ものづくりプレス

2023-12-09

ゴムのバリと取り方

ゴムや樹脂の成形時に発生するバリは、製品の不具合や品質にも影響を及ぼす原因になります。

そのため、バリ取りはモノづくりの重要な過程のひとつでもあります。
この記事では、バリができるメカニズムや除去方法とコツ、ゴムのバリ対策について詳しく解説します。

バリ取り

バリとは

バリとは、ゴムや金属、樹脂などを成形・加工した際、意図せず発生した突起や残留物です。
例えば樹脂の成形時では、型の隙間からはみ出た材料が硬化してバリになります。


その形状はトゲ状やヒゲ状、薄い板などさまざまで、寸法誤差や市場クレームなどの問題を引き起こす原因になります。

バリが起こる仕組み

バリが発生するタイミングは成形時と加工時に分けられますが、特に成形時が大きな課題です。
例えば、射出成形時に金型の合わせ目から材料がはみ出し、この材料が硬化する結果としてバリが発生します。


このほか、金型が高すぎる射出圧で変形を起こしたり、経年劣化により隙間があいていたりすることなども、原因として考えられています。

バリ取りが必要な理由

多くの場合、図面には「バリなきこと」と注意が記載されています。なぜなら、バリの発生は設計時に想定されていないからです。


バリをそのまま放置した場合、図面どおりに組み付けができなくなります。その結果として、バリによる摺動性の劣化や、使用中・動作中にバリが取れて製品に影響を与えるなど、さまざまなトラブルが発生する可能性が高まります。


このほか素材が金属や樹脂の場合では、バリ自体が硬く、鋭利であることが多く、作業者に重大なケガを負わせることも考えられます。


これらの理由により、バリ取りは製品の安全性や機能性、品質を維持するために欠かすことのできない作業になっています。

ゴムのバリ

基本的に、ゴム製品の成形時に発生するバリを防ぐことはできません。その理由は、ゴムの製造工程にあります。


ゴムは成形時に、成形品の大きさよりも多めの材料を金型に入れます。これは、故意にゴム材料を金型から溢れさせ、成形時に発生するガスを金型の外に逃がすのが目的です。そしてこの溢れ出た材料が硬化し、バリを形成します。


しかしこれを行なわずに成形すると、出来上がった製品の表面が荒れたり、破けたりするなど成形不良を引き起こす原因になります。そのため、現段階では避けられないのが現状です。

主なゴム成形方法別のバリ

ゴム成形方法によって、バリの起こり方は以下のように異なります。


▼圧縮成形(コンプレッション成形)、トランスファー成形

圧縮成形(コンプレッション成形)やトランスファー成形は、金型のキャビティー内に多めに材料を入れ、加熱・加圧する成形方法です。
そのため、余分なゴム材料が加熱・加圧時に金型の合わせ目からはみ出してきます。この部分が硬化し、バリとなります。

▼射出成形(インジェクション成形)

熱した材料を金型内に噴出して成形する射出成形(インジェクション成形)では、ゴムの流動性が高い状態の時に金型の合わせ目からゴム材料が漏れることで、バリが発生します。
また、射出圧力が強過ぎたり、金型を締め付ける圧が弱すぎたりした場合でもバリが発生するため、これらを上手に調節することが必要です。

バリはゴムの硬度で異なる

バリの大きさは、ゴムの硬度にも左右されます。
硬度が低く軟らかいゴムの場合ではバリ幅が大きく、その反対に、天然ゴムのように硬度が高いゴムでは小さくなる傾向があります。


このように、使用するゴムの硬度によっても、発生するバリも変わってきます。

ゴムの主なバリ取り方法のメリットとデメリット

一般的に、ゴムのバリ取りには以下のような方法が用いられます。

ハサミやカッターなど工具を使ったバリ取り(手作業)

ハサミやカッターで切る、ちぎるなど、手で行なう方法です。内職として外注されることもあります。


人手による作業のため、作業員によって品質にムラが出るのがデメリットです。

機械や装置を使ったバリ取り

少量のバリ取りであれば手作業でも可能ですが、大量生産の場合は費用面や効率・品質向上のため、以下のような機械を使って行なわれることがあります。


▼打ち抜き機、抜き型
シンプルな形状のものは、打ち抜き機(抜き型)を使うことで型抜きと同時にバリを取り作業を行なうこともできます。
一度に大量の加工ができるため、シート型に成形した材料を使用する製品などに適しています。


例えばOリングの場合では、内径と外径のそれぞれに合わせた抜き型を使用し、製品とバリを切り離します。ただし抜き型のクオリティが低いとバリが残ってしまったり、製品部分を抜いてしまったりすることがあります。
また、機械を手で操作する場合は、作業中にケガが発生するリスクもあるため注意が必要です。


▼バリ取り機(タンブラー式、ショット式、超音波式)
液体窒素などでゴム製品を冷却し、固化したゴムに衝撃を与えることでバリ部分を取り除く方法です。タンブラー式や水圧・空圧などを利用したショット式のバリ取り機などがあります。


このほか、水に沈めたゴム製品に超音波で振動を与え、バリ部分を破壊する超音波バリ取り装置があります。現時点では金属や樹脂のバリ取り用途に限られており、近い将来、ゴム用としての実用化が期待されています。


バリ取り機の使用は、作業時間の大幅な短縮を実現します。しかし導入にコストがかかるため、大量生産でない場合はコストの回収が難しいのが実情です。

バリ取りのコツ

現実問題として、確実にバリを取る方法は存在しません。
また素材や成形方法によってバリの性質が異なるだけでなく、毎回同じバリが出るとも限らないため、適切な除去方法も異なります。


これらの理由から、バリ取りのコツというのはありませんが、バリを見極め、用途や素材に合ったバリ取り工具を使い分けることで改善することは可能です。
また、成形や加工方法、素材を見直し・工夫をすることでも、バリの発生を抑えたり、除去しやすくしたりすることができます。

ゴム、プラスチックでバリを出にくくする方法

材料の射出圧力や速度・温度を下げる、金型の強度や型締め圧力を上げるなどの方法で、成形時にバリが発生しにくくなることがあります。


ほかにも、金型合わせの精度、溶融時の粘度や充填剤の割合、空気圧などを考慮し、工夫することもバリの減少につながることがあります。

ゴムのバリ取り作業を軽減する「喰い切り」

ゴムの圧縮成形では、必ずと言っていいほどバリが発生します。そのため、「喰い切り」という溝をあらかじめ作ることで、バリ取り作業を軽減させることができます。


喰い切りには、主に2つの種類があります。

ブロック喰い切り

立方体や直方体形状の製品に適した喰い切りです。
上部の金型に、喰い切り幅がゼロになるように、ゴム製品の上辺に沿ってブロック状の喰い切りを設計します。


V字喰い切りと比較してバリをきれいに除去しやすいというメリットがありますが、すべての形状に対してブロック喰い切りを付けられるわけではありません。

V字食い切り


上下の金型にV字を寝かせた形状の溝を設けます。

V字の狭い方がゴム製品の外側にくるようにし、製品に付着するバリ部分を最小限にすることで、形成するバリの量を可能な限り減らします。


ゴムのバリ取りは大切な作業

ゴムの成形・加工過程において、バリの発生をゼロにすることは不可能と言われています。
しかし工夫次第では、最小限に抑えることができます。


バリ取りは手間がかかる作業ではありますが、製品の性能や品質を維持するためには必要不可欠です。より良い製品づくりのためにも、細部にこだわって仕上げていきましょう。


バリ取りをはじめ、ゴムに関するご質問やご相談は、経験と実績が豊富な当社にご連絡ください。

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