ものづくりプレス

2026-09-11

ゴムの切削加工でできる形状とできない形状|1つの見分け方

「この形、削って作れますか」。ゴムの切削加工でいちばん多いご質問がこれです。答えは形の外側と内側で分かれます。

この記事では、ゴムの切削加工でできる形状とできない形状を、工具が届くかどうかという1つの基準で見分ける方法を整理します。判断がつけば、無駄な図面のやり直しがなくなります。

作成者 橋本(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年9月11日 最終更新日 2026年9月11日 本記事は2026年8月時点の情報です 読了時間 約8分

ゴムの切削加工では、どんな形状が作れますか?

工具が届く形状であれば作れます。外形、平面、溝、穴、外周の段差。一方で工具が届かない内側の形状や、閉じた中空構造は作れません。この1点が、できるかできないかの分かれ目です。

ゴムの切削加工で作れる形状と作れない形状を、工具が届くかどうかで対比した図 図1 切削でできる形と、できない形 切削でできる 切削では難しい 外形と平面 外側から入る溝と穴 外周の段差やテーパー 嵌合部のような精度が要る面 閉じた中空構造 工具が届かない内側の形状 アンダーカットの奥 薄すぎて保持できない形状 判断の基準は1つ、工具が届くかどうかです。

切削は「削り出す」ため、素材の物性がそのまま残る

ゴム板から削り出す方法のため、素材本来の強度が維持されます。3Dプリントは積層方向に弱く折れやすいという課題がありますが、切削加工にはその弱点がありません。実機での検証に耐える精度が欲しい、本物の材質で強度を確かめたい。そうした場面で切削が選ばれます。

中空構造が要るなら、3Dプリントの領域

工具が届かない内側の形状や中空構造は、3Dプリントの得意な領域です。形状の自由度では3Dプリントが上回ります。作りたい形が切削の範囲を超えている場合は、3Dプリントで形状を確認してから量産方法を決める進め方もあります。

出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」ページ掲載の比較表と説明(2026年8月確認)。

切削加工は、どんな用途に向いていますか?

機能を要する部品、機能評価、ギヤ、摺動部品、高圧部品、パッキンが適した用途です。いずれも精度か強度、あるいはその両方が求められる部品です。

比較項目 切削加工 3Dプリント
精度◎(高精度・嵌合部もスムーズ)△(積層痕や歪みが生じやすい)
強度・耐久性◎(素材本来の強度を維持)△(積層方向に弱く、折れやすい)
形状自由度△(ワークが届かない箇所は不可)◎(中空構造なども可能)
適した用途機能を要する部品、機能評価、ギヤ、摺動部品、高圧部品、パッキンデザイン確認、簡易治具

ゴムでは材料の選択肢が広がる

3Dプリントはプラスチックでもゴムでも造形用の材料を使います。またゴムは圧力を加えることで物性を高めるため、圧力を加えられない3Dプリントは物性で見劣りします。ゴム板から切削加工を行えば、より物性の高い部品を製作でき、材料の選択肢も多くなります。

1個からの小ロットと、納期の短縮

「金型を作るほどでもないが、高品質なものを1個からほしい」というニーズに最適です。金型を用意する時間がかからないぶん、着手から手元に届くまでが短くなります。当社は多品種少量生産を得意としており、1点からの試作のご相談も承っています。

自社の部品は、切削で作れる形ですか?

当てはまる項目が多いほど、切削では作れない可能性が高い状態です。下のチェックは診断ではなく、形状を言葉にするための整理として使ってください。

切削でできるかのチェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。個人情報の入力はありません。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個切削で作れる可能性が高い形状です。図面か現品をお送りいただければ判断できます。
2〜3個一部が切削では難しい形状です。分割や工法の組み合わせで対応できる場合があります。
4〜6個切削では難しい形状です。3Dプリントや金型成形をご検討ください。

切削で難しい形は、どう作りますか?

形状の確認までなら3Dプリント、量産まで見るなら金型成形に切り替えます。数量が読めているかどうかで、どちらに寄せるかが決まります。

作りたい形状から工法を決めるまでの判断の順番を4段階で示す図 図2 形状から工法を決める順番 STEP 1 形を見る 工具が届くか どうか STEP 2 数量を見る 1個か、継続して 使うのか STEP 3 確かめたいこと 形状か、物性か 精度か STEP 4 工法を決める 切削/3Dプリント/ 金型成形 形・数量・確かめたいことの3つで、工法はだいたい決まります。

工法ごとの費用の分かれ目は切削・射出成形・3Dプリントのコスト比較で整理しています。加工方法そのものの違いはゴム・樹脂の加工方法を比較もあわせてご覧ください。

分割して作るという手もある

1つの部品として削れない形でも、分割して作り、あとで接合できる場合があります。当社はゴム製品ではコンプレッション成形や焼付成形、樹脂製品ではインサート成形を得意としており、金属と一体になった構造も扱っています。形状が複雑な場合は、分割の相談から入ることもできます。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

依頼するとき、何を伝えればよいですか?

形状が分かる図面か現品、使用条件、必要数量の3つです。図面がない場合も、現品があれば形状を読み取って進められます。

数量が少ない場合と継続量産の場合で、切削と金型成形のどちらが向くかを示す図 図3 数量で変わる、切削と金型の分かれ目 1個〜少量 継続量産 少量なら金型を作らない切削から。継続して使うなら金型成形のほうが1個あたりを抑えられる。 分かれ目は形状と年間数量によって変わります。数量計画をうかがったうえでご提案します。

切削で作れる形なら、そのまま量産にも使える

数量が少ないうちは切削で作り、数がまとまった時点で金型に切り替えるという進め方ができます。このとき形状が切削でも成形でも成立する形になっていれば、移行のときに設計を変えずに済みます。最初から量産を見据えるなら、切削で作れる形に寄せておくのも一つの考え方です。

先に形状を見せてもらえると、判断が早い

ゴム・樹脂のノウハウにより、造形前や加工前に強度の足りない所や、どうすればご要望の品物を作れるかを提案できます。図面を作り込む前に一度見せていただくと、作り直しの回数が減ります。

薄いもの・柔らかいものは、保持の仕方が課題になる

削るには、材料を固定しなければなりません。ゴムは力を加えると変形するため、薄いものや柔らかいものは押さえた時点で形が歪みます。固定できても、削っている最中にたわめば寸法が出ません。肉厚が極端に薄い形状や、極端に軟らかい材質を指定されている場合は、保持の方法から相談させていただくことがあります。

量産に近い物性で確かめたいときも、切削が向く

ゴムは圧力を加えることで物性を高めるため、圧力を加えられない3Dプリントは物性で見劣りします。ゴム板から切削すれば、素材本来の強度を維持したまま形にできます。実機に取り付けて荷重をかける評価をしたい段階では、形の自由度より物性の近さが効いてきます。

ゴムの切削加工について、よくいただくご質問は?

作れる形状、精度、少量対応、材料の選択肢についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。

どんな形状なら切削で作れますか?
工具が届く外側の形状であれば作れます。逆に、工具が届かない内側の形状や中空構造は切削では作れません。その場合は3Dプリントや金型成形をご提案します。

ゴムでも精度は出ますか?
ゴム板からの切削であれば、嵌合部もスムーズな高精度が出せます。3Dプリントと比べると、精度と強度の両方で有利です。

1個だけでも作ってもらえますか?
「金型を作るほどでもないが、高品質なものを1個からほしい」というニーズに最適な方法です。多品種少量生産を得意としており、1点からのご相談も承っています。

材料の選択肢は広いですか?
ゴムに関しては、切削のほうが材料の選択肢が多くなります。3Dプリントは造形用の材料に限られるためです。

パッキンやギヤも作れますか?
機能を要する部品、機能評価、ギヤ、摺動部品、高圧部品、パッキンは切削加工が適した用途です。形状と数量をうかがったうえでご提案します。

相談するとき、何をそろえればよいですか?

形状が分かるもの、使用条件、必要数量の3つがあれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。内容に応じてご提案します。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

形状の可否だけを先に知りたい場合も、その旨をお伝えいただければ判断だけお答えします。「作れるかどうか」が分かれば、社内で次の検討に進めるという場面も多いためです。図面の一部だけ、あるいは写真だけでも構いません。

材料の選び方と寸法表を先に確認する

SF-JOINT総合カタログ・施工要領・Oリング寸法表などの資料をご用意しています。会社名とご連絡先のご入力でダウンロードいただけます。

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