ものづくりプレス

2023-09-04

ゴムのシート加工のメリットデメリット

板状のゴムシートはそのまま使われるだけでなく、加工をほどこして幅広いゴム製品の製造ができます。

ゴムの加工はシート以外にも方法があるため、製作したい製品の種類や量、コストなどを踏まえて適切な方法を選ぶのが重要です。

ゴムシートのメリット、デメリットと加工方法、用途を解説します。ゴムの加工方法選びにぜひ役立ててください。


ゴムシート

ゴムシートのメリットデメリット

ゴムシートとは、原材料のゴムに薬剤を混ぜ、加硫したシート状のゴム素材を指します。ソリッドのほか、ゴムを発泡させたゴムスポンシートや樹脂系のスポンジシートもあります。

シートとしてそのまま敷物や緩衝材として使われるほか、カットや削り出しによってゴムシートからゴム製品を作ることも可能です。

ゴムシートのメリット

ゴムシート加工には、以下7つのメリットがあります。


・ゴム材質の種類が豊富に選べる

・指定サイズにカットできる

・シートとしてそのまま使うほか、加工もできる

・加工する場合は金型が不要

・シートからの加工は少ロットも対応できる

・短納期で製作・加工ができる

・シートの製造および加工コストが安い


ゴムシートを製造する際、以下の豊富なゴム材質から選べます。


・ニトリルゴム(NBR)

耐油性や耐摩耗性に優れ、シール部品によく使用されます。他の素材と比較すると圧縮永久歪み、引張強さもあり重宝されていますが、ゴム構造体に不飽和結合を含むため耐候性が悪く、直射日光で劣化してしまいます。


・天然ゴム(NR)

ゴムの木の樹液から採る一般的なゴムです。タイヤや履物、ホース、ベルトなどに用います。


・クロロプレンゴム(CR)

接着しやすいため二次加工向きのゴム。耐候性、耐油性などに優れ、バランスの取れた材料です。


・合成天然ゴム

人工的に石油化学によって作られたゴム。天然ゴムの代用品として用いられます。


・ブタジエンゴム

弾性や耐摩耗性に優れたゴム。自動車、航空機用タイヤ、履物、防振ゴム、プラスチック改良剤などに用いられます。


・シリコーンゴム(Q)

高度の耐熱性や耐寒性、耐候性、耐油性、耐オゾン性に優れたゴム。医療関連機器、食品関連機器部品、Oリング、シーリング剤、調理用品、食器、パッキン、ガスケット、工業用ロール振動ゴムなど幅広く使用されます。引裂き強さ、引張強さ、耐摩耗性が悪いところが欠点だが、こうした欠点を改善した高引裂きグレードも存在します。


・ウレタンゴム(U)

機械的強度や耐油性、耐摩耗性に優れたゴムで工業用ロール、ソリッドタイヤ、ベルト、高圧パッキンなど大きな力がかかるものに用います。


・フッ素ゴム(FKM)

耐熱性が最も高く、耐薬品性、耐溶剤性、耐オゾン性、耐油性も他のゴムと比較すると非常に優れている万能なゴムです。ミサイル、ロケットなどのパッキン、過酷な条件下での使用が前提とされるシール材、化学工場の耐食パッキン、化学プラント、ガスケット、半導体関連機器などに幅広く用いられます。こうした用途にはグレードの選定が必要となり、コストは非常に大きくなります。


製造したゴムシートはそのまま使うだけでなく、カットまたは削り出し、研磨加工によりゴム製品が作れます。1個から製作できるため、改良が多いなどの少ロット品や試作品製作もできます。金型を使用せずに加工できるので、金型の製作費用や期間が不要です。加工納期が短く、コストも安く加工ができます。


あわせて読みたい

工業向けゴム素材の種類と特性・用途をわかりやすく解説


ゴムシートのデメリット

ゴムシート加工には、以下6つのデメリットがあります。


・ゴムシートは限られた色しかない

・規格外ゴムシートは受注生産または対応不可

・特殊なゴムシートの製造はロットが必要な場合がある

・ゴムシートからの加工は複雑な形状の加工ができない

・軟質素材は加工ができない場合がある

・大量生産には向いていない


ゴムシートは黒などの決まった色しかありません。カラーでバリエーションをつけたいゴム製品を作りたい場合には、ほかの手段をとることになります。規格外または特殊なゴムシートを製造する場合は少量の対応が難しく、1つのみの製造ができずロット製造になる場合があります。


一般的には、ゴムシート加工はほかの加工方法よりも精密さに欠けるのもデメリットです。複雑な形状をしたゴム製品の用途には使えません。その欠点を補う場合、加工職人の技術が必要となります。また、大量生産にも向いていません。


ゴムシートの用途

ゴムシートおよびゴムシートからの加工品は以下の用途に用いられています。


・敷物

・緩衝材

・パッキン

・シール材

・断熱材

・試作品などの多品種少量加工


ゴムの種類や混ぜる薬品を選ぶと、導電性、耐ガソリン、難燃性など用途に応じた機能も付帯できます。代表的な機能性ゴムシートには、以下のものがあります。


・導電性ゴム

・耐ガソリン用ゴム

・難燃性ゴム

・防振ゴム

・非粘着複合シート

・耐摩ゴム

・ゴムマグネット

・食品衛生対応ゴム

・落橋防止用緩衝材


など

ゴムシートの一般的な加工方法

ゴムシート加工は幅広いゴム製品を製作できる一方、複雑な形状のものや大量生産には向いていません。製造する製品に応じて、ゴム加工方法を選ぶのが重要です。ゴムシート加工の一般的な加工方法は、以下の5つがあります。

・切削加工

・ウォータージェット加工

・抜き加工

・接着加工

・複合加工

それぞれ解説します。

切削加工

切削加工とは、ゴムの素材を刃物で切る或いは砥石で削ることで形を整える加工方法です。ゴム板裁断機やゴム板スリッターマシン、コンタマシンなどを使うほか、手作業で行う場合もあります。切削加工には以下の特徴があります。


・金型不要で加工できる

・試作品など少ロットにも対応できる

・大量生産には向いていない


切削加工には以下の種類があります。


・プロッタ加工

・旋盤加工


あわせて読みたい

·    ゴムの切削加工が試作に最適な理由とメリット・デメリット

·    ゴム切削の特徴とメリット・デメリット|加工方法や対応硬度とは


プロッタ加工


CADで入力した図面データをもとに、プロッターマシンの高精度センサーのカッターで材料をカットする加工方法です。以下の特徴があります。


・複雑な形状にも対応できる

・加工断面がきれい

・加工速度が早い(CADデータがあればより早い)

・少ロットにも対応できる

・丸みのある形状には不向き

・基本的には2次元加工になる


旋盤加工


回転するゴム素材に刃をあてて成形する加工方法です。NC旋盤やフライス旋盤、ロクロなどの加工機械を使用します。


以下の特徴があります。


・丸みやロール形状の加工が可能

・ほとんどのゴム素材に対応

・加工には技術が必要


ウォータージェット加工

ウォータージェット加工とは、水を使用した加工方法です。300〜600MPaの圧力の水を直径φ0.05〜2.5mmの極小径の穴から通して発生させるウォータージェットを加工に用います。


ウォータージェット加工は、水のみで加工する「ウォータージェット加工」と、アグレシブと呼ばれる研磨剤を混ぜた水で加工する「アグレシブジェット加工」があります。ゴム加工にはウォータージェット加工が用いられます。


ウォータージェット加工には、以下の特徴があります。


・ゴムや樹脂のほか、金属や複合材など幅広い素材の加工に使える

・熱に弱い素材も加工できる

・熱による溶解などがなく、切断面にカット痕が残る

・複雑な形状の加工もできる

・アグレシブジェット加工はコストが高い、騒音が大きい


抜き加工

抜き加工とは、抜型を裁断機やプレスにセットし、打ち抜いて加工する方法です。抜型は「ビク型」「トムソン型」があり、ベニヤ板にレーザー加工で溝を掘り、同じ形状に折り曲げた刃を打ち込んで製作します。抜き加工には以下の特徴があります。


・一度型を作れば次回も転用できる

・型の面付面を多くすると、一度に同じ形状のものを複数作れる

・切削加工よりもコストを抑えられる


接着加工

ゴム接着剤を使ってゴムとさまざまな素材を接着させる加工方法です。接合物には、スポンジ、樹脂、金属(鉄、SUS、アルミ、銅、鉛)、コンクリート、木などがあります。接着加工は、以下の用途で用いられています。


・防食対策

・耐摩耗性・耐薬品性などの向上

・汚れ対策と緩衝

・音の緩衝(騒音対策)


など


参照元:ゴムの接着加工|札幌ゴム


複合加工

さまざまな加工方法を組み合わせてゴム単品を加工するのが、複合加工です。切断や裁断、接着などの加工方法を用います。


・特殊加工にも対応できる

・すべてのゴム素材に対応

加工品の用途やコスト、量に合ったゴム加工方法を選ぼう

ゴムシート加工はシートそのままで製品として用いられるだけでなく、ゴム製品を少ロット、低コスト、短納期で製作できるメリットもあります。ゴムシート加工は幅広い加工ができますが、一部の形状の加工はできない、大量生産には向かないデメリットもあります。

製作したいゴム製品の用途や形状、量やコストに合ったゴム加工方法を選ぶのが重要です。


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