ものづくりプレス

2026-08-14

取引先の廃業・倒産でゴム部品が調達できない時の進め方|富士ゴム化成

取引先の廃業・倒産でゴム部品が調達できない|図面はあるのに作り手がいない時の進め方

長年発注していたゴム部品メーカーが、廃業してしまった。手元に図面は残っているのに、どこに頼めばよいのか分からない。預けていた金型はどうなるのか――。部品がひとつでも欠ければ製品全体が組み上がらないだけに、供給が完全に止まる前に動き出す必要があります。

この記事をお読みの方の多くは、購買や調達を担当されていて、いままさに「作り手が消える」という現実に直面しているのではないでしょうか。あるいは、まだ廃業には至っていないものの、取引先の高齢化や後継者不在の話を耳にして、先々の供給に不安を感じている段階かもしれません。

結論から申し上げます。図面または現物のどちらかが残っていれば、引き継いで再製作できるケースは少なくありません。 まず確認すべきは「金型の所有権」「図面・仕様」「現物サンプル」の3点です。この記事では、取引先を失ったとき、あるいは失いそうなときに、何から手をつければよいのかを順を追って整理します。慌てて動くのではなく、正しい順序で確認していけば、供給を途切れさせずに次の作り手へ引き継ぐことは十分に可能です。

なぜ今、ゴム部品の「作り手」が減っているのか

まず、これは御社だけに起きている問題ではない、という点をお伝えしておきたいと思います。ここ数年、小ロット・多品種のゴム部品を引き受ける会社は、確実に減っています。背景には、いくつかの構造的な事情があります。

ひとつは、採算の問題です。量産前提の設備を持つメーカーにとって、少量・特注の案件は採算に合いにくいのが実情です。ゴムの金型成形では、材料を替えるたび、品番を替えるたびに段取り替えが発生します。段取りの手間はロットの大小にかかわらずほぼ一定でかかるため、数が出ない案件ほど一個あたりの負担が重くなります。結果として、「数の出ない部品」は敬遠されやすくなります。

もうひとつは、事業承継の問題です。ゴム部品の製造は、長年の経験に支えられた技能の比重が大きい分野です。材料の癖、金型の作り込み、加硫条件の見極めといったノウハウは、一朝一夕には引き継げません。職人の高齢化と後継者不在が重なると、会社としては黒字でも、技術を維持できずに廃業を選ぶケースが出てきます。

その結果として起こるのが、「これまで当たり前に作ってもらえていた部品が、ある日突然どこにも頼めなくなる」という事態です。しかもゴム部品は、パッキン一つ、ダイヤフラム一枚、Oリング一個が欠けるだけで、装置全体が停止します。金額の小さな部品ほど、供給が止まったときの影響が大きくなりがちなのは、ものづくりの現場ではよく知られた逆説です。だからこそ、取引先の異変に気づいた段階で、早めに次の一手を打っておくことが、購買部門にとってのリスク管理そのものになります。

取引先が廃業したとき、最初に確認する3つのこと

新しい発注先を慌てて探し始める前に、まずは手元にある情報を棚卸ししてください。引き継ぎがスムーズに進むかどうかは、次の3点で大きく変わります。逆に言えば、この3点が押さえられていれば、引き継ぎのハードルは一気に下がります。

① 金型の所有権はどちらにあるか

ゴム部品の多くは金型で成形されます。その金型を、発注側である御社が費用を負担して所有しているのか、それとも製造側が所有していたのかで、取れる選択肢が大きく変わります。

御社の所有、いわゆる「支給金型」であれば、金型を引き取って別の会社で成形を続けられる可能性があります。この場合、再製作のスピードもコストも有利になります。一方、製造側の所有だった場合は、金型を譲り受けられるかどうかの交渉が必要になり、譲り受けられなければ金型から作り直すことになります。まずは過去の取引契約書や、金型費の支払い履歴を確認してください。「金型代を支払った記録があるか」が、所有権を判断する重要な手がかりになります。

② 図面・仕様書が残っているか

材質、硬度、寸法公差、使用環境といった仕様が図面に残っていれば、再製作の精度は格段に上がります。特に重要なのが「どのゴム材料を使っていたか」という情報です。

ゴムは、見た目が同じでも材質が違えば性能がまったく変わります。黒いゴムがすべて同じものではなく、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴムなど、用途に応じて材料は使い分けられています。材質情報が図面に残っているかどうかが、引き継ぎの成否を分けると言っても過言ではありません。図面がデータで残っていない場合でも、古い紙図面や仕様書が手元にないか、一度探してみる価値は十分にあります。

③ 現物サンプルが確保できるか

図面がなくても、現物が数個残っていれば道は開けます。現物から寸法や形状を測定し、用途をうかがいながら材質を推定していくことで、再製作の相談を進められるからです。

ここで注意していただきたいのは、使用済みの部品でも構わないという点です。むしろ、劣化の状態から使用環境の厳しさを読み取れることもあります。「もう使えないから」と廃棄してしまう前に、数個は確保しておいてください。可能であれば、新品に近い予備が一つでもあると理想的です。

状況別の進め方:図面がある/現物しかない/どちらも不十分

確認した3点の状況に応じて、進め方は変わります。ここでは代表的な3つのパターンを整理します。

図面がある場合は、材質と公差の確認から始めます。図面に記載された材質記号が、現在も入手できる材料かを確認します。もし廃番になっていれば、同等の性能を持つ材料への置き換えを検討します。公差については、それが金型成形を前提としたものか、切削加工を前提としたものかを見極める必要があります。ゴム部品の公差は成形方式によって考え方が異なるため、ここは専門的な確認が入る部分です。

現物しかない場合は、寸法測定と材質の推定から入ります。硬さの測定や、使用環境のヒアリングを通じて、候補となる材料を絞り込んでいきます。この段階では、私たちのような成形メーカーと、材料を供給する材料メーカーが連携しながら進めるのが現実的です。私たち自身は材料の配合を行いませんが、用途と要求性能をうかがえば、材料メーカーと連携して適した市販材料の候補を整理することができます。

▶ 材料の選び方を確認する 耐薬品性・耐油性で選ぶゴム材料 完全早見表(記事)で、用途に合う材質を確認できます。

図面も現物も不十分な場合は、装置のどこに、どんな流体・温度・圧力の環境で使われていたかという「使われ方」の情報が最大の手がかりになります。組み付けられていた場所の写真、周辺部品との関係、交換の頻度など、分かる範囲でメモや写真を用意していただくと、相談が格段に早く進みます。

金型を引き継ぐ場合の注意点

支給金型を別の会社に持ち込んで成形を続けられる場合でも、いくつか確認すべき点があります。

まず、金型の状態です。長年使われてきた金型には、摩耗や損傷、錆が生じていることがあります。摩耗が進んでいれば、成形品の寸法が狙いから外れたり、バリが出やすくなったりします。修理して使えるのか、作り直したほうがよいのかの判断が必要です。

次に、成形機との適合です。金型は成形機にセットして使うため、引き継ぎ先の設備で使えるかどうかを確認します。

そして、材質を変える場合には収縮率の違いにも注意が必要です。ここは特に見落とされやすい点なのですが、ゴムは材質や配合によって収縮率が異なります。 金型はそのまま使えても、材質を変えれば仕上がり寸法が変わる可能性があるのです。以前とまったく同じ材料が使えるとは限らない以上、「金型があるから大丈夫」と安心しきらず、寸法の再確認を前提に進めるのが安全です。まずは金型の現況を確認するところから始めましょう。

供給を止めないための体制の考え方

一度こうした事態を経験すると、「次に同じことが起きたらどうするか」という視点が生まれます。同じ轍を踏まないためには、多品種少量の案件を前提として受けられる相手を、あらかじめ知っておくことが有効です。

私たち富士ゴム化成は、1951年の創業以来、工業用ゴム製品を手がけてきました。とりわけオイルシールや各種パッキンは、創業事業として長く取り組んできた分野です。生産面では、東京工場(東京都江戸川区)に加え、中国の関連会社や提携工場を組み合わせた供給体制を持ち、多品種少量生産に対応しています。品質保証部を設置し、ご要望に応じて抜取り検査や全数検査を自社内で行う体制も整えています。図面や現物をお持ちいただければ、引き継ぎ再製作のご相談をお受けできます。

▶ よく似た製作事例を見る 製品実績のページで、同じような部品の製作事例をご覧いただけます。

相談をスムーズにするための事前準備

いざ新しい作り手に相談するとき、手元の情報が整っているほど、話は早く進みます。廃業の連絡を受けてから慌てて探すのではなく、次のものを可能な範囲で揃えておくと、初回の相談から具体的な検討に入れます。

まず、図面(あれば材質記号入りのもの)。次に、現物サンプル(使用済みでも可、できれば予備も)。そして、その部品の使われ方が分かる情報――どの装置の、どの部分に、どんな流体・温度・圧力の環境で使われていたか。加えて、過去の発注記録や金型費の支払い履歴があれば、金型の所有権の確認に役立ちます。最後に、必要な数量とおおよその時期。これらのうち、いくつかでも揃っていれば、相談の質は大きく変わります。

すべてを完璧に揃える必要はありません。「図面はないが現物はある」「材質は不明だが使われ方は分かる」といった不完全な状態でも、そこから一緒に整理していけます。大切なのは、廃棄や情報の散逸を防ぎ、手がかりを手元に残しておくことです。取引先の異変を感じた段階で、これらの情報を集め始めておくと、いざというときに慌てずに済みます。

供給リスクを見える化しておくという発想

今回の一件を、単発のトラブル対応で終わらせず、購買部門としての備えに変える視点もあります。それは、「一社にしか頼めない部品」を洗い出しておくという発想です。

装置に使われるゴム部品のうち、どれが特定のメーカーにしか作れないのか。その部品の図面と材質情報は手元にあるのか。金型は誰の所有か。こうした情報を平時に整理しておけば、取引先に何かあっても、すぐに次の手を打てます。すべての部品について完璧に備えるのは現実的ではありませんが、「止まると製品全体が止まる重要部品」から優先的に見える化しておくだけでも、供給リスクは大きく下げられます。私たちは、こうした重要部品の引き継ぎ先としてのご相談も承っています。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 他社で製作した金型でも使えますか?

状態と仕様によって判断します。まずは金型の所有権と現況をご確認のうえ、ご相談ください。摩耗や損傷があっても、修理や部分的な作り直しで対応できる場合があります。

Q. 図面がなく、現物しかない場合でも相談できますか?

はい。現物から寸法・形状を確認して進められるケースがあります。使用済みの現物でも構いませんので、廃棄せずにお持ちください。

Q. 材質が分からない部品でも対応できますか?

用途や使用環境をうかがいながら、材料メーカーと連携して候補を絞り込むご相談が可能です。「この環境で使える材料」という切り口から進めます。

Q. 小ロットでも引き継いでもらえますか?

私たちは多品種少量生産に対応しています。少量からのご相談も歓迎です。まずは数量と用途をお知らせください。

Q. 金型が先方所有で、譲り受けられない場合はどうなりますか?

図面または現物があれば、金型から作り直して再製作できる可能性があります。所有権の状況にかかわらず、まずはご相談ください。

取引先を失って供給が止まる前に、まずは状況を整理させてください。

図面がなくても、現物や使われ方の情報からご相談いただけます。
平日9:00〜17:30/図面・資料の添付にも対応しています。

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取引先の廃業・倒産でゴム部品が調達できない時の進め方

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