ものづくりプレス

2023-10-11

ゴムの木は何種類ある? 工業用部品の原料になるのは?

ゴムの木(ゴムノキ)は、天然ゴム資源としてだけでなく観葉植物としても有名で、非常に多くの種類があります。

また天然ゴム資源として有名なパラゴムノキに代わる、新しいゴムの木の種類が注目を集めていることをご存じでしょうか。

当記事ではゴムの木の種類の概要や、観賞用・工業用それぞれのゴムの木について解説します。

ゴムの木

ゴムの木は800種類もある?

ひと言にゴムの木と言っても、すべての種類が天然ゴムの生産用に栽培されているわけではありません。ゴムの木は世界中に800種類以上存在していると言われています。  


むしろ日本では、家庭用の観葉植物として愛用されるゴムの木が多いです。

◇日本で流通しているゴムの木はインドゴムノキ

観葉植物として流通するゴムの木は、ほとんどがクワ科イチジク(フィカス)属の「インドゴムノキ(フィカス・エラスティカ)」と呼ばれる種類です。  


北西インドからマレーシアあたりを原産地としており、自然に生息しているものは直径2m、樹高30~60mにも達します。非常に育てやすい上に外観が個性的なものが多いため観葉植物として有名で、初心者にも人気があります。  


現在ではインドゴムノキを改良した品種が数多く出回っています。中でもインドゴムノキの枝変わり品種(植物の一部分だけが突然変異を起こした品種)である「デコラゴムノキ」が普及しつつあります。


インドゴムノキの種類は、例えばデコラ・トリカラー、アポロ、バーガンディー、アサヒ、ロブスタ、などです。近縁種としてはベンジャミンゴムノキやガジュマルなどがあります。


株を増やしたいときは、挿し木や取り木を行ないます。


▼インドゴムノキを育てるときの日当たり

インドゴムノキを育てるときは、基本的に年間を通して日当たりのよい場所を選びます。日陰で育てることも可能ですが、育ちの良さや成長後の形を考えると、適度に日光に当ててるのが一般的です。  


ただし、いきなり直射日光に当て続けると葉焼けを起こすため、ガラス越しやカーテン越しに置くなどして、遮光しながら育てていきます。  


一方、インドゴムノキは寒さに弱く、最低でも10℃前後の気温が必要です。冬場は室内に移動させ、可能な限り暖かく、かつ日光が当たる場所で育てる必要があります。


▼インドゴムノキの水やりや肥料

インドゴムノキの水やりの頻度は、生育期の春から秋にかけた時期では「鉢土の表面が乾いたら」、休眠期の冬は「鉢土が乾いたら」与えるというイメージです。


生育期には鉢底から水が流れてくるくらい、たっぷり水を与えます。ただし受け皿に溜まった水は根腐れなどの病気の原因となるので、こまめに捨てましょう。  


成長が止まる休眠期はできるだけ乾燥気味に育てるのが重要です。 鉢土の表面が乾いたのを確認してから、2~3日後に水を与えます。与えた水によってインドゴムノキの根が痛まないよう、気温が高い時間帯を狙うことが大切です。  


より健康に育てたい場合は肥料を利用します。ただし与えすぎると肥料焼け(根が傷むこと)を起こしたり、枝葉が伸びすぎたりするなどの問題が発生します。  


春と秋に各1回、もしくは4月~9月の間に2ヵ月に1回、緩効性肥料を与える程度で十分でしょう。  


▼インドゴムノキの剪定

観葉植物としてインドゴムノキを育てるときも、枝の一部を切って整える剪定作業が重要になります。 剪定しなければ見栄えが悪くなるだけでなく、成長の阻害や風通しの悪さによる害虫の発生などの問題が発生します。  


剪定時期は4~6月、9~10月です。真夏の暑い時期や休眠期の冬に行なうと弱ってしまうので避けてください。  


なお、剪定するとゴムの木から白い樹液(いわゆるラテックス)がにじみ出てきます。人によっては触れるとアレルギー反応を起こすので、剪定作業はゴム手袋やエプロンを装着するなど、肌を守る措置を講じましょう。  


またラテックスは、しばらく放置すると固まって取れなくなるので注意が必要です。

◇日本で消費される天然ゴムはほぼ輸入品

日本では、天然ゴム用のゴムノキの栽培は一般的ではありません。  


実際に日本で消費されている天然ゴムは、ほぼ100%輸入です。

国内生産の天然ゴムは、ほぼゼロを考えて差し支えないでしょう。原則として、十分な高温と降雨がある熱帯多雨気候でないと、ゴムの木が育たないためです。  


天然ゴムの主要生産国かつ輸入先として有名なのは、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、中国などの東南アジア諸国で、世界の総生産量の4分の3以上を占めています。特にタイとインドネシアは二大天然ゴム生産国と呼ばれるほどです。


天然ゴムの主要生産国かつ輸入先として有名なのは、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、中国などの東南アジア諸国で、世界の総生産量の4分の3以上を占めています。特にタイとインドネシアは二大天然ゴム生産国と呼ばれるほどです。  


天然ゴムを採取しているのは、大企業が運営するような大規模な農園(プランテーション)ではなく、小規模な農園(スモールホルダー)です。約85%を占めると言われています。

工業用の天然ゴムはパラゴムノキの樹液から

工業用の天然ゴムは、先述したインドゴムノキの樹液ではなく、パラゴムノキと呼ばれる種類の樹液から作られます。


パラゴムノキは、もともとブラジル原産の高木でした。現在は先述したように、タイやインドネシアといった東南アジアを中心に栽培が行なわれています。  


ちなみにパラゴムノキは樹液だけでなく、パラゴムノキ本体も非常に優秀な天然資源です。炭素を溜め込む性質を持つことから、「二酸化炭素の吸収量>二酸化炭素の排出量」であるカーボンポジティブとして有名です。

◇樹液がとれるのはいつからいつまで?

パラゴムノキから樹液が取れ始めるのは、植樹してから約5年経過後です。その頃あたりから盛んに樹液を出し、植樹から20~25年くらいまで取れ続けます。そこから徐々に生産量が落ちていくというサイクルになります。  



樹液が取れなくなったパラゴムノキは、家具やフローリング用の木材として利用されます。

天然ゴムの作り方

パラゴムノキから樹液を採取して、実際に加工されるまでの流れは次のとおりです。 

 

●パラゴムノキの皮を削る

●パラゴムノキの樹液であるラテックス(NRラテックス)を採取する

●ラテックスをろ過して固形物や不純物を取り除く

●ろ過したラテックスに蟻酸や酢酸などの酸を添加し、型枠に流し込んで固める

●自然乾燥させて生ゴムシート(RSSや技術的格付けゴムなど)を作る

●各工場へ出荷し、外観確認、洗浄後に加工を行なう

天然ゴムを用いて製造される製品

ナフサから人工的に作られる「合成ゴム」が普及した一方、天然ゴムの消費量も増え続けています。実際にタイヤ製造には、一定の割合の天然ゴムと合成ゴムを配合した混合物を用います。  



天然ゴムを用いて製造されるのは、ほとんどがタイヤです。総消費量のうち約70%を占めます。特に天然ゴムは強度やゴム弾性が優れていることから、トラック、バス、その他の産業用車両などの大型タイヤによく使われます。  



タイヤ以外の用途としては、産業用のホースやベルトコンベア、輪ゴムなどが一般的です。

新たな天然ゴムの資源として注目される「グアユール」

パラゴムノキに代わる新しい天然ゴム資源として注目されているのが「グアユール」です。  


グアユールとは、アメリカの南西部からメキシコ北部にかけての乾燥地帯を原産とする低木で、ゴム成分がパラゴムノキによく似た性質を持っています。


しかしパラゴムノキとはまったく異なる土地で栽培できます。  


ただし、グアユールから天然ゴムを生産するためには複雑な工程が必要で、今後の研究開発による実用化が期待されています。 実際に2015年には、グアユール由来の天然ゴムを使ったタイヤが完成しています。

観葉植物や天然ゴム資源として注目のゴムの木

ゴムの木は天然ゴムの資源としてだけではなく、家庭用の観葉植物として広く流通しています。工業用、家庭用ともに、私たちの生活を豊かにする役目を担っているのです。


また最近では新しい天然ゴム資源として期待されるグアユールにも注目が集まり、今後の天然ゴム業界を大きく変えていくものだと予想されます。

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