ものづくりプレス

2026-10-30

真空成形で試作・小ロットを作る|相談前に整理する4つの点

プラスチックの試作品や、小ロットの部品を作りたい。3Dプリントや切削加工のほかに、真空成形という方法もあると聞いたが、自社の部品に合うのかどうかが分からない。試作や少量の部品づくりでは、こうして作り方の選択肢に迷う場面があります。

この記事では、真空成形で試作・小ロットを検討するときに、依頼前に整理しておく4つの点と、3Dプリント・切削加工・金型成形との選び分けの考え方を整理します。

作成者 中村(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年10月30日 最終更新日 2026年10月30日 本記事は2026年10月時点の情報です 読了時間 約8分

真空成形とは、どのような成形方法ですか?

加熱して柔らかくしたシート状の樹脂を型に被せ、空気を吸い出して型に密着させる成形方法です。型の形をシートに写し取る、と考えると分かりやすくなります。

真空成形で、シート状の樹脂を加熱し、型に被せ、空気を吸って密着させ、冷やして整えるまでを4段階で示す図 図1 真空成形の基本的な流れ STEP 1 シートを加熱 シート状の樹脂を 柔らかくする STEP 2 型に被せる 成形用の型の 上に置く STEP 3 空気を吸う 型の側から吸って 密着させる STEP 4 冷やして整える 固まったら取り出し 余分を切り落とす 型に沿わせて形を写し取る、というのが基本の考え方です。

当社の事業内容に含まれる成形方法のひとつ

当社の事業内容には、プラスチック金型成形として、射出成形、押出成形、真空成形などが挙げられています。ただし、成形できる大きさや深さ、肉厚、公差、納期といった条件は品物ごとに異なります。この記事では具体的な数値を示していませんので、条件は個別にご相談ください。

出典:富士ゴム化成「会社概要」ページ(事業内容)(自社情報・2026年10月確認)。

試作や小ロットで、真空成形を検討するのはどんなときですか?

作りたい部品が、カバーやトレイのように、シート状の樹脂を型に沿わせて作れる形のときです。ただし、向くかどうかは形と数量で変わるため、真空成形は検討の入り口のひとつと考えてください。

型に沿わせる形は、検討しやすい

真空成形は、シートを型に密着させて形を作ります。そのため、箱の蓋や覆いのように、一方の面を型に沿わせる形は検討しやすい傾向があります。一方で、内側と外側の両方を細かく作り分けたい形や、型から外しにくい引っかかりのある形は、別の方法のほうが向くことがあります。

金型を作る前の段階で、迷う場面がある

自社ページには、お客様の悩みとして「金型を作る前に形状確認をしたい」「開発段階で設計変更が多いため、金型製作に踏み切れない」「多品種少量のため、在庫の圧縮やコストを低減したい」といった声が挙げられています。量産向けの金型に進む前に、試作や小ロットの手段を比べておきたい。そうした場面で、真空成形を候補に並べて考えます。

出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」ページ(顧客の悩み)(自社情報・2026年10月確認)。

依頼前に、何を整理しておきますか?

整理するのは、形と深さ、外観面、使うシート材、数量の4点です。すべてが決まっていなくても構いません。決まっていない項目は、一緒に詰めていきます。

整理する点 内容 決まっていない場合
形と深さ全体の形、くぼみの深さ、角や段差図面か現物、写真を添える
外観面見せる面はどちらか、色や透明感見せる面だけ先に伝える
使うシート材求める性能(透明性・耐熱性など)使用条件から候補を相談する
数量今回の数と、先の見込み概算でかまいません

形と深さは、図面か現物で示す

真空成形では、シートが型に沿って引き伸ばされます。そのため、深いくぼみや急な角の部分ほど、シートが薄くなりやすい傾向があります。どこが深いのか、角は鋭いのかを、図面か現物で示してください。深さの数値が決まっていない場合は、現物や写真だけでも構いません。

外観面は、見せる面と見せない面を分ける

型に触れる側の面は、型の表面の状態が写りやすい傾向があります。反対側の面は、型の影響を受けにくくなります。見せる面がどちらなのかを先に決めておくと、型の考え方を整理しやすくなります。色や透明感の希望があれば、あわせて伝えてください。

使うシート材は、求める性能から整理する

樹脂のシートには種類があり、透明にしたいのか、熱がかかるのか、薬品に触れるのか、燃えにくさが必要なのかによって、候補が変わります。材質名が決まっていなくても、使う場所と条件を伝えていただければ、候補の相談ができます。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

数量は、今回の数と先の見込みを分けて伝える

今回の試作で必要な数と、うまくいった場合に増える可能性のある数は、分けて伝えてください。数量によって、型の考え方や、ほかの方法との比較のしかたが変わるためです。

3Dプリント、切削加工、金型成形とは、どう選び分けますか?

選び分けの軸は、形の自由度、精度と強度、数量、設計の固まり具合の4つです。どれか1つが常に優れているわけではなく、段階によって使い分けます。

3Dプリント・切削加工のように型を使わない方法と、真空成形のように型を使う方法の考え方を対比した図 図2 型を使わない方法と、型を使う方法 3Dプリント・切削加工 真空成形など 型を用意する必要がない 設計変更に合わせやすい 3Dプリントは形の自由度が高い 切削加工は精度と強度に優れる 型を用意して成形する 同じ形を繰り返し作る 形はシートを沿わせる範囲 数量と形で向き不向きがある 型を使うかどうかで、準備の段取りが変わります。 設計が固まっていない段階では型を使わない方法、固まった段階では型を使う成形が比較に加わることを示す図 図3 設計の固まり具合で、向く方法が変わる 設計が未確定 設計が確定 設計が固まるほど、型を使う成形が比較に加わってきます。 段階によって、同じ部品でも向く方法は変わります。

3Dプリントは、形を確かめる段階に向く

自社ページでは、3Dプリントは形状の自由度が高い反面、精度や耐久性に課題が残る、と整理しています。適した用途として挙げているのは、デザインの確認や簡易な治具です。部品の形や大きさの感じをつかみたい段階で、候補になります。

切削加工は、機能を確かめる試作に向く

同じページで、切削加工は精度と、強度・耐久性の面で優れ、形状の自由度は3Dプリントに劣るとしています。適した用途は、機能部品や機能評価です。実際に組み付けて動きを確かめたい試作には、こちらが向きます。

出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」ページ(切削と3Dプリントの比較)(自社情報・2026年10月確認)。

真空成形は、型を使う方法として並べて比べる

真空成形は型を用意して成形するため、型を作らない3Dプリントや切削加工とは、準備の段取りが違います。当社の主力は金型によるゴム成形品で、その次がOリング、樹脂成型品と続きます。金型成形を中心とする会社として、型を使う方法と使わない方法を並べて、ご相談を受けています。費用の分かれ目については、切削・射出成形・3Dプリントのコスト比較でも整理しています。

中空成形など、ほかのプラスチック成形との違い

同じプラスチックの成形でも、方法によって向く形が違います。自社ページでは、中空成形を、材料を金型で挟み、針状の管で空気を送って膨らませて成形する方法として説明しています。ボトルのように中が空洞の形は、こちらが検討の対象になります。真空成形はシートを型に密着させる方法なので、検討する形の考え方が異なります。成形方法の基本はゴム・プラスチックとはでも紹介されています。

出典:富士ゴム化成「ゴム・プラスチックとは」ページ(中空成形の定義)(自社情報・2026年10月確認)。

自社の真空成形の検討は、相談前にどこまで整理できていますか?

当てはまる項目が多いほど、相談前に整理しておくと検討が進めやすくなります。下のチェックは診断ではなく、相談前の整理のためのものです。個人情報の入力はありません。

真空成形の相談前チェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個相談の準備がほぼ整っています。図面か現物と、数量をお知らせください。
2〜3個一部が未整理です。形と数量から整理を始めると、進めやすくなります。
4〜6個整理から始める段階です。まず部品の用途と、設計が固まっているかを言葉にすることをおすすめします。

設計が固まっていないなら、先に形を確かめる

設計変更が続きそうな段階では、型を使う前に、3Dプリントや切削加工で形を確かめる進め方があります。形が固まってから、真空成形を含む型を使う成形を比べると、検討の手戻りが減ります。

真空成形の試作・小ロットについて、よくいただくご質問は?

成形方法の説明、試作や小ロットの相談、ほかの方法との使い分け、図面の要否、相見積もりについてご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。

真空成形とは、どんな成形方法ですか?
加熱して柔らかくしたシート状の樹脂を型に被せ、空気を吸い出して型に密着させる成形方法です。当社の事業内容には、プラスチック金型成形として真空成形が含まれています。

試作や小ロットの部品でも、相談できますか?
相談をお受けしています。ただし、対応できるかどうかは形状・数量・材料によって変わるため、図面か現物、数量をうかがったうえで個別に確認します。

3Dプリントや切削加工と、どう使い分ければよいですか?
形を確かめる段階なら3Dプリント、機能や精度を確かめる段階なら切削加工、同じ形を繰り返し作る段階なら型を使う成形、というのが考え方の一例です。設計がどこまで固まっているかによって変わるため、状況をお聞かせください。

図面がなくても、相談できますか?
図面が無い段階でも、現物や、形と用途が分かる資料があれば相談を始められます。形状と深さ、使う場所が分かるものを添えていただくと、話が早く進みます。

他社にも見積もりを取って構いませんか?
相見積もりを歓迎しています。形・外観面・シート材・数量を同じ内容で各社に伝えていただくと、見積りを比較しやすくなります。

見積りを依頼するとき、何をそろえればよいですか?

図面(または現物)、仕様・用途、数量、材料・材質の4点があれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

現物や、似た形の部品がある場合は、写真を添えていただくと、形と深さが伝わりやすくなります。

真空成形での試作・小ロットを相談する

形や深さ、使うシート材が決まっていない段階でも構いません。用途と数量をお知らせいただければ、進め方をご提案します。

見積りを依頼する

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