ものづくりプレス

2023-12-16

シリコンゴムの特徴と加工・成形方法

その優れた性質から、日用品はもちろん、工業用や医療用製品などに幅広く用いられているのがシリコンゴムです。加工がしやすく、多様な方法に対応できるのもその理由のひとつです。
この記事では、シリコンゴムの利点や欠点、加工方法、加工後の用途について解説します。

シリコンゴム

シリコンゴムの特徴

シリコンゴムは、ケイ素とも呼ばれるシリコンを原料につくられた化合物である「シリコーン樹脂(ケイ素樹脂)」のうち、ゴム状の合成樹脂を指します。正式名称は「シリコーンゴム」ですが、一般に「シリコンゴム」と呼ばれることの方が多いようです。この記事も、シリコンゴムと表記します。耐熱性をはじめとした数々の耐性能に加え、安全性の高さも特徴です。


これらの理由により、身の回りの多くの製品に使用されているシリコンゴムについて、詳しく解説します。

◇シリコンゴムの利点

シリコンゴムは、身の回りの多くの製品に使用されているだけあり、以下のような長所を備えています。


▼耐熱性と耐寒性を両立
シリコンゴムは、150℃程度まで性質がほとんど変化しません。中には約250℃の耐熱能や、短時間であれば350℃近くまで耐えられる性能を持つ種類もあるなど、優れた耐熱性が特徴です。さらに、マイナス60℃まで耐えることができる耐寒性も兼ね備えており、温度変化の激しい過酷な環境下でも性能を維持することができます。


▼高温下での耐油性が高い
耐油性の高い有機系ゴムに、ニトリルゴム(NBR)やクロロブレンゴム(CR)があります。100℃以下ではこれらのゴムの方が耐油性に優れていますが、それ以上の温度になるとシリコンゴムの方が勝ります。


▼撥水性、耐水性が高い
撥水性に優れているため、水温に関係なく、長時間浸けた状態でも吸水率はわずか1%ほどとされています。また耐スチーム性も高く、常圧下でのスチームであれば、触れてもほぼ劣化しません。しかし高圧スチームなどに対しては、影響を受けることがあります。


▼非片着性が高い
シリコンゴムは生理的不活性が高く、非粘着性の素材です。剥離性に優れているため、型取りなどをしても張り付きにくいメリットがあります。


▼一定の薬品や溶剤への耐性がある
酸、塩基、塩類に対する耐薬品性と耐溶剤性を持っています。特に極性有機化合物への耐性が高く、アルコールやアニリン、希アルカリ、希酸、などに触れても15%ほどしか膨潤しません。


▼耐候性、耐オゾン性が高い
耐候性が高く、コロナ放電によるオゾンにもほぼ影響を受けない耐オゾン性の高さを持っています。そのため、屋外で使用しても経年による劣化が少ないのが特徴です。


▼安全性が高い
化学的な安定性が高く、人体に対しても無害でアレルギー反応もほとんどありません。万が一シリコンゴムが体内に入った場合でも、吸収されずに排出されます。シリコンそのものに関しては、安全な素材と言えます。

◇シリコンゴムの欠点

シリコンゴムは使用に際して利点の多い素材ですが、少なからず欠点もあります。

▼塗装や接着が難しい
シリコンゴムは離型性が高く非粘着であり、また撥水性もあることから、完成品への塗装による色付けや、一般的な接着剤や両面テープでの接着が困難です。ただし、着色については加硫前の硬化していない段階で顔料を加える、また接着の場合は特殊な接着剤を用いるなどの対処を行なうことで、いずれも可能です。


▼力学的性質が劣る
一般的なシリコンゴムの引き裂き強度は、天然ゴムを含むほかのゴムよりも劣っています。そのままの状態での引き裂きは困難ですが、キズなどが付くと簡単に裂ける傾向があります。このほか、引張強さ、耐摩耗性なども低めです。


▼熱膨張やガス透過が大きい
シリコンゴムには熱膨張やガス透過が大きいという特徴があります。これらを生かした用途もあるため、一概に欠点とは言えません。

シリコンゴムの加工・成形方法

シリコンゴムはいろいろな加工・成形方法が用いられています。
それぞれの加工・成形方法を解説します。

◇ウォータージェット加工

狭い穴から水を高圧で通すことで発生するウォータージェット(水噴射)を使った加工方法です。
切断面がきれいに仕上がるため、パッキンなどの製造に向いており、また少ロットの場合はコストを抑えることができます。


しかし、極端な肉薄・肉厚の製品加工には不向きです。

◇金型成形(プレス、射出、押出など)

シリコンゴムは、以下のような金型を使った成形方法にも対応しています。

▼プレス成形(コンプレッション成形)
金型にシリコンゴムを入れ、上下から押し付けて成形する方法です。抜き型、絞り型、圧縮型など金型の形が豊富にあり、複雑な形状にも対応できます。


▼射出成形(インジェクション成形)
シリンダーの中にシリコンゴム原料を入れ、加熱して液状にした後に金型へ射出し、成形する方法です。注射器の原理と似ているため、インジェクション成形とも呼ばれています。金型次第でコンプレッション成形よりも自由な形状の成形が可能で、また金属や樹脂などの異素材と一体化させた複合部品も製造できます。


▼押出成形
口金からシリコンゴム原料を押し出して成形する方法です。パイプやホース、シートなどのように、断面がシンプルで長尺の製品の成形に向いています。

◇切削加工

ワークを切ったり削ったりする加工方法です。金型を必要とせず、製造にかかるコストや期間を短縮できるメリットがあるほか、試作品の作成にも有用です。
しかし、一度に加工できる数量が限られているため大量加工には不向きで、少ロット品の加工に適しています。また柔らかすぎる素材に対しては、あまり用いられません。


切削方法には、CADで作成した図面に沿って加工する方法、旋盤やNCマシニングを用いた方法、レーザー加工、手作業などいろいろな技術がありが、ゴムにおいては弾性体であるため、機械のプログラム通りの加工では寸法が出にくくなります。

◇抜き加工

シート状のシリコンゴムを、刃物を装着した抜き型を使ってプレス機で打ち抜く方法です。
パッキン、Oリング、カバー、シールなどの製造に向いています。


金型が不要で、成形形状によっては大量生産も可能ですが、寸法精度に劣ります。

◇接着加工/溶着加工

シリコンゴムは離型性が高く、非粘着の性質を持っています。

一般的な接着剤やテープなどでは困難なため、特殊な技術や接着剤が使われています。

シリコンゴムの接着加工・溶着加工には以下の方法があります。


▼接着剤を使用した接着
特殊な接着剤と、プライマーという接着剤をなじませるための下塗り剤を使ってシリコンゴムを接着する方法です。接着剤を選ぶことで、シリコンゴム同士だけでなく、シリコンゴムと違う材質との接着もできます。このほか、シリコンゴムの表面を改質することで、一般の接着剤が使用できる場合もあります。


▼両面テープを使用した接着
接着剤と同様に、非粘着性のシリコンゴムに一般の両面テープを使って接着を試みても、すぐにはがれてしまいます。この問題を解決してくれるのが、シリコンゴム専用の両面テープです。片面にシリコンゴムに対して強い粘着性を持つ接着剤が使用されているため、はがれにくくなっているのが特徴です。ただし、使用する面を間違えると接着しないので注意が必要です。またシリコンゴムの表面改質により、一般の両面テープが使用できることもあります。


▼溶着
シリコンゴムの接着面を溶かし、対象素材と同化させて溶着させる方法です。溶剤や溶着剤を使用する方法と、特殊なエネルギーが発する熱で溶かす方法があります。後者の場合、シリコンゴムの性質を保てるだけでなく、薬剤を使用せずに素材同士を一体化させるため、より強い接着力が期待できます。しかし一方で、シリコンゴムは熱を加えると硬くなる熱硬化性樹脂のため、性質が変化するおそれがあり、高い技術力が必要とされます。

以上のほか、耐摩耗性、耐衝撃性、耐薬品性や腐食防止など、機能性を向上させる目的で、金属素材にゴムを接着剤などで張り付けるライニング加工にもシリコンゴムは使用されています。

シリコンゴム加工の用途

機能性に優れ、人体にも無害な性質を持つシリコンゴムは、工業用、医療用、一般家庭用などのさまざまな製品に加工されています。


・電気・電子部品
・医療・生体、医療機器部品
・食品機械部品、設備部品
・シーリング部品(パッキン、Oリング、ヘルールガスケットなど)
・配管部品(チューブ、ホースなど)
・ゴム栓、キャップ
・ゴム紐、ゴムリング
・研究機器部品(ゴムシート、スポンジシート、マットなど)
・コンベア用ベルト
・キャスター部品および車輪
・シュート、ダクト
・額縁パッキン
・ペット用品(首輪ホルダー、歯ブラシなど)
・キッチン用品(へら、離乳食食器、コースター、ランチョンマット、アイス型、鍋敷きなど)

多くの可能性を持つシリコンゴム

合成樹脂でありながら弾力性があり、また多くの優れた機能や安全性を持つシリコンゴムは、幅広い分野で使用されています。その汎用性の高さから、今後もますます活躍の場が期待されている素材のひとつでもあります。


シリコンゴムに関するお問い合わせやご質問は、以下のお問合せフォームからお気軽に当社までご連絡ください。

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