の公差」でも、工法が違えば決まり方が変わります。

材料の配合そのものは、材料メーカーの領域

当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーが担っています。そのため配合を変えて収縮率を調整するという話ではなく、選んだ材料の性質を前提に、工法と公差を決めていく形になります。

だから使用条件を先にうかがう

温度、接触するもの、圧力、使用時間。この4つが分かれば材料の候補が絞れます。材料が絞れれば、収縮の傾向も見当がつき、公差の議論に入れます。順番としては、条件 → 材料 → 工法 → 公差になります。

自社の図面は、公差の入れ方が合っていますか?

当てはまる項目が多いほど、公差の指定を見直したほうがよい状態です。下のチェックは診断ではなく、図面を見直すための整理として使ってください。

公差の指定チェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。個人情報の入力はありません。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個公差の入れ方は整理されています。そのまま見積りに進めます。
2〜3個見直す余地があります。まず機能に効く寸法を特定してください。
4〜6個図面と現実が噛み合っていない可能性があります。工法と使用条件から見直すことをおすすめします。

公差は、どこを厳しくすればよいですか?

機能に効く部位だけを厳しくします。全部位を同じ精度で指定すると、必要のない精度でコストが上がり、作れる先も減ります。

どこが効いているかは、部品の役割で決まります。シールなら密封面と溝との関係、摺動部品なら相手部品との隙間、嵌合部品なら入る側と受ける側の組み合わせ。そこだけを押さえて、残りは緩めるほうが結果的に安定します。考え方はゴム部品の図面公差は「1段緩める」が正解でも整理しています。

使用条件から材料、工法、公差へと順に決めていく流れを4段階で示す図 図3 公差を決めるまでの順番 STEP 1 使用条件 温度・接触するもの 圧力・使用時間 STEP 2 材料を絞る 条件に合う 材質の候補 STEP 3 工法を決める 切削か成形か 数量で決まる STEP 4 公差を決める 機能に効く部位 だけを厳しく 公差は最後に決まります。先に決めようとすると噛み合いません。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

厳しすぎる公差は、作れる先を減らす

必要以上に厳しい公差を書くと、対応できる加工先が限られます。選択肢が減れば、価格の妥当性も比べにくくなります。公差は品質を守るためのものですが、書きすぎると調達の自由度を削ります。どこまで必要かを部位ごとに見直すだけで、見積りに応じてもらえる先が増えることがあります。

測定の取り決めも、図面と一緒に決める

どこを、何で、どの状態で測るか。ゴムは力を加えると変形するため、測り方によって値が変わります。2D図があれば硬度や寸法の測定に対応できますので、図面を起こす段階で測定の取り決めまで一緒に決めておくと、受け入れで揉めません。

測る力の加減で、値が変わる

金属なら、ノギスを当てる強さで値は変わりません。ゴムは押せばへこむため、測る人によって数値が動きます。受け入れ検査で数値が合わないという話の多くは、部品ではなく測り方の違いから出ています。誰が測っても同じ値になるように、測定の条件まで決めておいてください。当てる力、当てる位置、置き方。この3つを決めるだけで、ばらつきはかなり減ります。

温度でも寸法は動く

ゴムは温度によって伸び縮みします。夏の現場で測った値と、冬の検査室で測った値が違うということが起こります。厳しい公差を扱う場合は、測定時の温度条件も取り決めの対象になります。どこまで厳密に見るかは、その寸法が機能にどれだけ効くかで決めてください。効かない寸法まで温度管理をするのは、手間に見合いません。

同じ図面でも、工法が変われば公差は書き換える

試作を切削で作り、量産を金型成形に切り替える場合、同じ図面のまま進めると公差が実態と合わなくなります。工法が変わるタイミングで、公差と検査項目を見直してください。当社では量産に移る前に試作で評価する段階を置いており、そこで仕様を整えることをおすすめしています。

ゴムの精度について、よくいただくご質問は?

切削での精度、成形との違い、材質指定と寸法の関係についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。

ゴムの切削で、どのくらいの精度が出ますか?
ゴム加工では、最大φ250の旋盤加工、寸法精度±0.1mmまで対応と公開しています。これは切削加工での値です。金型成形の公差はこれとは別の考え方になります。

金型成形でも同じ精度になりますか?
なりません。金型成形は一般的にVDI規格に書かれる公差で金型が作られます。また、ゴムは材質と配合によって収縮率が変わるため、公差は品物ごとに決めていきます。

同じ材質を指定すれば、同じ寸法になりますか?
ゴムには何十万通り以上の配合があり、同じ材質でも成形のしやすさが変わります。材質名の指定だけでは寸法の再現性は決まりません。

公差はどこまで厳しく指定すべきですか?
機能に効く部位だけを厳しくするのが基本です。全部位を同じ精度で指定すると、必要のない精度でコストが上がります。

測定はしてもらえますか?
2D図があれば対応可能です。現品しかない場合も、現物調査の中で寸法と硬度を確認します。

相談するとき、何をそろえればよいですか?

形状が分かる図面か現品、使用条件、必要数量の3つがあれば話を始められます。決まっていない項目は、決まっている条件から一緒に詰めていきます。すべてが決まっていない状態でも構いません。内容に応じてご提案します。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

当社は相見積もりを歓迎しています。公差の指定が違う見積りを金額だけで並べても比較になりませんので、条件をそろえて各社に出すことをおすすめします。公差をどう書けばよいか分からない段階でも構いません。使用条件と、その部品が何をしているかをうかがえれば、どこを厳しくすべきかの見当をお伝えできます。

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