ものづくりプレス

2024-01-12

3Dプリンターの基礎について簡単に解説

近年、製造業や医療機器産業を中心に3Dプリンターの注目度が急上昇しています。試作品などをスピーディーに作成でき、外注しなくても良いなどのメリットから、自社への導入を検討している中小企業も増えているようです。 この記事では、3Dプリンターで作れる物や材料、造形方法について詳しく解説致します。

3Dプリンター

3Dプリンターとは。簡単に説明

3Dプリンターとは、3次元的な設計データをもとに、立体的な物体を出力する機械です。積層造形装置や付加製造装置などの名称で呼ばれることもあります。


オフィスなどで使う一般的なプリンターは、あらかじめ用意した紙にインクを吹き付け、2次元(平面)でプリントする機械です。しかし3Dプリンターは、原料となる樹脂で層を作り、それを重ねていくことで立体物を出力するという点が大きく異なります。輪切りにした立体物を積み重ねて完成させていくイメージです。

3Dプリンターの仕組み

「積層造形」という言葉からもわかるように、3Dプリンターは、入力した3Dデータから2次元のスライス状の断面層データを作り、それを1枚ずつ出力して積み重ねていくことにより、立体物として仕上げていきます。


入力するための3Dデータの作成方法は、主に以下の3つがあります。


1. 3D CAD(3Dキャド):コンピュータ上で設計やデザインを作成する設計専用のソフト

2. 3D CGソフト:コンピュータ上で立体物を作成するソフト。3D CADより自由な曲面形状をモデリングできますが、正確なサイズを出しにくいのがデメリット

3. 3Dスキャナー:対象物をスキャンすることで、自動的にデータを作成


中でも3D CADは寸法精度や正確性に、そして3D CGは曲面などの再現性に優れているという特長があります。


作成した3Dデータは一般的にSTL形式(.stl)またはOBJ形式(.obj)で出力し、プリンターに入力します。

STL形式は、80年代後半に開発された3Dデータの保存形式です。広く一般的に使われているファイル形式で、普及率はダントツですが、カラーやテクスチャーに関する情報は保存できません。

一方のOBJ形式(.obj)は、カラーやテクスチャーに関する情報も保存できる3Dデータの新たな形式です。今後ますます主流になることが予想される、「マルチカラー/マルチマテリアルプリント」に対応可能なファイル形式として注目されています。

3Dプリンターで"作れるもの"と"作れないもの"

自由な発想とデータを作る技術があれば、さまざまな形状の物を作ることができるのが3Dプリンターの魅力です。しかし、どんな物でも作れるわけではありません。


次に、3Dプリンターが得手不得手としている物について説明します。


▼作れるもの

製造業から医療機器産業、建築業界や自動車産業にまで幅広い業界で、以下のような製作物への活用が進んでいます。


●試作品

工業製品の試作品やプレゼンテーション用のサンプル、モックアップなどの製作が可能です。金型を作らなくても良いので、価格を抑えられるのがメリットです。


●治具(治工具)

スピーディーに製作できるので、急ぎで治工具を必要とする場合などに役立ちます。また、小ロットで多種類の治工具を製作できるのもポイントです。


●型

3Dプリンターを利用すれば、樹脂成形に使う型も作れます。材料に樹脂を使用するため、金属の型よりもコストが低いのが魅力です。主にプレス成形や射出成形の簡易金型作りに適しています。


▼作れないもの

3Dプリンターは理論上、設計データがあればどんなものでも作成できますが、不向きな形状もあります。例えば、極端に小さな形状や薄い壁を持つ形、加工テーブルへの接地面積が小さい形状などを有する形などは、強度や加工性の面で問題が起きやすく、実用的ではありません。

また「T字」のように、外側にせり出したオーバーハングと言われる形状は、3Dプリンターが苦手とする代表的な形のひとつです。しかし、造形物の出力する向きを回転させることで対処できるケースもあります。

個人用と業務用の違い

2010年代前半あたりから、家庭用の3Dプリンターが家電量販店や通販サイトで購入できるようになりました。

業務用との大きな違いは手頃な価格にありますが、製作物の精度やクオリティーなどの面では劣ります。また業務用は、大きな立体物を製造できるのも特徴です。

3Dプリンターのメリットとデメリット

樹脂成形の方法の中では比較的新しい3Dプリントですが、技術的に年々進化し、現在では実用的で、メリットの多い造形方法としての地位を確立しつつあります。


では3Dプリンターにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

3Dプリンターのメリット

造形に金型を必要とせず、従来の製法よりも製品開発のスピードの短縮やコストダウンが期待できるのが大きなメリットです。また、自社に3Dプリンターを導入した場合、簡単に試作品やテスト部品を作ることができるので、アイディアを立体化して手に取って評価しやすくなるのも大きな利点といえるでしょう。

3Dプリンターのデメリット

3Dプリンターにはデメリットがいくつかあります。

1つは、製造時間が長く、複雑な構造や大きなオブジェクトを作成する際には数時間から数日かかることです。

また、3Dプリンターの積層造形は毎回完璧に同じ仕上がりにならない可能性があり、極めて高い精度を求める場合や微細な部品や複雑な構造の製造においては精度の制約が問題となります。


最後に、大量生産には時間とコストの面で制約があり、効率的な方法としては適していません。したがって、大量に同一の製品を生産する場合、従来の製造方法に比べて適していないと言えます。

3Dプリンターを使ったプリント

3Dプリンターで立体物をプリントするためには、専用の材料が必要です。

どのような材料があるのかについて解説します。

3Dプリントに使用する材料

3Dプリントの材料は主に樹脂で、製造方法によって、粉末や液体、フィラメント状のものを使用します。また近年では、金属やセメント、カーボンなども使用可能できる3Dプリンターも登場しています。


▼フィラメントとは

フィラメントとは、細くて長い糸状構造を意味する言葉です。電球の中にあるフィラメントと同じと言えばわかりやすいでしょう。

3Dプリントの材料としてのフィラメントは、後述するFDM方式で使用する材料のことで、樹脂材料を細い糸状に加工し、リール状に巻いた物を指します。


▼プリントに使用される主な材料の種類と特徴

3Dプリントに使用される主な原料は以下のとおりです。


●ABS樹脂/ABSライク

ABSはポリスチレンにアクリロニトリル・ブタジエンを加えて重合させた樹脂です。耐衝撃性や機械的性質に秀でている上、優れた加工性や着色性、表面光沢を有しているのが特徴です。

家庭用3Dプリンターでは、ABS樹脂の特性に似せてエポキシ樹脂で作られた、ABSライク樹脂といった材料も使われています。


●PLA樹脂(ポリ乳酸)

植物由来の成分で作られるバイオマスプラスチックの一種です。低価格なのに加え、プリント時の安定性も高く、家庭用・業務用のどちらの現場でもよく用いられています。


●PPライク

PP(ポリプロピレン)の外観や機能を模した材料です。PPの持つ耐久性と表面のなめらかさなども再現します。PP製品のプロトタイプの製作に適しています。


●ゴムライク

ゴムのような弾性を持った材料です。ゴム製品のプロトタイプ製作などに使用します。


●ナイロン(PA/ポリアミド)

機械強度に優れた性質を持つため、試作品をはじめ、治工具や最終部品などに用いられています。また航空宇宙産業など向けのパーツとしても使用されています。


●石膏パウダー・金属パウダーなど

後述するインクジェット方式やSLS方式では、粉末状にした多様な素材を溶かしたり、樹脂で固めたりすることにより立体化することが可能です。

造形方式の主な種類とメリット・デメリット、主な用途

3Dプリンターで用いられている造形方法にはいくつか種類があります。

主な種類と特性、用途は以下のとおりです。


▼SLS方式(粉末焼結層造形方式)

粉末性の材料をレーザー照射で焼結し、プリントする造形方式です。形状が複雑で、耐久性の高い造形物をプリントできますが、製品の表面が粗く、仕上がりはザラザラした感じです。

主にナイロン粉末を使うのが一般的ですが、金属粉末を使うことも可能です。モックアップや試作品だけでなく、実製品に使用する部品にも利用されています。


▼SLA方式(光造形方式/レーザー方式/RP)

3Dプリンターの中で最も長い歴史をもつ造形方法です。光造形やRP(Rapid Prototyping)と呼ばれることもあります。

エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂などの光硬化性樹脂を液体状にし、紫外線レーザーを当てることで硬化させます。後述するFDMにFFF方式に比べ、高精細な造形物をプリントできるのが特長です。また、表面も滑らかです。

ただし材料の特性上、太陽光にさらされると硬化が進み、劣化して壊れやすくなるのが欠点です。


▼インクジェット方式

インクジェット方式には、以下の2通りの造形方法があります。


●材料噴射(マテリアルジェッティング)

インクジェットヘッドから材料となる樹脂を噴射し、紫外線で固める造形方式です。ABSライクやPPライク、ゴムライクなど多様な樹脂材料を使用できる上、ひとつの造形物で複数の素材を使用することが可能です。また、噴射する液量を調整しやすいため、高精細な造形物をプリントできます。

しかし、この方式も材料の特性上、太陽光にさらされると硬化が進み、劣化してしまいます。


●結合剤噴射(バインダージェッティング)

粉末性の材料に樹脂を結合材として噴射する造形方法です。着色樹脂を使用すれば、容易に着色も可能なので、フィギュアやモックアップの制作に使用されます。スピーディーに造形でき、余った材料は再利用できるため、コストパフォーマンスも秀でています。

石膏パウダーや樹脂パウダーを固める方法のため、表面がザラザラし、耐久性が低い点がデメリットです。


▼FDM/FFF方式(材料押出堆積方式/熱溶解積層方式)

フィラメント材を熱で溶かし、ノズルから押し出しながら造形する方法です。ABSやPLA(ポリ乳酸)、ナイロンなどの熱可塑性樹脂を材料にできるため、耐熱性や耐久性に優れた製品を作成できます。ただし、断層が目立ちやすく、表面の滑らかさは期待できません。

3Dプリンターの導入は、補助金や税金優遇制度を活用!

3Dプリンターの導入は、飛躍的な業務効率化やイノベーションを起こすきっかけとなることが期待されます。しかしその値段がネックとなって、なかなか実現に踏み込めないケースも多いのではないでしょうか。

高額な3Dプリンターではありますが、実は「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」など、補助金や中小企業投資促進税制などの税制優遇制度の対象です。また補助金と税制優遇は併用も可能です。


なお当社では3Dプリントのご注文を承っています。自社導入は難しいが3Dプリントを使った試作品を製作したい、どのような製品ができるのかを確認したいなど、3Dプリントに関することなら、お気軽に当社までご相談ください。

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