ものづくりプレス
2023-09-07
アクリルゴムの特徴と用途・アクリル樹脂の違い
高温環境ですぐれた性能を発揮するアクリルゴムは、家庭用品や日用品のほか、工業用品にも多く用いられています。ほかの合成ゴムよりも劣る性能がある一方、いろいろなシーンで活躍する使い勝手のよいゴムと言えます。 ゴム製品の加工や製造、試作や量産を考えているときには、用途に応じたゴム原料を選ぶのが重要です。ゴム原料の選択肢となる、アクリルゴムの特徴、長所と短所、用途、そしてアクリルゴムとアクリル樹脂との違いを解説します。アクリルゴムを使用した製品作りの参考にしてください。
アクリルゴムの特徴
アクリルゴム(ACM)とは、化学構造がアクリル酸エステル共重合体のアクリル酸アルキルエステル系ゴムの総称です。乳化重合によって合成され、合成にはアクリル酸エチルまたはアクリル酸ブチルを使用します。 アクリルゴムは性質によるメリットとデメリットがあります。アクリルゴムを用いる場合は、ゴム製品や加工の用途に合致しているかを確認するのが重要です。次に、アクリルゴムの長所と短所をそれぞれ解説していきます。
アクリルゴムの長所
アクリルゴムには、以下の長所があります。
· 耐油性にすぐれている(とくに高温下)
· 耐熱性にすぐれている
· 耐候性、耐オゾン性にすぐれている
· 摩耗性や屈曲亀裂性も問題ない
アクリルゴムは、ガソリンや軽油などの耐油性が高いのが特徴です。耐油性そのものはフッ素ゴムよりも劣りますが、耐熱性にもすぐれているため、とくに高温環境での高い耐油性を発揮します。フッ素ゴムほどの性能は必要ないシーンなどで、多く用いられています。 アクリルゴムは主鎖に二重結合を含まない構造体を持っています。
そのため、主鎖が直射日光やオゾンによる影響を受けず、劣化をしにくいのが特徴です。耐候性や耐オゾン性にすぐれています。摩耗性や屈曲亀裂性もとくに問題がないため、全体的に劣化に強い合成ゴムです。
アクリルゴムの短所
アクリルゴムには、以下の短所があります。
· 耐炎性はあまりよくない
· 寒さに弱い
· 耐薬品性が低い
· 耐溶剤性が低い
アクリルゴムは、耐熱性があり180℃までの環境下で使用できます。ただし、耐炎性は低いので注意が必要です。また、使用可能温度は-15℃までで、寒さに弱くなっています。
ガソリンや軽油などの油に対する抵抗力は高い反面、アルコールやトリクレンなどの各種溶剤、薬品への耐性は低くなっています。また、耐油性が良いとはいえ、油には様々な薬品が含まれているため、油の含有量によっては油負けしてしまうことがあります。
そのため、使用する環境や用途によっては使用できない場合がありますので、たとえば油の浸漬試験を実施するなど事前の確認・対策が必要です。次にどのような用途にアクリルゴムが適しているかについて、解説します。
アクリルゴムの用途
アクリルゴムは以下の用途で用いられています。
· 自動車部品のシール
· 自動車のトランスミッション
· 自動車のクランクシャフト
· シールの材料
· パッキン
· ガスケット
· ホース
· バルブシステム
· 接着剤
· 被膜の役割
アクリルゴムは、おもに自動車関連や土木関連事業、工業製品で多く活用されています。合成ゴムのなかでも知名度が高く、また高温環境下でのすぐれた耐油性を活用し、今後も安定した需要が見込まれています。
アクリルゴムとアクリル樹脂の違い
アクリル酸系原料を用いたものには、「アクリルゴム」のほか「アクリル樹脂」があります。
熱による変化の違い
アクリルゴムとアクリル樹脂の大きな違いは、熱を加えて変化する性質です。
アクリルゴムは熱を加えると固まる熱硬化性ゴムです。硬化したあとは、ふたたび熱を加えても溶けません。一方アクリル樹脂は、熱を加えると溶ける熱可塑性樹脂です。そのため、熱可塑性は熱硬化性と異なり、条件を満たせば再利用が可能となります。
物性の違い
アクリルゴムは弾性がありますが、アクリル樹脂には弾性がありません。アクリル樹脂はゴムに比べると成形しやすく、コストも安価であることが多いですが、非結晶性のプラスチックなので薬剤が浸透しやすく、耐薬性がないことが欠点です。
たとえばアルコールで表面を拭くと、負荷に耐え切れず割れてしまいます(ケミカルクラック)。
熱可塑性エラストマー
ゴムと樹脂の中間の性質を持っているのが、熱可塑性エラストマーです。
「エラストマー」とは弾性のあるものの総称で、ゴムも分類されます。その中でも、熱を加えると溶ける性質を持っているものを熱可塑性エラストマーと呼びます。熱可塑性エラストマーには以下の特徴があります。
· 比重が小さい
· 熱で溶けるため再利用ができる
· 加工時の成形や着色がしやすい
· コストが安い
熱可塑性エラストマーはメリットが多い一方、強度はゴムよりも劣り、耐油性、耐熱性に乏しく、ゴムのような復元力(元に戻ろうとする力)もありません。そのため、強度が必要なパッキンなどの加工品ではゴムが使用されています。材料を使用する用途や加工品によって、適した材料を選ぶのが重要です。
高熱環境下で油とともに使うならアクリルゴムが選択肢に
アクリルゴムは耐油性と耐熱性が高いため、高温環境下ですぐれた耐油性を発揮する合成ゴムです。二重結合を構造に持たないため、耐候性や耐オゾン性が高いのも魅力です。
一方で一部の溶剤や薬品、寒さや炎への耐性が低い点に注意しなければいけません。アクリルゴムのほかにアクリル樹脂がありますが、熱を加えて硬化するか、溶けるかの違いがあります。
耐油性と耐熱性の高さから、アクリルゴムは自動車関連製品をはじめ、土木事業や工業製品に多く用いられています。ホースなどの日用品のなかでも、アクリルゴムが使われているものもあります。
とくにアクリルゴムは合成ゴムのなかでも自動車産業のような業界ではメジャーな存在です。すでに工業製品に用いるゴムのなかでは、地位を築いていると言えるでしょう。今後も安定した需要のあるアクリルゴムは、自動車や工業用ゴムなどを中心とし、いろいろなゴム製品加工に向いた合成ゴムです。
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