ものづくりプレス

2023-12-06

ゴムのジャバラ(蛇腹)成形

シンプルな構造ながら、伸縮自在で多様な素材から製造できるジャバラ。ホースや機械部品の保護カバーなど、幅広い分野で重宝されています。中でも、ゴムや合成樹脂で作られたジャバラは、優れた柔軟性や振動の吸収、防塵、騒音防止効果などの効果も期待できます。
この記事では、ジャバラの長所をはじめ、成形方法や形状の種類と用途について解説します。


ゴムのジャバラ

ジャバラ(蛇腹)とは

ジャバラとは、ゴムや金属、プラスチックなどの板やチューブなどに、山折り・谷折りを交互に

繰り返す加工を施した製品や、その構造を指します。


日本でも古来より取り入れられており、提灯や扇子などはジャバラと同様の構造で作られていま

す。また伸縮性や機密性に優れた特徴を持つため、現在では掃除機のホース部品や洗濯機の排水

管、 折り曲げ可能なストローなど、幅広い用途で使用されています。


ジャバラはシリコンや金属、合成ゴムなどさまざまな材質で製造が可能です。中でも金属製のものは、英語で「ふいご(吹子)・ジャバラ」を意味するbellowsをカタカナ読みした『ベローズ』と呼ぶこともあり、非金属製品と区別することもあります。

ジャバラ(蛇腹)の長所

ジャバラは伸縮性に優れているため、可動部品の保護カバーや配管の継手部品として多用されて

います。基本的には山折り・谷折りの連続というシンプルな構造なので、使用できる素材が豊富

なことも長所のひとつと言えるでしょう。


また、使用する素材の性質を厳選し、それを生かすことで、機密性や耐候性を高めたりすること

が可能です。


続いて、ジャバラの長所について解説します。

優れた柔軟性と機械的強度

ジャバラは折り目に合わせて自在に伸縮・屈曲する柔軟性を有しています。角変位も自由なの

で、幅広い用途に対応可能です。


また、機械的強度にも優れ、耐久性が高いという長所もあります。
山部分にプレートやリングを入れたり、特殊加工を施したりすることにより、さらに強度・復元

性が高まります。

振動の吸収、騒音の低減

配管の継手や電車・新幹線の貫通幌などに取り付けることで、装置などの振動を吸収することが

可能です。そのため、振動による配管の劣化防止が期待できます。

さらにジャバラによる振動の吸収は、振動が原因で発生する音の伝達を大幅に低減させることに

つながるため、騒音対策にも有用です。


このほか、熱膨張する可能性のある排気管の継手にジャバラを用いれば、膨張・収縮時のズレを

吸収することもできます。

用途に合わせた材料選定が可能

ジャバラは、金属や合成ゴムなどでの製作が可能で、また特に決まった規格はありません。その

ため、使用環境や使用条件に応じて材質を選択することが可能であり、耐油性や耐摩耗性、耐

熱・耐寒性などを付加できるなど、応用性にも優れています。


ただしゴム製ジャバラは、材質や厚みによって圧縮率が低くなるなどのデメリットがあります。
また、ゴム製シートや塩ビクロスを縫合して成形されたジャバラは、金属製のベローズのように

真空状態を保てる気密性はありません。


このように、メリットだけでなくデメリットも加味し、用途に合わせた材料選定をすることが重

要です。

ジャバラ(蛇腹)主な成形方法と特徴

ジャバラは山折りと谷折りの連続というシンプルな構造ですが、工業部品として用いられる場合

は、パイプ形状や中空形状に加工することも多く、技術を要します。


ゴム・合成樹脂製ジャバラの主な成形方法をご紹介します。

ブロー成形

高温で柔らかくした原料をパリソンと呼ばれるパイプ状にして金型で挟んだ後、パリソン内に空

気を吹き込み膨らませ、金型に押しつけることで成形します。


ジャバラ成形の主流とされる手法ですが、内側形状の調整が難しいため山折り部分が薄くなった

り谷折り部分が厚くなったりと、肉厚が一定になりにくく、長年培った勘やコツが必要です。


ただし、三次元ブロー成形(MES)の場合であれば、一般的なパリソンを上から垂らす手法と違

い、金型のキャビティ形状に沿ってパリソンを相対的に移動させる事で複雑なジャバラ成形が可

能です。溶融粘度の低いエンプラを原料としたジャバラ製造も問題ありません。

コンプレッション成形(プレス成形)

ジャバラの形状を彫り込んだ金型を加熱し、ペレット状またはシート状のゴム原料を投入して金

型を閉じた後、加圧して成形します。
ブロー成形と同様、メジャーなジャバラ成形方法のひとつで、少量から大量生産まで安価で成形

できるのがメリットです。


しかし、金型で原料を挟み込む際にはみ出しバリが発生するため、成形後に取り除く工程が必要

になります。

押出成形

押出成形は、加熱溶融した材料をダイ(ダイス)と呼ばれる口金からトコロテンの要領で押し出

す成形方法で、特にパイプやシート状の製品の成形に適しています。


押出成形でジャバラを入れるには、原料をパイプ状に押し出し成形した後、冷える前にジャバラ

型がついたキャタピラで挟みます。パイプ内に空気を流し、キャタピラに押し付けることでジャ

バラパイプが成形される仕組みです。

切削加工

金属製のベローズと同様、ゴムも切削加工でジャバラ形状にすることは理論上は可能です。


しかし加工の性質上、切削加工によるジャバラ成形は高い技術力が必要とされるため適した加工

方法とは言えず、特に低硬度のゴム素材や複雑な形状のジャバラには不向きです。

射出成形

金型内に加熱溶融した原料樹脂を射出・冷却固化させることで成形する方法です。


金型内に材料を均一に流し込むこと、また金型からの脱型が難しいため、一般的な方法ではあり

ません。

ジャバラ(蛇腹)の設計

ジャバラには標準品、規格品と言われるようなものは特にありません。使用環境や使用条件を考

慮し、原料の種類・形状・サイズなど、適した条件を備えた既製品があればそれを使用します。


それ以外の場合はオーダーメイドになるため、専門業者に条件を伝え、最適な製品を設計し、製

作してもらうことになります。


後述するジャバラの形状や用途も参考にしてください。

形状の種類と主な用途

ジャバラといっても、その形状にはいくつか種類があり、またそれぞれに適した使い道がありま

す。


以下、ジャバラの主な形状と特徴、用途について解説します。


▼丸型
掃除機のホースのように、パイプ状で外周がジャバラになっている形状です。
ホースやボールネジや軸の保護カバーに用いられます。


▼平型
屏風やアコーディオンカーテンのように、平らな一枚の板をジャバラ形状にしたタイプです。
機械の開口部分やレールの蓋などに用いられています。


▼コの字型
平型ジャバラに高さをつけたコの字型のジャバラです。
リニアガイドや高精度のボールねじ、開口部などを保護するカバーとして用いられます。


▼ロール型
平面のシートを軸に巻き取る形状のジャバラです。
平面の保護カバーや安全対策用カバーとして用いられます。


▼角型

四方をジャバラで囲んだ四角い形状です。
各種保護カバーなどに用いられています。


▼その他
このほか、ジャバラブーツと呼ばれる台形のような可動部の保護カバーのほか、使用目的に応じ

てさまざまな形状のジャバラがあります。

成形自在で可能性が広がるジャバラ

ジャバラはゴムをはじめ、合成樹脂など多種多様な原料から製造でき、形状も用途により使い分

けることが可能です。機械部品を保護する以外にも、豊かな発想でさまざまな用途に使用できま

す。


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