ものづくりプレス
2023-12-13
切削加工と研磨加工の違い
金属や樹脂などの加工方法に、切削加工と研磨加工があります。いずれも材料の表面を削る加工ですが、方法や目的は異なります。
この記事では、切削加工と研磨加工それぞれの特徴や種類に加えて、切削加工と研磨加工の違いについて解説します。
切削加工とは
切削加工は、刃やドリルの付いた専用の工具を使い、プラスチックや金属などの工作物(ワーク)を削る、切る、穴をあけるなどして不要な部分を取り除く加工方法です。
また砥石の付いた工具を使用して加工することもあり、この場合は研削加工と言います。
いずれも成形に金型を必要としないため初期コストを抑えることができ、1個から加工が可能です。形状の柔軟性や仕上がりの精度が比較的高いだけでなく、機械や工具の対応範囲内であれば、工作物の厚みや大きさを問わないというメリットがあります。
しかしその反面で大量生産には不向きであり、ほかにも切りくずが大量に発生する、加工に要する時間が長めである、などの問題があります。
さらに手動の機械を使用した場合では、作業者の技術で仕上がりが左右されてしまうのもデメリットと言えます。
◇切削加工の種類
切削加工は、加工方法の違いにより、「旋盤加工」と「フライス加工(ミーリング加工/転削加工)」の2種類に大きく分けることができます。
▼旋盤加工
工作物(ワーク)を機械にセットして回転させ、そこに工具(バイト)を当てながら加工する方法です。
そのため使用する材料は主に円筒状で、対応できる加工は外周の削りや穴あけ、ねじ切り、突切りなどであることから、フランジ、シャフト(軸)、継手などの丸物加工に向いています。
使用する旋盤加工機は、大きく2種類に分けることができます。
ひとつは「汎用旋盤」で、これは操作や工具交換などの作業を手動で行ないます。複雑で精密な動きが可能ですが、作業者の技術や経験に左右されるほか、大量生産には適していません。
もうひとつは、すべての作業をコンピュータ制御で行なう「NC(CNC)旋盤」です。
あらかじめ作業プログラムを入力しておけば特別なスキルは不要で、作業初心者でも正確に仕上げられるのが特徴です。また大量生産にも向いています。
デメリットとして、汎用旋盤では追加の加工が発生したときにすぐに対応できるのに対し、NC(CNC)旋盤ではプログラムが必要であり、難しいという点が挙げられます。
▼フライス加工(ミーリング加工/転削加工)
フライス盤と呼ばれる、刃が複数付いた円筒状や円板状の切削工具(バイト)を回転させて加工します。
旋盤加工とは反対に、工作物(ワーク)は固定したままで工具(バイト)を当てながら加工し、材料も四角棒や六角棒などの角物の切削に適しています。
立方体素材の加工に適している汎用フライス、地面に対して主軸が水平になっている横型フライス、一般的には主軸が垂直になっている縦型のフライスが主流になります。
汎用フライスは汎用旋盤と同様、オペレーターの技量によって加工精度は変わります。
また穴あけやタップ加工が容易ですが 、汎用フライスでは基本的に直線的な加工しかできません。
◇切削加工でできること
切削加工では、主に以下のような加工ができます。
▼外形加工
材料の外側を削って加工する方法です。外形加工の例には、以下のものがあります。
・フライス盤の平面削りや側面削り
・旋盤で円柱形の材料の側面を削る外径切削や、材料の端面を削る端面切削
▼内部加工
材料の内側を削って加工する、外形加工の対極に当たる加工方法です。内部加工の例には、以下のものがあります。
・穴内部の加工
・穴開け加工であいた穴を広げる「中ぐり加工」
・溝の加工
▼穴あけ加工
ドリルを使って材料に穴をあける加工です。ただし、ドリルだけでは精度の高い穴があけられません。内部加工を併用し、リーマなどを用いて高精度に仕上げます。
▼ネジ加工
材料にネジ山を加工する方法です。旋盤ではねじ切りバイトを使用して雄ネジ、フライス盤ではタップという工具を使用して雌ネジに加工できます。
研磨加工とは
研磨加工は、材料の表面を砥石などで削り、滑らかな凹凸のない状態にする加工で、主に製品の最終仕上げに用いられます。
砥石には、刃の役目をする砥粒(とりゅう)と呼ばれる高硬度で微細な粒が含まれ、研磨する素材や目的になどにより種類を使い分けます。
◇研磨加工の用途
研磨加工は以下の用途で用いられています。
・製品の外観の向上
・製品の精度向上
◇研磨加工の種類
研磨加工は、使用する工具や加工方法によって以下の種類に分かれています。
▼研磨布紙加工
砥粒が固定配置されている布や紙を使用し、加工物を研磨する加工方法です。ベルト研磨機で帯状の布を回転させ、そこに材料を当てて加工していきます。
▼砥石研磨
固定、または回転している砥石に材料を当てて研磨していく方法です。包丁を砥石で研ぐように加工することもあれば、グラインダーやサンダーなどの研磨機を使用する場合もあります。砥石は砥粒を結合剤によって固めているため、作業を継続することで砥石が少しずつ削れて行きます。目詰まりすると加工能力が低下するので、定期的なメンテナンスが必要です。
▼ラッピング研磨
研磨剤に含まれる砥粒と材料をすり合わせることで研磨する方法です。ラップ盤と呼ばれる平面台に材料を置き、力を上から加えて行ないます。
ラッピング研磨には、以下の2つの方式があります。
湿式法:液体研磨剤を流し入れて研磨
乾式法:砥粒が表面に埋め込まれているラップ台を使用して研磨
砥粒が転がりながら材料を削っていくため、表面を滑らかで美しく仕上げる加工に向いています。研磨速度が遅く、厚みを落とす場合などには向いていません。
▼ポリシング研磨(バフ研磨)
綿やフェルトなどのやわらかい素材でつくられたバフに研磨剤を付け、回転させながら材料を研磨していきます。グラインダーやポリッシャーなどの回転研磨盤を使用することもあります。
バフや研磨剤の種類を使い分けることで、表面の仕上がり度合いの調整が可能です。鏡面仕上げやつや出しなどに用いられます。
▼バレル研磨
大型の容器に材料、研磨石、研磨剤(コンパウンド)を一緒に入れ、振動や回転を利用して研磨します。研磨の精度は高くありませんが、一度に大量の加工が可能です。主にバリ取りの用途で使用されます。
切削加工と研磨加工の違い
切削加工と研磨加工は、いずれも加工物の不要な部分を削り取るという点においては類似しています。
しかし、研磨加工の目的はあくまでも最終的な表面仕上げです。そのため、切削加工はバイトやエンドミルなどの工具を使用するのに対して、研磨加工で使うのは砥石や研磨剤であり、工具を付け替えることもありません。
このほか、切削加工に含まれる工程に「研削加工」があります。
切削加工した加工物を寸法どおりに仕上げる目的で行なわれる加工で、作業内容は切削ですが、工具には主に砥石を使用します。
研削加工は、切削加工と研磨加工の中間に位置する加工と言えます。
切削加工と研磨加工は加工する製品に合わせて選ぼう
切削加工と研磨加工は、それぞれに加工用途が異なります。 両者の特徴と目的を理解することで、より精度が高く、美しい外観を持つ製品をつくることができます。
切削加工や研磨加工に関するご質問やご相談は、経験と実績が豊富な当社に以下のお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
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