ものづくりプレス

2023-08-16

ゴムパッキンの特徴や用途・適応するゴム

気密性を高めたり、中身を密閉したりするために使用するゴムパッキン。用途に応じていろいろなサイズや形状のものがあります。また、使用するものやシーンに応じて、ゴムパッキンに使用するゴム原料も異なります。寿命を迎えると機能が損なわれるため、適度に交換するのが重要です。

ゴムパッキンの特徴や用途、ゴムパッキンに使用されるゴム材料の特徴、さらにゴムパッキンの寿命と交換時期について解説します。用途に応じたゴムパッキン製造や、正しいゴムパッキン選びや使用にぜひ役立ててください。

ゴムパッキン

ゴムパッキンの特徴

ゴムパッキンとは、機材と機材の継ぎ目に使用されているゴム部材です。水道やガスなどの配管、蛇口やバルブなどの接合面にゴムパッキンは多く使用されています。配管や蛇口のなかを通る流体(気体や液体)が外に漏れないように、または機材のなかに流体が入るのを防ぐ目的で用いられています。

ゴムパッキンは、用途によってサイズや元となるゴムが異なります。

ゴムパッキンの用途

ゴムパッキンは、工場用機械から日用品、自動車や航空機の部材まで幅広い用途で使われています。


·    水道の蛇口など水回りの部材

·    扉や外装の部材

·    静電気対策

·    時計や自動車などにおける外部からのダスト侵入防止

·    食品、ガソリン、薬品などの容器

など


ゴムパッキンは、用途別に以下の種類があります。

·    回転型シール

·    往復動用シール

·    接触型シール

·    非接触型シール

·    リップパッキン

·    スクィーズパッキン

·    水栓パッキン

·    フランジ用中パッキン

·    フランジ用全面パッキン

·    エッジガード

·    キャビネット用パッキン

·    ダストシール

·    Oリング

·    電線管

など

ゴムパッキンに使用されるゴム

ゴムパッキンは、流入または流出を防ぐ流体の性質や、使用する環境に合わせたゴム原料が使われています。おもに使われるのは耐油性が高く加工もしやすいニトリルゴムや、高い耐熱性や耐油性を持つフッ素ゴムです。ほかにもいろいろなゴムが、ゴムパッキンの材料として使用されています。


·    ニトリルゴム(NBR)

·    フッ素ゴム(FKM)

·    ウレタンゴム(U)

·    シリコーンゴム(Q)

·    エチレンプロピレンゴム(EPDM)

·    水素化ニトリルゴム(HNBR)

·    クロロプレンゴム(CR)

·    アクリルゴム(ACM)

·    ブチルゴム(IIR)

·    エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)

·    天然ゴム(NR)

ニトリルゴム

耐油性に優れているゴムです。耐摩耗性、耐老化性、引っ張りへの強度も高いためゴムパッキンのほか手袋、自動車部材などにも使用されています。一方耐熱性や耐候性が低く、極性溶剤へのゴムパッキンには使用できません。

フッ素ゴム


ゴムのなかでもっとも耐熱性が高いゴムです。耐熱性や耐油性、耐薬品性にも優れているため化学工場や薬品でのゴムパッキンにも使用されています。一方耐寒性が低い、有機酸、ケトン、エステル、アミン系の薬品には使えない、価格が高いのがデメリットです。

ウレタンゴム


運動性能が高く、力学的な強度に優れている合成ゴムです。変形に強く、大きな負荷のかかるゴムパッキンに向いています。エーテル系とエステル系があり、エーテル系の場合は加水分解を起こすため、注意が必要です。

シリコーンゴム

耐候性や耐薬品性、耐寒性や耐候性、電気絶縁性などに優れているゴムです。撥水性、非粘着性を持つため、工業用ゴムパッキンや防水シール材のほか、ニオイや色が移りにくい特性を活かし家庭用や食品用のゴムパッキンにも用いられています。デメリットは引裂きに弱いため、運動用には向かない点です。

エチレンプロピレンゴム

耐薬品性、耐寒性、耐オゾン性、耐老化性の高いゴムです。屋外での使用に向いているため、自動車用や水回りのゴムパッキンにも使用されています。一方耐油性が低いです。

水酸化ニトリルゴム

ニトリルゴムの耐熱性と耐候性を向上させた合成ゴムです。一方、耐寒性はニトリルゴムよりも劣ります。摩擦係数が低い特性があります。

クロロプレンゴム

耐候性、耐オゾン性、耐熱性、耐薬品性などが高く、バランスのよい性質を持っている合成ゴムです。自己消火性を持つ特徴があります。ゴムパッキンなどのシール材のほか、ウェットスーツの素材としても使用されています。一方低温時の使用に向かない、耐熱性が低いのがデメリットです。

アクリルゴム

耐油性が高く、とくに高温状況下で優れた耐油性を発揮する合成ゴムです。高温状況下になるオイル缶のゴムパッキンなど、いろいろな用途で使用されています。

プチルゴム

耐候性、耐オゾン性、対ガス透過性に優れている合成ゴムです。極性溶剤への耐性も持っているため、極性溶剤のゴムパッキン材料として使用できます。

エピクロルヒドリンゴム

アクリルゴムと同じく、高温状況下で優れた耐油性を発揮する合成ゴムです。耐ガス透過性、耐老化性も優れています。主に自動車用に使用されています。

天然ゴム

ゴムの木の樹液から加工される天然ゴムは、ゴムらしい弾性の高さを持っています。機械的強度も高く、自動車のタイヤをはじめいろいろな用途で使用されています。一方で対候性が低く、成形性も悪いというデメリットもあります。

ゴムの寿命と交換時期

ゴムには寿命があり、寿命を過ぎると性質が低下し、製品として最適な性能を発揮できなくなります。おもなゴムパッキンの部材ごとの保管期限の目安は、以下の通りです。


ゴムの種類

保管期限の目安

     ニトリルゴム

10

水素化ニトリルゴム

10

フッ素ゴム

20

シリコーンゴム

20

エチレンプロピレンゴム

20

ウレタンゴム

10










ただし、保管期限は製造日から適切な保管場所で保管された場合の目安です。ゴムパッキンは流体に触れ、負荷のかかる部材です。使用環境や状況によっては、劣化が早くなる場合があります。

ゴムが劣化する原因には、以下のものがあります。

·    オゾン(酸化劣化)

·    油、溶剤、ガソリン

·    温度

·   

·    摩耗による消耗

·    光や紫外線など(化学変化)


オゾン

ゴムはもともとオゾンに弱く、直射日光のあたる場所や屋外、オゾン濃度の高い場所で使用しているとゴムの劣化が進みます。耐候性や耐オゾン性を高めた合成ゴムは、製造工程でオゾン劣化防止剤などの薬品が添加されています。

油、溶剤、ガソリン

油や溶剤、ガソリンにゴムが触れると膨張、あるいは痩せる(小さくなる)性質を持っています。油や溶剤、ガソリンの流出や流入を防ぐためのゴムパッキンは、耐薬性や耐油性、耐溶剤性を添加したゴムを使用します。

温度

ゴムは高温になると硬化や軟化、亀裂や粘着が発生します。低温になると硬化し、ゴムの持つ弾性が失われます。一定の温度管理がされた環境下の使用、または保存がされないとゴムの寿命は短くなっていきます。

一部のゴムのなかには、水に触れることで膨張する、耐水性の低いものもあります。

摩耗による消耗

ゴムの表面をひっかく、表面の疲労、滑らかな面との摩擦、粘着摩擦など、いろいろな摩擦もゴムが劣化する原因のひとつです。

ゴムパッキンの劣化が見えて、正常に使用できない状態になれば交換が必要です。もしも「ゴムパッキンの劣化が早い、寿命が短い」と感じた場合は適切な環境下で使用や保管をしていない、またはゴムパッキンの用途とゴムの性質が合っていない可能性があります。

ゴムパッキンは用途に応じたゴムを選ぼう

液体や気体、汚れやほこりの流入や流出を防ぐために機材の継ぎ目などに使用されるゴムパッキンは、一般家庭用から工業用までいろいろな用途で使用されています。ゴムパッキンで使用する原料のゴムにより、性質が異なります。ゴムパッキンの用途に応じた種類の原料ゴムを選ぶのが重要です。


寿命の長いゴムパッキンを製造したい、または用途に応じてどのゴムを選んでいいか分からないときには、ぜひゴムの専門家に相談をしてみましょう。すでに使用しているゴムパッキンの交換頻度が高いと感じている場合も、ゴム原料から見直し、新しいゴムパッキン製造も選択肢に入ります。

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