ものづくりプレス
2023-10-07
パーオキサイド加硫とは
ゴム原料に弾性などの特性を与え、ゴム材料として使用できるようにするには加硫が必要です。その方法にはいくつか種類がありますが、そのひとつがパーオキサイド加硫です。 この記事では、パーオキサイド加硫の特徴に加え、長所と短所、硫黄加硫やEPDMとの違いについて解説します。
パーオキサイド(PO)加硫
加硫は、ゴム原料に薬剤などを配合して熱硬化させ、分子を結合させるために必要な工程です。これを行なわないと、ゴムに強度や復元性、弾性を付与することができません。
一般に、加硫には硫黄が使われることが多いですが、代わりに有機過酸化物や有機アミン化合物、金属酸化物などを用いた加硫をパーオキサイド加硫(PO加硫)と言います。
分子間に入り込んで分子をつなぐ硫黄加硫とは異なり、パーオキサイド加硫はゴムの分子を分解し、分子同士を直接つなぐのが特徴です。そのため、硫黄加硫にはない特性をゴムに付与することができます。
また硫黄加硫の場合、硫黄成分が表面に浸出し、ほかの物質に腐食などの影響を与える可能性がありますが、パーオキサイド加硫ではこのような問題は起こりません。
パーオキサイド加硫の長所と短所
パーオキサイド加硫には、主に以下の長所があります。
・硫黄成分の影響を受けない
・金属やプラスチックなどへの汚染性が少ない
・高い電気絶縁性
・優れた耐圧縮永久ひずみ性、耐熱老化性
・短い加硫時間
・スコーチの危険性が少ない
・高い透明性
・安全衛生性が高い
硫黄加硫のゴム製品は、表面に浮き出た硫黄が銅などの金属を腐食させる原因になることがあります。例えば銅線のゴムカバーの場合では、通電しなくなる可能性があります。パーオキサイド加硫製品を使用することで、このような影響を受けなくなります。
さらにゴムの分子を直接結合させるパーオキサイド加硫は、硫黄加硫よりも耐熱性、耐労政、ひずみ性などに優れた合成ゴム製品をつくることができます。さらに電気絶縁性も高くなるなど、ゴム原料の性質や特性を引き上げるためにパーオキサイド加硫が選ばれることもあります。
しかしパーオキサイド加硫はいい点ばかりではありません。
以下のような短所も持ち合わせています。
・動的特性に劣る
・引張強度や引裂抵抗が低い
・加硫調整が困難
・プルーミングが起こりやすい
・ブチルゴム(IIR)の架橋不可
・直接蒸気加硫や熱空気加硫は不可
・強い臭気を発する
・貯蔵や取り扱いが難しい
・配合コストが高い
パーオキサイド加硫と硫黄加硫
パーオキサイド加硫と硫黄加硫には、それぞれ特徴があります。
どのような違いがあるのかを比較した表が以下になります。
|
|
パーオキサイド加硫 |
硫黄加硫 |
|
耐熱性 |
優れる |
劣る |
|
耐ひずみ性 |
優れる |
劣る |
|
電気絶縁性 |
優れる |
劣る |
|
加硫時間 |
短い |
長い |
|
引張強度 |
劣る |
優れる |
|
引き裂き抵抗 |
劣る |
優れる |
|
汚染性 |
少ない |
多い |
|
臭気 |
多い |
少ない |
|
加硫の調整 |
難しい |
かんたん |
|
配合コスト |
高い |
低い |
|
接着処理 |
できない場合がある |
できる |
また、加硫させたいゴム原料によって、適切な加硫方法は異なります。代表的なゴム原料が、どの加硫方法に適するかを一覧にしました。
|
|
パーオキサイド加硫 |
硫黄加硫 |
|
天然ゴム(NR) |
〇 |
〇 |
|
ブタジエンゴム(BR) |
〇 |
〇 |
|
スチレン・ブタジエンゴム(SBR) |
〇 |
〇 |
|
ニトリルゴム(NBR) |
〇 |
〇 |
|
エチレン・プロピレンゴム(EPDM) |
〇 |
〇 |
|
ブチルゴム(IIR) |
✕ |
〇 |
|
クロロプレンゴム(CR) |
〇 |
〇 |
|
アクリルゴム(ACM) |
〇 |
✕ |
|
シリコンゴム(Q) |
〇 |
✕ |
|
フッ素ゴム(FKM) |
〇 |
✕ |
以上のように、パーオキサイド加硫と硫黄加硫が持つ特性を見極め、使用するゴム原料や用途に合った加硫方法を選ぶことが、優れた製品づくりにつながります。
パーオキサイド加硫とエチレン・プロピレンゴム(EPDM)
エチレン・プロピレンゴム(EPDM)は、耐オゾン性、耐熱性、耐候性、耐薬性に優れた合成ゴムです。その性質から、自動車用品や電線などに多く用いられています。
EPDMは硫黄加硫、パーオキサイド加硫のいずれも可能です。しかしパーオキサイド加硫を用いた場合、以下の点において硫黄加硫よりも優れた性能を発揮します。
・耐熱老化性
・耐圧縮永久ひずみ性
・電気絶縁性
・安全衛生性
・汚染性が少ない
またEPDMはゴム構造に不飽和基を持っています。ほかのポリマーと共加硫する際には、硫黄加硫よりもパーオキサイド加硫のほうが均一に加硫できるメリットもあります。
ゴム原料にあった適切な加硫方法を選ぼう
パーオキサイド加硫の特徴や長所、短所、硫黄加硫との違いについて解説しました。 硫黄加硫にはない優れた点がある反面で、配合調整が難しい、伸びが悪くなる、などのデメリットがあることもおわかりいただけたと思います。 ゴムの特性を引き出すのに必要な工程だからこそ、それぞれの特徴を理解し、原料に合った適切な硫方法を選ぶことが重要です。
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