ものづくりプレス

2026-09-21

金型成形の公差はVDI規格が基準|切削の公差との3つの違い

見積りに「VDI規格に準じる」と書かれていて、それが何を意味するのか分からない。ネットで調べても切削加工の±0.1mmという数値ばかり出てきて、自分の部品がどちらに当てはまるのか判断できない。ゴム部品の公差を初めて確認する設計・調達担当者から、そうした声を聞きます。

この記事では、金型成形の公差の基準になるVDI規格とは何か、よく見かける±0.1mmという切削加工の公差とどう違うのかを整理します。当社が公差について訂正を受けた経緯をふまえて書いています。

作成者 橋本(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年9月21日 最終更新日 2026年9月21日 本記事は2026年9月時点の情報です 読了時間 約8分

VDI規格とは、何ですか?

VDIはドイツ技術者協会(Verein Deutscher Ingenieure)の略称です。当社の公開情報では、金型成形は一般的にVDI規格に書かれる公差で金型が作られるとしています。金型成形の部品を発注する際、公差の基準として名前が挙がる規格の1つです。

当社は次のように説明しています。

「金型成形は一般的にVDI規格(ドイツ技術者協会)に書かれる公差で金型が作られます。」

規格番号や適用条件は、品物ごとに確認する

VDI規格には複数の規格番号があり、対象とする工法や材質によって適用される内容が異なります。この記事では規格の存在と位置づけを紹介するにとどめ、具体的な規格番号や数値は品物ごとに個別にご確認いただく前提で書いています。見積りの際に、どの規格番号を前提にしているかをお尋ねいただくことをおすすめします。

「一般的に」という言葉が示す幅

当社の説明にある「一般的に」という言葉は、VDI規格が唯一絶対の基準ではなく、業界でよく参照される基準の1つであることを示しています。発注先や品物によって、別の基準が使われることもあり得ます。公差の根拠を確認したい場合は、見積りの段階で基準を明示してもらうとよいでしょう。

出典:富士ゴム化成の説明(2026年6月・自社情報)。VDI規格番号の特定は個別に要確認。

±0.1mmという公差との違いは、何ですか?

よく見かける±0.1mmという数値は、当社では切削加工の公差として案内しているもので、VDI規格にもとづく金型成形の公差とは別物です。この2つを混同すると、Oリングのような金型成形品に切削加工の公差を当てはめてしまう誤りが起こります。

項目 切削加工 金型成形(Oリング等)
公差の基準当社の対応レンジとして案内VDI規格に書かれる公差が一般的
よく見る数値±0.1mm規格・品物により異なる
公差が変わる要因加工精度・刃物・材質の硬さ配合・材質による収縮率の違い
適用される部品の例切削で作る機能部品・治具金型成形のゴム部品(Oリング等)

「±0.1mm」がひとり歩きした経緯

当社は過去に、ゴム加工の対応レンジとして「最大φ250の旋盤加工、寸法精度±0.1mmまで対応」という情報を公開していました。これは切削加工の文脈での数値です。しかしこの数値だけが独り歩きし、Oリングなど金型成形される部品の公差として引用されるケースがありました。金型成形は一般的にVDI規格に書かれる公差で金型が作られるため、切削加工の数値をそのまま当てはめることはできません。

工法が違えば、公差の決まり方も違う

切削加工は刃物で削り出すため、加工精度がそのまま寸法精度に反映されます。一方、金型成形は材料を型に流し込んで固めるため、材質の収縮率が寸法に影響します。ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、金型成形の公差は品物ごとに決めていく必要があります。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

公差の考え方は、どう整理すればよいですか?

工法を先に確定し、その工法に応じた公差の基準を確認する順番です。材質が決まる前から公差の話をすると、後で工法が変わったときに前提が崩れます。工法・材質・公差の3つは、この順番で決めていくのが手戻りの少ない進め方です。

部品の公差を工法の確定から機能に効く部位の特定まで4段階で決める流れを示す図 図1 工法から公差を決める順番 STEP 1 工法を確定 金型成形か 切削加工か STEP 2 材質を決める 使用条件から 候補を絞る STEP 3 基準を確認 VDI規格か 当社の対応レンジか STEP 4 機能部位を特定 厳しくする所と 緩める所を分ける 工法が変わると公差の基準も変わるため、最初に工法を確定させることが要点です。

機能に効く部位だけを厳しくする

部品のすべての寸法が同じ重みで公差を要求されるわけではありません。相手部品と接する面や密封する部分は厳しく、それ以外は緩めるという考え方が、金型成形でも切削加工でも共通します。この考え方はゴム部品の図面公差は「1段緩める」が正解で詳しく整理しています。

図面に「VDI」と書くだけでは、公差は確定しない

図面に「VDI規格に準じる」とだけ書いても、規格番号や適用等級が示されていなければ、発注先ごとに解釈が変わる可能性があります。公差を明確にしたい場合は、規格番号・等級・対象寸法を明示するか、当社との打ち合わせで具体的な数値をすり合わせることをおすすめします。

出典:富士ゴム化成「お問い合わせ」ページ(見積り時に必要なもの)(自社情報・2026年9月確認)。

見積りの前に、公差について何を確認しますか?

工法、材質の候補、機能に効く部位の3つです。この3つが分かっていれば、公差の基準(VDI規格か当社の対応レンジか)を確認する会話が具体的になります。

公差の基準を確認せずに発注した場合と確認してから発注した場合の違いを対比した図 図2 公差を確認せずに発注した場合と、確認してから発注した場合 確認してから発注 確認せず発注 基準が明確 機能部位の公差が合う 検査基準が決めやすい 受入時のずれが少ない 基準が曖昧 切削の数値を誤用するおそれ 検査基準が決まらない 受入時に「思っていた公差と違う」 見積りの段階で、公差の基準(VDI規格か切削の対応レンジか)を明示的に確認してください。

相見積もりでは、公差の前提をそろえる

当社は相見積もりを歓迎しています。公差の基準が各社で異なると、同じ図面でも見積り金額の差が公差の厳しさの違いなのか、別の要因なのか判断できません。工法・材質・機能に効く部位を同じ内容で各社に伝え、公差の基準を明示してもらうことをおすすめします。見積りがぶれる理由はゴム・樹脂部品の見積がブレる本当の理由にまとめています。

工法と機能部位が曖昧な場合と明確な場合とで、公差についての合意のしやすさが変わることを示す図 図3 情報の明確さで、公差の合意しやすさが決まる 工法・部位が曖昧 工法・部位が明確 工法と機能に効く部位が明確なほど、公差の基準についての会話が具体的になる。 曖昧な段階でも、使用条件をうかがえば材質と工法の候補から一緒に整理できます。

自社の公差の理解は、どこまで整理できていますか?

当てはまる項目が多いほど、発注前に公差の基準を確認しておくと納品後のずれが防げます。下のチェックは診断ではなく、公差についての理解のどこが曖昧かを確かめるための整理です。個人情報の入力はありません。

公差理解の整理チェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個公差の理解が整理されています。見積り依頼に進めます。
2〜3個一部が曖昧です。工法の確定から整理してください。
4〜6個整理から始める段階です。まず金型成形と切削加工のどちらの部品かを確認することをおすすめします。

金型成形の公差について、よくいただくご質問は?

VDI規格の位置づけ、±0.1mmとの違い、断定できない理由、切削との関係、相談のタイミングについてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。個別の品物については、図面か現品を見たうえでお答えしています。

VDI規格は日本の規格ですか?
いいえ。VDIはドイツ技術者協会(Verein Deutscher Ingenieure)を指し、金型成形は一般的にVDI規格に書かれる公差で金型が作られるとされています。規格番号や適用条件の詳細は個別にご確認ください。

±0.1mmという公差はVDI規格の値ですか?
いいえ。±0.1mmは切削加工の公差として案内している数値で、VDI規格にもとづく金型成形の公差とは別物です。Oリングのように金型成形される部品には、この数値をそのまま当てはめていません。

金型成形とVDI規格の公差は、必ずこの通りになりますか?
ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なります。公差は品物ごとに決めていく必要があるため、一律の数値としてお伝えすることはできません。

切削加工の部品にVDI規格は関係しますか?
関係しません。VDI規格は金型で成形する部品の公差の考え方で、切削加工は別の工法のため、公差の決まり方が異なります。

公差の相談は、材質が決まる前でもできますか?
できます。使用条件をうかがったうえで材質の候補をご提案し、そこから工法と公差を一緒に決めていく進め方がもっとも手戻りが少なくなります。

公差について相談するとき、何をそろえればよいですか?

工法(金型成形か切削加工か)、使用条件、機能に効く部位の候補があれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。決まっていない項目は、決まっている条件から一緒に詰めていきます。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

公差の相談は、材質が決まる前からでも承っています。使用条件をうかがったうえで材質の候補をご提案し、そこから工法と公差を一緒に決めていく進め方がもっとも手戻りが少なくなります。

公差の考え方を含めて見積りを依頼する

工法や材質が決まっていない段階でも構いません。用途をお知らせいただければ、公差の基準も含めてご提案します。

見積りを依頼する

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