ものづくりプレス

2026-10-07

現物を3Dスキャンしてゴム部品を再現する|向く形状と限界

図面が残っていないゴム部品を再現したいが、複雑な曲面があり、手測りでは寸法を起こしきれない。このようなとき、3Dスキャンという手段が候補に挙がります。ただし、3Dスキャンで何が読み取れて何が読み取れないかを知らないまま進めると、期待と結果にずれが生じます。

この記事では、現物を3Dスキャンしてゴム部品を再現するときに向く形状と限界を整理します。

作成者 中村(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年10月7日 最終更新日 2026年10月7日 本記事は2026年10月時点の情報です 読了時間 約8分

3Dスキャンは、どんな場面で向きますか?

曲面が複雑で、手測りやノギスでは寸法を起こしきれない形状に向いています。単純な円柱や角柱であれば、手測りでも十分なことが多く、3Dスキャンが必須とは限りません。

形状の例 3Dスキャンの向き不向き 理由
複雑な曲面向く手測りでは再現しづらい形状を面で読み取れる
単純な円柱・角柱手測りで足りることが多い直径・長さ等の数値だけで足りる
内部に空洞がある構造外形以外は別途確認が必要3Dスキャンは表面の形状が対象
摩耗で形が崩れている読み取れる範囲で対応摩耗前の仕様書があれば併用

3Dスキャンは「表面の形状」を読み取る手法

3Dスキャンで得られるのは、主に部品表面の形状データです。内部の肉厚や、見えない部分の構造までは読み取れないため、必要に応じて断面を切って確認するなど、別の手段を組み合わせます。

出典:富士ゴム化成「廃盤部品の再現」ページ(現物調査・材料分析の流れ)(自社情報・2026年10月確認)。

ゴムのように柔らかい部品でも、スキャンできますか?

形状は読み取れますが、ゴムは測定時にわずかな力でも変形しやすい材料です。置き方や支え方によって、読み取る形状が変わってしまうことがあります。

廃盤部品の再現では、現物調査と材料分析を踏まえて、CADデータを作成する流れをとっています。

摩耗や変形があっても、寸法と材質を読み取る手がかりになります。

変形を避けるための置き方を工夫する

自重で垂れ下がったり、支えた部分がへこんだりすると、本来の形状とは異なるデータになります。現物調査の際には、できるだけ自然な状態を保てる置き方を選び、必要に応じて複数の角度から確認します。

摩耗後の形状と、新品時の形状は別物として扱う

摩耗や劣化が進んだ現品をそのままスキャンすると、摩耗後の形状がデータ化されます。新品時の仕様書や図面が残っていれば、両方を照らし合わせて、どこまでが摩耗による変化かを判断します。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

3Dスキャンから再現までは、どう進みますか?

現物調査、データ化、材質の検討、試作評価の4段階です。複雑な曲面を持つ現品からでも、この順で進められます。

現物を3Dスキャンしてゴム部品を再現するまでの流れを4段階で示す図 図1 3Dスキャンによる再現の4段階 STEP 1 現物調査 表面形状を 読み取る STEP 2 データ化 収縮率等を 踏まえて調整 STEP 3 材質の検討 使用条件から 候補を絞る STEP 4 試作して評価 実機に取り付けて 確認 スキャンデータはそのまま使うのではなく、調整を加えて金型設計に反映します。

収縮率を踏まえた調整が必要になる

ゴムは材質によって収縮率が異なるため、3Dスキャンのデータをそのまま金型に反映すると、仕上がり寸法がずれることがあります。材質が決まった段階で、収縮率を踏まえた調整を加えます。

設置環境も、材質選びに影響する

屋外に設置される部品は紫外線やオゾンの影響を受け、屋内でも油や薬品に触れる環境では求められる耐性が変わります。3Dスキャンで形状を読み取るのと並行して、設置環境の情報もお伝えいただくと、材質の検討がより具体的になります。

機能に効く部分は、優先して精度を確認する

部品全体を均等に精密化する必要はありません。相手部品と接する部分や、密封に関わる部分など、機能に効く部位を優先して精度を確認する考え方が実務的です。

出典:富士ゴム化成「ゴム部品の図面公差は「1段緩める」が正解」ページ(公差の考え方)(自社情報・2026年10月確認)。

3Dスキャンと手測りは、どちらを選びますか?

形状の複雑さと、必要な精度によって使い分けます。単純な形状であれば手測りで十分なことが多く、複雑な曲面では3Dスキャンが有効です。

手測りが向く場合と3Dスキャンが向く場合の違いを対比した図 図2 手測りが向く場合と、3Dスキャンが向く場合 手測りが向く 3Dスキャンが向く 単純な円柱・角柱 主要寸法が少ない 短時間で済む 追加費用がかからない 複雑な曲面がある 面全体の形状が必要 データ化の手間がかかる 収縮率調整と組み合わせる どちらが向くかは、形状の複雑さで判断します。 形状が単純な場合と複雑な場合とで適した測定手法が変わることを示す図 図3 形状の複雑さで、適した手法が変わる 単純な形状 複雑な曲面 形状が複雑なほど、3Dスキャンによる面データの読み取りが有効になる。 判断に迷う場合は、現品を確認したうえでご提案します。

過去の不具合は、再現の精度を上げる材料になる

前の部品がどこで割れたか、どの部分が摩耗しやすかったかが分かれば、再現の際に注意して確認する部位が絞れます。当社の現物調査では、形状の読み取りに加えてこうした傷み方も確認します。思い出せる範囲で構いません。

工場視察や監査で、製作の様子を確認できる

当社では必要に応じて工場視察や監査に対応しています。現物調査や検査の様子を現地でご確認いただくことも可能です。

複数の部品をまとめてスキャンすることもできる

同じ設備で使う複数の部品をまとめて確認する場合、1回の現物調査で複数点を扱うと効率的です。使用箇所を洗い出したうえでご相談ください。

同じ部品が社内に複数あれば、まとめて数える

1個ずつ考えると検討が割高になりますが、同じ部品を使う箇所が社内に複数あれば、まとめて数量を出すことで検討が現実的になります。予備も含めて、使用箇所を洗い出してみてください。

相見積もりでも、現品の扱いを統一する

複数社に相談する場合、現品をそのままの状態で送ることを各社に統一して伝えると、比較の前提がそろいます。当社は相見積もりを歓迎しています。

段階的に進めたい場合も、相談できる

いきなり量産を決めるのではなく、まず試作で評価してから数量を決めたいというご相談にも対応しています。試作の段階で評価した条件は、そのまま量産の検査基準に引き継げます。

自社の3Dスキャン再現は、どこまで準備できていますか?

当てはまる項目が多いほど、依頼前に整理しておくと検討がスムーズになります。下のチェックは診断ではなく、何が未整理かを確かめるための整理です。個人情報の入力はありません。

3Dスキャン再現の準備チェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個準備が整っています。現品を送っていただければ検討に入れます。
2〜3個一部が未整理です。現品の形状と摩耗の程度から確認してください。
4〜6個整理から始める段階です。まず現品を確保することをおすすめします。

3Dスキャンによる再現について、よくいただくご質問は?

読み取れる形状の範囲、材質の判別、ゴムの変形、摩耗した現品、金型への反映についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。

3Dスキャンなら、どんな形状でも読み取れますか?
外形は読み取りやすいですが、内部の肉厚や隠れた構造は別途の確認が必要です。断面を切って確認することもあります。

摩耗した部品でも3Dスキャンの対象になりますか?
なります。摩耗後の形状として読み取ったうえで、新品時の仕様書や図面があれば、あわせて照合します。

3Dスキャンのデータだけで、材質まで分かりますか?
分かりません。3Dスキャンは形状を読み取る手法で、材質は別途の分析や使用条件から絞り込みます。

ゴムのように柔らかい部品でも、正確にスキャンできますか?
形状は読み取れますが、ゴムは測定時の力の加減で変形しやすい点に注意が必要です。現物調査の中で、変形の影響が少ない方法を選びます。

3Dスキャンしたデータは、そのまま金型に使えますか?
そのままではなく、収縮率や公差を踏まえた調整を加えたうえで金型設計に反映します。

見積りを依頼するとき、何をそろえればよいですか?

現品、使用条件、必要数量があれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。決まっていない項目は、決まっている条件から一緒に詰めていきます。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

現物からの再現を相談する

複雑な曲面を持つ現品でも構いません。現品の状態をお知らせいただければ、進め方をご提案します。

見積りを依頼する

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