ものづくりプレス
2023-08-23
水素化ニトリルゴムの特徴と用途
加工がしやすく価格も安定しているため、いろいろな用途で使用されている合成ゴムがニトリルゴムです。一方、ニトリルゴムには耐候性が低いなどの欠点があります。ニトリルゴムの弱点を補い、改良されて生まれたのが水素化ニトリルゴムです。水素化ニトリルゴムもいろいろな性質があり、幅広い用途で活用されています。
この記事では、水素化ニトリルゴムの特徴や性質、用途について解説しています。ニトリルゴムの用途に水素化ニトリルゴムが代替できないか考えている方や、ゴム製品製造に適した原料ゴムを選びたい方は、ぜひ参考にしてください。
HNBR 水素化ニトリルゴムとは
水素化ニトリルゴム(HNBR)とは、ニトリルゴム(NBR)を改良して誕生した合成ゴムです。ニトリルゴムは加工性が高く価格が安い、さらにアクリロニトリル基とブタジエン基の共重合比を変えることで耐熱性、耐油性、耐寒性を向上させられるメリットもあります。
用途に応じて耐油性、耐熱性、耐寒性を変化させ、Oリングやオイルシールをはじめとしたいろいろなゴム製品に使用できます。使用可能温度が-20℃~+110℃の高ニトリル、-40℃~+100℃の低ニトリルのニトリルゴムがあります。一方で、耐オゾン性が劣る弱点があります。
水素化ニトリルゴムは、ニトリルゴムの弱点である耐オゾン性や耐候性を向上させ、さらに耐熱温度も上げた合成ゴムです。ゴム製造工程では、ニトリルゴムと同じく硫黄または有機過酸化物が架橋に使用されます。ただし、水素化率が95%を超えると硫黄での架橋が難しくなるため、有機過酸化物(パーオキサイド加硫)を使います。
HNBR 水素化ニトリルゴムの特徴
水素化ニトリルゴムは、ニトリルゴムの主鎖であるブタジエンの二重結合を化学的に結合して作られた合成ゴムです。ニトリルゴムに耐候性、耐オゾン性、耐薬品性が向上し、+100~110℃までだった使用範囲温度を+120~140℃まで高めています。
また、ポリマー主鎖中に含まれる二重結合量(水素化率)とアクリロニトリル(AN)を変えることで、ニトリルゴムにはないすぐれた耐摩耗性、機械的強度や耐圧縮性、永久ひずみ性も得ました。
市販されている水素化ニトリルゴムは、水素化率が80%程度~99%(ポリマー主鎖中に二重結合がほとんど含まれない)まで、結合アクリロニトリル量は17~50%までと幅広く、いろいろな性質のものがそろっています。
耐油性が求められる場合はアクリロニトリル量、耐熱性、耐候性、耐薬品性が求められる場合は水素化率の高いものが選択されます。PVCをブレンドし、耐燃料油性や耐劣化ガソリン性などを改良した水素化ニトリルゴムもあります。
一方で、耐寒性はニトリルゴムよりも劣ります。価格はニトリルゴムよりも高いため、ゴム製品製造コストが高くなるのもデメリットです。アルコールやディーゼルなどのバイオ燃料関係のニーズの高まりなどの影響で、今後も水素化ニトリルゴムの需要が高くなることが予測されています。
第3成分を共重合した低温性改良水素化ニトリルゴムをはじめとした、さらなる改良を加えた水素化ニトリルゴムが開発されています。
HNBR 水素化ニトリルゴムの用途
水素化ニトリルゴムは以下の用途で用いられています。
· オイルシール
· Oリング
· 耐油ホース
· 耐熱ホース
· 燃料ホース
· ダイヤフラム
· ガスケット
· 各種シール材印刷ロール
· ブランケット
· ベルト
· カーエアコン用リップシール
水素化ニトリルゴムは、ニトリルゴムの持つ耐油性はそのままに、耐熱性や耐候性、耐薬性、機械的強度を向上させています。ニトリルゴムと同じオイルシールやOリングなどの油や燃料のシール材の原料として使われています。
ほかにも、耐候性を向上させたことで屋外使用が前提のゴム製品にも用いられています。耐油、耐熱、燃料ホースのほか、燃料ポンプ用やガス減圧弁用のダイヤフラムやシール材にも水素化ニトリルゴムが使われています。
水素率の高いフル水素化グレードの水素化ニトリルゴムは、化学的安定性が高いことに加えてアクリルゴム(ACM)と同じくらい高い耐熱性を持っています。そのため、特殊シールや高圧ホースにも使用されています。
水酸化ニトリルゴムは用途とコストを考えて導入を検討しよう
シール材やベルト、Oリングなどさまざまな用途で用いられているニトリルゴムには、耐候性や耐熱性の低い弱点があります。その弱点を補うために開発された水素化ニトリルゴムは、高圧ホースやガスケットなどの特殊な用途のゴム原料としても用いられています。
一方で、水素化ニトリルゴムはニトリルゴムよりもコストが高いため、すべてのニトリルゴムを水素化ニトリルゴムで代替しようとすると莫大なコストがかかります。ニトリルゴムよりも耐寒性が低い点にも注意しなければいけません。
製品や用途に応じたゴム原料を選びたいときには、ゴムの専門家に相談をすると確実です。シール材やベルト、ホースなどの製造で水素化ニトリルゴムを含めた原料ゴムの選定に迷ったときは、ぜひ相談してみましょう。
記事検索
NEW
-
2025/05/22オイルシールの摩耗メカニズムと寿命延長のための設計ポイントオイルシールは、機械の回転...
-
2025/05/21高温・高圧環境におけるオイルシールの性能維持とトラブル対策高温環境で作動する機械にと...
-
2025/05/20汎用ゴムと特殊ゴム、それぞれの特徴や種類を解説汎用ゴムとは、タイヤの製造...
-
2025/05/20オイルシールの材質選定ガイド|耐久性・摩擦特性を最適化する方法機械の内部で活躍する「オイ...
CATEGORY
ARCHIVE
-
2025
お知らせ 163 -
2025
ゴム 163 -
2025
その他ものづくり 163 -
2025
成形・加工方法 163 -
2025
樹脂・プラスチック 163 -
2024
お知らせ 244 -
2024
ゴム 244 -
2024
その他ものづくり 244 -
2024
成形・加工方法 244 -
2024
樹脂・プラスチック 244 -
2023
お知らせ 41 -
2023
ゴム 41 -
2023
その他ものづくり 41 -
2023
成形・加工方法 41 -
2023
樹脂・プラスチック 41 -
2022
お知らせ 7 -
2022
ゴム 7 -
2022
その他ものづくり 7 -
2022
成形・加工方法 7 -
2022
樹脂・プラスチック 7 -
2021
お知らせ 18 -
2021
ゴム 18 -
2021
その他ものづくり 18 -
2021
成形・加工方法 18 -
2021
樹脂・プラスチック 18