ものづくりプレス

2023-08-31

フッ素ゴムの特徴と用途

フッ素ゴム(FKM)は、耐性・強度などのさまざまな面で優れた性能を持つゴム製品です。特に耐熱性や耐油性などに関しては、他のゴム製品よりも突出しています。当記事ではフッ素ゴムの概要や特徴、用途、モノマーや加硫方法などによる特性変化について解説します。


フッ素ゴム

FKM フッ素ゴムとは

フッ素ゴムは、組成の中にフッ素含有モノマーを含んでいるゴム状の弾性体の総称です。その中でFKMは「6フッ化プロピレン-フッ化ビニリデン共重合体」のことで、フッ素ゴムの中でも代表的なタイプになります。他にはFEPMやFFKMなどの種類がありますが、フッ素ゴムといえばFKMを指すことが多いです。

FKMフッ素ゴムの基本情報をみていきます。


基本情報

概要

比重

1.801.82

可能なJIS範囲硬さ

5090

引張強さ(kg/cm2

70200

伸び(%)

100500

耐熱性

300℃

耐寒性

-10-50℃

そのほかの物理的特性

あらゆる物理的特性に優れる

機械的特性

反発弾性に少し難があるものの、引裂き強さや耐摩耗性などは優れている

電気絶縁性(Ω/cm25℃

10151018


FKMフッ素ゴムには、組成構造によってさらに次のタイプが存在します。


フッ素ゴムの種類

組成構造

フッ素濃度目安

2元系型フッ素ゴム

·         フッ化ビニリデン:VDF

·         6フッ化プロピレン:HFP共重合体

66%程度

3元系形フッ素ゴム

·         フッ化ビニリデン:VDF

·         6フッ化プロピレン:HFP

·         4フッ化エチレン:TFE共重合体

6670%超の範囲でさまざま

バーフルオロビニルエーテル含有(低温タイプフッ素ゴム)

·         フッ化ビニリデン:VDF

·         パーフルオロメチルビニルエーテル:PMVE

·         4フッ化エチレン:TFE共重合体

66%程度


2元系型フッ素ゴムがもっとも一般的に普及しています。

フッ素ゴムの特徴


フッ素ゴム全般が持つ特徴は次のとおりです。

·    ゴムの中でも最高レベルの耐熱性や耐油性、耐薬品性を持っている

·    耐炎性や耐オゾン性、耐候性も優れている

·    エーテル系や酸、アルカリには弱い

·    寒さや水に弱く、温度が高すぎる環境だと機械的性質も落ちる

·    優れた能力を持つ反面、その分だけ高価である


耐寒性や一定の薬品に弱い部分があるとはいえ、基本的にはあらゆる面で優れた耐性や物理特性を持っています。


フッ素ゴムの用途


フッ素ゴムは物理面・耐薬品面・耐熱面などのさまざまな強みを持つことから、多くの製造現場や製品の部品として用いられています。よく使われるのはパッキン類全般です。ガス透過性の低さや耐熱性、耐油性、耐薬品性、機械的特性などの良さから、機械との相性がよいためです。主な製品をみていきましょう。


·    オイルシール

·    シャフトシール

·    燃料ホース

·    ダイヤフラム

·    Oリング、ガスケット、そのほかパッキン類

·    気体関係のセンサー

など


「薬品や油、気体などのシール(密封)」を目的に、半導体製造装置や自動車、エネルギー関連、化学プラント工場などで使用されています。

また消毒殺菌系の薬品にも強いことから、人体に直接かかわる医療や食品関係や、排水管やトイレなどがかかわる住宅関係などの業界でも重宝されています。

フッ素の含有量や加硫方法によっても性能は変化する

同じFKMフッ素ゴムであっても、ゴムを構成するモノマーの種類やフッ素の含有量、加硫方法によって性能が変化します。変化による特徴をそれぞれみていきましょう。

フッ素ゴムを構成するモノマーごとの特徴

フッ素ゴムを構成するモノマーの組み合わせ比率を変えることで、フッ素ゴムの特性を変化させられます。代表的なモノマーごとの性質は次のとおりです。

·    VDF:低温に強いが、耐油性や耐塩基性が低い

·    HFP:耐熱性や耐油性に優れるが、低温に弱い

·    TFE:HFPと同じく、耐熱性や耐油性に優れるが、低温に弱い


フッ素含有量ごとのフッ素ゴムの特徴

フッ素含有量が多いケースと少ないケースの特徴は次のとおりです。


フッ素含有量

特徴

多い

耐薬品性、耐油性、耐食性、対メタノール製、耐燃料透過性等が向上する

少ない

耐熱性が向上する(低温に弱くなる)



加硫方法の違いによる特徴

加硫(かりゅう)とは硫黄や加硫剤などを加えた生ゴムを熱し、分子同士を結びつける架橋を促進し、ゴムに弾性や強度を付与する工程です。フッ素ゴムは、ゴムの製造過程で行われる加硫の方法によっても性能が変化します。 主な加硫方法と特性をみていきましょう。


ポリオール加硫

FKMフッ素ゴムの製造において、もっとも実施されている方法がポリオール加硫です。ポリオール加硫で製造されたゴムは耐熱性や耐圧縮永久歪性に優れます。また金属接着性や加工のしやすさも魅力です。


ポリアミン加硫

もっとも最初に開発された加硫方法がポリアミン加硫です。強度や伸びなどの機械特性や耐酸性、金属接着性に優れています。 しかし耐圧縮永久歪性が悪く、加工性がほかの加硫より劣っている点がデメリットです。使用期限も短く、現在は欠点を補ったポリオール加硫が主流となりました。


パーキオサイド加硫(有機過酸化物加硫)

パーオキサイド加硫(有機過酸化加硫)とは、フッ素ゴム以外のさまざまなゴム製品の加硫に用いられている加硫方法です。強度や伸びなどの機械特性や耐薬品性、耐スチーム性、耐酸性などに優れています。


医療現場や飲食関係でも使用されているフッ素ゴム

FKMフッ素ゴムは、製造現場だけでなく医療現場や飲食関係など業界・場所を問わず広く使われている製品です。購入コストがかかるものの、極めて優れた耐熱性や耐油性、耐薬品性を持っています。

またフッ素ゴムは、フッ素含有量や加硫方法、組成構造などによっても特性が変化します。現場で使用するときは種類にも注目しての導入がおすすめです。


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