ものづくりプレス

2024-01-09

プラスチックの耐熱性

近年では、金属の代替素材としても注目を集める耐熱性の高いプラスチック。

350℃以上の高温環境下の長時間使用にも耐え得るスーパーエンプラも開発されています。

この記事では、プラスチックに求められる耐熱性の種類や各素材の耐熱性能判定方法、耐熱温度の意味について解説します。

耐熱プラスチック

プラスチックの耐熱性とは

プラスチックの耐熱性は、原料樹脂の種類によって大きく異なります。

構成しているポリマー分子の結合エネルギーが強ければ強いほど分子連動が起こりにくくなるため、耐熱性に優れたプラスチックとなります。

また、プラスチックには、「化学的耐熱性」と「物理的耐熱性」の2種類の耐熱性があり、使用時にはどちらも考慮する必要があります。

化学的耐熱性

プラスチックを高温環境下で長時間保持すると、熱によりポリマー分子の結合が分解されてしまうため、重量減量や炭化、酸化などの熱劣化が見られます。 そして一度熱劣化したプラスチックは、元には戻りません。


化学的耐熱性とは、高い温度でもこのような変化や劣化が起こらず、連続使用できる程度を指します。

中でも「C-F結合(炭素⁻フッ素結合)」や「Si-O結合(シロキサン結合)」などの合成樹脂は、結合エネルギーが高く熱劣化しにくいため、このような結合を持つフッ素樹脂やケイ素樹脂は化学的耐熱性が高いプラスチックと言うことができます。

物理的耐熱性

一般に高温環境下では、プラスチックの軟化や溶融により機械的強度が著しく低下する傾向があります。この変化の程度が物理的耐熱性で、耐熱温度とほぼ同義と言うことができます。


物理的耐熱性の高さは、金属の代替素材として使用する時などに特に重要視するポイントのひとつでもあり、用途に応じて以下のような短期間または長期間の耐熱性を考慮しなくてはなりません。


▼短期間の耐熱性(耐熱軟化性)

耐熱温度に達しても、短時間であれば軟化せずに使用できる短期間の耐熱性です。

荷重たわみ温度やビカット軟化温度などが評価基準になります。


▼長期間の耐熱性 

高温下で使用し続けても力学的特性が変化せず、電気的特性なども保持し続けることができる性質です。

軸受や歯車のような機械部品など、長期間の耐熱性が重要視されるプラスチックなどを評価する際に考慮されます。


一般的には、短期間と長期間の耐熱性には関連性がみられ、短期間の耐熱性が低ければ、長期間でも低い傾向にあります。

しかし、フッ素樹脂(PTFE)のように短期間の耐熱性がそれほど高くなくても連続使用温度が高く、長期間でも優れた耐熱性を示すプラスチックもあります。

耐熱温度と融点

耐熱温度は、物体が化学的・物理的変化を起こさない限界の温度のことですが、融点はその温度を超え、物体が溶融し始める温度を指します。


例えば、家庭で使われるプラスチック製品には耐熱温度が記されています。これは、その製品の化学的耐熱性や物理的耐熱性を損なわずに使用できる温度で、荷重たわみ温度や連続使用温度などが基準になっています。 もし融点を耐熱温度とした場合、その限界値に達した時に溶融することになります。


工業用プラスチックにおいても耐熱性は極めて重要ですが、この場合は単に耐熱温度として表記されず、多くの場合で連続使用温度や荷重たわみ温度が記されます。

耐熱性の判定方法

合成プラスチックの「耐熱性」の判定には、主に以下の3つの項目があります。

外観

熱によりどのように変化するかを、目視や機械を使って観察します。  


主な項目には、ふくれ、ひび割れ(クラック)、変形(曲がり、ねじれ、反り)、変色、失透(透明性が失われること)などがあります。

短期耐熱温度(耐熱変形性)

高熱環境下で外部から圧力を加えた際の形状の変化や、寸法を維持する抵抗力を測定するために、耐熱性を数値化する方法です。



主に以下のような試験方法があります。


▼荷重たわみ温度試験

板状のプラスチックの両端を固定し、中央に荷重をかけたまま温度を上げていき、規定のたわみ量に達した時点の温度を計測します。

あらゆる用途に使用するプラスチックに適用し、熱による変形が起こる温度や、高温時の剛性・弾性率を知ることができます。


▼ビカット軟化温度試験

荷重たわみ温度と同じく、短期的な耐熱温度を測定するための試験です。

固定したプラスチックに針状の圧子で圧力をかけたまま昇温し、表面から1mmの深さになった時点の温度を軟化点として計測します。

荷重たわみ温度試験と同じく、すべての用途のプラスチックに適用できます。


▼ヒートサグ試験

板状プラスチックの一端を固定し、一定温度下で規定時間保持した後に、固定してない方の端のたわみ量を計測する方法です。

主に、オンラインで焼付塗装を行なう自動車向け外板用プラスチックの試験に使用されます。

長期耐熱性

プラスチックの熱劣化や、電気用品の絶縁体の温度の上限値を判定します。試験期間は数万時間におよびます。

その他

電子部品の実装時に使用する半田ごての熱に耐えられるかを計測するはんだ耐熱性試験、プラスチックの燃えにくさを調べる難燃性(燃焼性)試験などがあります。

耐熱性を高めたエンプラ、スーパーエンプラ

プラスチックの中でも、特に強度や耐熱性を高めたものをエンジニアプラスチック、通称エンプラといいます。

耐熱性に関しては、一般に100℃以上の環境で長時間耐えることができ、さらに150℃以上の耐熱性を持つものはスーパーエンプラ(スーパーエンジニアプラスチック)と呼ばれます。


エンプラでは、ポリカーボネート(PC)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、またスーパーエンプラでは、ポリベンゾイミダゾール(PBI)やポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)などが特に耐熱性に優れており、中でもポリベンゾイミダゾール(PBI)は連続使用温度350℃と最高の耐熱性を有します。

プラスチックの耐熱性は使用環境を考慮して

近年では、高温環境下でも安心して長期間使用できる耐熱性や難燃性に優れたプラスチックの需要が高まっています。そのため、高品質なプラスチック製品づくりには、用途や目的に応じた適切な耐熱性を持っていることも、素材選びの重要な要素のひとつです。


プラスチックの耐熱性に関する相談や質問は、経験と実績が豊富な当社までご連絡ください。

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