ものづくりプレス

2026-09-26

ゴムの収縮率が公差に与える影響|品物ごとに決める4つの理由

金型で作った成形品が、図面の寸法より小さく仕上がってくる。毎回同じ縮み方をするなら計算で補正できそうだが、ロットによって微妙にばらつく。ゴム部品の図面を扱う設計・品質保証の担当者が直面する疑問です。

この記事では、ゴムの収縮率が公差にどう影響するか、なぜ品物ごとに公差を決める必要があるのかを整理します。当社がクライアントから受けた訂正の経緯をふまえて書いています。

作成者 西田(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年9月28日 最終更新日 2026年9月28日 本記事は2026年9月時点の情報です 読了時間 約8分

収縮率は、なぜ一律の数値で言えないのですか?

ゴムの材質によって収縮率が異なり、同じ材質でも配合によって収縮率が変わるためです。材質名だけを見て「この材質の収縮率は◯%」と決めつけることはできません。

当社は次のように説明しています。

「ゴムと一言で言っても何十万通り以上の配合があり、同じ材質でも配合により成形しやすさが異なります。また、ゴムの材質によっても収縮率が異なり、公差は変わります。」

金型の寸法と、成形品の寸法は一致しない

金型成形では、金型のキャビティ寸法よりも、冷えて固まった成形品の寸法のほうが小さくなります。この縮み方の度合いが収縮率で、材質と配合によって変わります。同じ金型を使っても、材質を変えれば仕上がりの寸法が変わる理由がここにあります。

「ゴムの公差は◯mm」という断定は、成り立たない

ゴムの公差について、業界で目安として語られる数値を見かけることがありますが、材質と配合で収縮率が変わる以上、一律の数値として断定することはできません。当社では公差を品物ごとに決めていく方針を取っています。一律の数値をあらかじめ提示することはできません。

出典:富士ゴム化成の説明(2026年6月・自社情報)。

公差は、どうやって決めますか?

材質と配合、機能に効く部位、検査のしやすさを組み合わせて、品物ごとに検討します。収縮率だけを見て機械的に計算するのではなく、複数の要素を合わせて判断します。

検討要素 内容 公差への影響
材質・配合収縮率の違い仕上がり寸法のばらつきの幅
機能に効く部位密封・接触面など厳しくすべき箇所を特定
検査のしやすさ測定できる精度過度に厳しい公差は検査不能
金型構造ゲート位置・肉厚差収縮のムラが出やすい箇所

機能に効く部位だけを、厳しくする

部品のすべての寸法を均等に厳しくする必要はありません。相手部品と接する面や密封する部分は厳しく、それ以外は緩めるという考え方が実務的です。この考え方はゴム部品の図面公差は「1段緩める」が正解で詳しく整理しています。

肉厚差が大きい部品は、収縮のムラが出やすい

厚い部分と薄い部分が混在する形状では、冷える速さが異なるため、収縮の度合いにムラが出ることがあります。形状の特徴に応じて、公差の考え方を調整することがあります。こうした形状ごとのクセも、事前の相談で共有いただくと検討がしやすくなります。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

切削加工では、収縮率の影響はどう違いますか?

切削加工は材料の塊から削り出す工法のため、金型成形のような収縮の影響を受けにくくなります。ただし切削加工には、加工精度や刃物の摩耗による別の公差の考え方があります。

金型成形と切削加工で公差を左右する要因が異なることを対比した図 図1 金型成形と切削加工の公差の考え方 金型成形 切削加工 収縮率が主な要因 材質・配合で変わる VDI規格が一般的な基準 品物ごとに公差を決める 加工精度が主な要因 刃物・機械の精度で変わる 当社の対応レンジで案内 収縮率の影響は受けにくい 工法によって公差を左右する要因が違うため、決め方も変わります。

工法を変えると、公差の考え方も変える必要がある

切削加工から金型成形へ、あるいはその逆へ工法を変更する場合、公差の前提が変わるため、前の工法の公差をそのまま流用することはできません。

金型成形は一般的にVDI規格に書かれる公差が基準

当社の公開情報では、金型成形は一般的にVDI規格に書かれる公差で金型が作られるとしています。ただし規格番号や具体的な数値は品物ごとに個別確認が必要です。

出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」ページ(切削と3Dプリントの位置づけ)(自社情報・2026年9月確認)。

図面に公差を書くとき、何に注意しますか?

材質と工法を先に確定させ、機能に効く部位を特定してから公差を書くという順番が実務的です。材質が決まる前に公差を確定させようとすると、後で工法や材質が変わったときに前提が崩れます。

材質・工法の確定から機能部位の特定を経て公差を決める4段階を示す図 図2 公差を決める順番 STEP 1 材質を決める 使用条件 から選定 STEP 2 工法を決める 金型成形か 切削加工か STEP 3 機能部位を特定 厳しくする 所を絞る STEP 4 公差を決める 品物ごとに 個別検討 材質と工法が先、公差は後という順番を守ることが手戻りを防ぎます。 使用条件が曖昧な場合と詳しい場合とで公差の決めやすさが変わることを示す図 図3 情報の詳しさで、公差の決めやすさが変わる 使用条件が曖昧 使用条件が詳しい 使用条件が詳しいほど、材質・工法・機能部位の検討が具体的になり、公差も決めやすくなる。 数値でなくても、使われ方が分かれば絞り込めます。

検査のしやすさも、公差を決める要素になる

どれだけ厳しい公差を設定しても、実際に検査で測定できなければ意味がありません。測定器の精度や検査にかけられる時間も考慮して、現実的に管理できる公差を検討します。

相見積もりでは、公差の前提をそろえて伝える

複数社に見積りを依頼する場合、材質・工法・機能に効く部位を同じ内容で伝えることで、公差についての前提がそろい、比較しやすくなります。当社は相見積もりを歓迎しています。

自社の公差の考え方は、どこまで整理できていますか?

当てはまる項目が多いほど、発注前に整理しておくと公差の考え方が一貫します。下のチェックは診断ではなく、公差についての理解のどこが曖昧かを確かめるための整理です。個人情報の入力はありません。

収縮率・公差の理解チェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個公差の理解が整理されています。見積り依頼に進めます。
2〜3個一部が曖昧です。材質・工法の確定から整理してください。
4〜6個整理から始める段階です。まず金型成形か切削加工かを確認することをおすすめします。

過去の不具合は、公差見直しの材料になる

前の部品で寸法に起因する不具合が出ていれば、その情報が新しい公差を決める材料になります。どの部位で、どのようなずれが起きたかを伝えていただくと、検討がより具体的になります。

ゴムの収縮率と公差について、よくいただくご質問は?

一律の数値、収縮率からの計算、切削加工との違い、公差を緩める余地、材質変更時の見直しについてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。個別の品物については、図面か現品を見たうえでお答えしています。お気軽にお問い合わせください。

収縮率は、材質ごとに一律の数値がありますか?
ありません。ゴムの材質によって収縮率が異なり、同じ材質名でも配合により変わります。一律の数値としてお伝えすることはできません。

収縮率が分かれば、公差を計算で決められますか?
収縮率だけで公差を決めることはできません。機能に効く部位かどうか、検査のしやすさなど、複数の要素を組み合わせて品物ごとに決めていきます。

切削加工なら、収縮率を気にしなくてよいですか?
切削加工は金型成形と異なり、収縮率の影響を受けにくい工法です。ただし切削加工には加工精度や刃物による別の公差の考え方があります。

図面の公差を、収縮率にあわせて緩めてもよいですか?
機能に効かない部位であれば緩める余地があります。ただし機能に効く部位まで一律に緩めると、性能に影響することがあるため、部位ごとに検討します。

材質を変更すると、収縮率も変わりますか?
変わります。材質を変更する際は、公差の考え方も見直すことをおすすめします。

相談するとき、何をそろえればよいですか?

材質(分かる範囲で)、使用条件、機能に効く部位の候補があれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。決まっていない項目は、決まっている条件から一緒に詰めていきます。過去の不具合の情報があれば、あわせてお知らせください。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

材料の選び方と寸法表を先に確認する

SF-JOINT総合カタログ・施工要領・Oリング寸法表などの資料をご用意しています。会社名とご連絡先のご入力でダウンロードいただけます。

資料をダウンロードする

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