ものづくりプレス
2023-12-16
コンテナ不足の原因を解説・輸出入遅滞の背景
昨年2022年も、世界中でのコンテナ不足が原因で国際物流に支障が出ていました。日本も決して他人事ではなく、コンテナ不足によって原材料や運賃の高騰、荷物・製品の入荷・出荷遅れなど、資金繰りから生産計画までさまざまな面で大きな影響を受けました。
当記事では、コロナ当初に立ち返り、コンテナ不足の原因やコンテナ不足によって引き起こされる問題、コンテナ不足についての考察などをまとめました。
コンテナ不足はなぜ起こる?その原因は?
コンテナ不足の原因には、次の4つが挙げられます。
● 中国のコンテナ製造産量が減少
● 中国経済の回復と欧米諸国の巣ごもり消費増加
● 欧米での港湾作業能力の低下
● 移送のためのシャーシとトラックドライバーの不足
順番に解説します。
原因①中国のコンテナ製造産量が減少
世界中のコンテナ生産量の約98%を誇る中国工場でしたが、2019年から2021年にかけて生産量が減少しました。理由は次のとおりです。
● 2019年より始まった米中貿易摩擦(米国による中国製品の関税引き上げなど)による荷動きの低下が懸念された結果、コンテナ生産量が前年と比べ40%減少し、縮小傾向にある
● 2020年の年始より始まった新型コロナウイルスの感染拡大の影響による先行きの懸念がかかわり、コンテナ生産工場における稼働率が大幅に低下したことによる縮小傾向の継続
ただし、2021年以降はコンテナ製造量が回復している傾向が見られます。
原因②中国経済の回復と欧州諸国の巣ごもり消費増加
最初に新型コロナウイルスが発見された国とされる中国でしたが、その後の感染の抑え込みによって、現在は自動車や機械類などの生産が回復しました。その結果、中国関係の輸出・輸入量が急激に増えたことが、世界中のコンテナ不足を招いています。
また世界の経済活動の再開によって、中国に加えて東南アジアから欧州に運ばれる荷物が増加したことが、さらなるコンテナ不足を引き起こしました。2021年5月のアジアからアメリカへのコンテナ輸送量が前年同月比で約5割増加しています。
新型コロナウイルスの影響を受けた北米や欧州では、外出自粛などで巣ごもり消費増加によって生活用品や家具、家電などの輸入が増加しました。その結果、中国からの輸入が急増したため、コンテナの製造量と使用量のバランスが崩れ、コンテナ不足へとつながっています。
原因③欧米での製造作業能力の低下
先述した中国経済の回復や巣ごもり消費の増加によるコンテナ不足と、新型コロナウイルスによる荷役作業の滞りが重なり、北米西海岸を中心とした港湾の大混雑が引き起こされています。
この大混雑により港湾作業能力の低下が著しく見られました。その結果、以下のような港湾作業能力の低下が発生しています。
● 輸出国への空コンテナの返送遅延や回転率の低下
● 新型コロナウイルスによる作業員の減少によって荷捌きが滞留し、未処理のコンテナが集積・スペース不足が発生
● 海運会社のコンテナ船減便によるコンテナの回収が遅延
一般的に到着したコンテナは、14日以内に中身の荷物を取り出した後、空コンテナの返却をしなければなりません。そのコンテナの回転が滞り、コンテナ不足の原因につながっています。
実際にコンテナターミナルでのコンテナ蔵置日数(後述)は2020年7月期より上昇傾向を見せ、2021年の年明けには平均2.5日から倍の5日となっています。その後も5日前後の水準が継続していました。他にも、ターミナルから鉄道によって搬出されるまでの「蔵置日数」にも増加が見られています。
なお日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部の調査でも、貿易のサプライチェーンを見直す理由として「国内輸送が混乱して、生産しても出荷できない」との事業主の声が挙がっていました。
原因④移送のためのシャーシとトラックドライバーの不足
港湾に到着したコンテナは、シャーシ(台車)に乗せて移動させ、トラックに積んで内陸へ移送します。しかし、このシャーシとトラックドライバーの不足が原因で、空コンテナの回収作業などの業務が滞ってしまいました。
コンテナの回転率が低下したことにより、未回収のコンテナが世界各国の港や空港に放置され、世界中のコンテナ不足につながったとされています。
コンテナ不足が及ぼす物流業界への影響
コンテナ不足が及ぼす物流経済への影響は次のとおりです。
● 国際物流の遅延
● 物流コストの値上げ
● 物価上昇
● ゴム・プラスチック業界への影響
順番に解説します。
国際物流の遅延
コンテナ不足によって輸入・輸出が難しくなると、世界中の荷物の出荷が停止してしまいます。その結果、国際レベルでの物流が遅延し、さまざまな荷物や物資の到着の見通しが立ちにくくなってしまいます。
日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部の調査でも、2022年2月の上旬時点で「運行スケジュールの遅れ」「経由国の港湾の混雑・貨物滞留」などがあると、ASEANに所在する日系現地人の方が回答しています。
また2022年の身近な例だと、マクドナルドのポテトの一時的な販売休止があります。これもコンテナ不足や国際物流の遅延が原因の1つです(ほかに水害や航路の悪天候などによる理由もあり)。
物流コストの値上げ
2021年の下旬では、世界的なコンテナ不足が原因で海上運賃が過去最高値を記録しています。また、海上運賃の高騰によって航空輸送にシフトする動きが発生し、航空運賃の高騰も招いています。
日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部の調査によると、サプライチェーンの見直し理由として「国際輸送の混乱・輸送コストの高騰」が35.2%で1位となっていました。国際物流による混乱の自社への影響に対する回答でも、「コンテナ船の運賃高騰」「航空貨物の価格高騰」などが上位に挙げられています。
物価上昇
コンテナ不足による海上運賃・航空運賃が上昇すると、企業は利益を出すために原材料や商品の値上げが必要になります。そのため、コンテナ不足は長期的目線だと、さまざまなものの物価上昇につながります。
実際に日本でも、輸入物価指数や国内企業物価指数などが上昇を見せています。特に輸入物価指数の上昇率は、2021年11月に45.2%、12月に41.9%を記録しています。生活に関係する商品も、ティッシュペーパーや多くの食品の値上げが実施されました。
ゴム・プラスチック業界への影響
コンテナ不足は、ゴム・プラスチック業界へも大きな影響を及ぼしています。「製品の出荷」と「原料の入荷」の2つの観点でみていきましょう。
▼製品の出荷
ゴムやプラスチック製品を出荷する際、ほかの荷物と同様に、船便の減少や遅延が原因で出荷用の船を押さえることが難しくなっています。そのため、出荷スケジュールの変更を余儀なくされたり、安定供給を保証できなかったりなどの問題が発生しています。
また、ほかの地域に構える自社工場からのゴム・プラスチック製品の出荷が滞り、北米への輸出が遅延している点も、コンテナ不足の悪影響の1つです。
合成ゴム自体の需要は堅調で推移しているものの、コンテナ不足やその他の物流の問題が原因となり、前年以上の出荷ができない状態が続いています。
▼原料の入荷
ゴム・プラスチック製品を製造するための原料の入荷が遅延することで、生産調整を余儀なくされるケースも増えています。需要に対し、十分な供給を提供することができていません。
また、世界中での物流コストの上昇や原油価格の高騰などの影響で、ゴム・プラスチック原料の原料価格も上昇しています。このまま問題が長期化すると、ゴム・プラスチック製品の値上げにもつながるかもしれません。
コンテナ不足改善の取り組み
コンテナ不足を改善するために、「海運会社」「荷主」「国土交通省」がそれぞれでさまざまな取り組みを実施しています。
海運会社、荷主の取り組み
以下では海運会社と荷主の取り組みをそれぞれ見ていきましょう。
▼海運会社
海運会社によるコンテナ不足改善の取り組みは次のとおりです。
● 臨時船の追加投入による空コンテナ回収の回転率上昇
● 船舶の大型化による積みコンテナ量の増加
● 新規コンテナ増加
● 迅速なコンテナ返却への意識改革とコンテナ回収への呼びかけ など
▼荷主
荷主によるコンテナ不足改善の取り組みは次のとおりです。
● 他社とのコンテナ共用による積載率の向上
● ロシアの一部都市のブッキングが困難であるため、バックアップ船社およびNVOCCへ依頼し、コンテナ1本貸し切りから混載コンテナへ変更、ケース次第でシベリア鉄道の利用
● 中国の一部都市のブッキングが困難であるため、長江を使用した河川コンテナ輸送から上海からの陸送での対応に変更
● リードタイム設定を変更し、余裕を持った在庫による対応
● リードタイムの延長
● 物流費用抑制のための在庫管理精度の向上
● 混雑悪化の改善目処が立たないUK向けの荷物は、欧州の大陸側に仕向地を変更し、欧州内フィーダーで英国まで転送するなどして対応 など
国土交通省の取り組み
国土交通省は、2020年2月に海運会社や荷主に対して協力要請を行なっています。協力要請文章の概要は次のとおりです。
<荷主および船社以外の物流事業者>
● 実入りの輸入コンテナの早期引取・空コンテナの早期返却
● 実入りの輸出リーファーコンテナのカット日搬入
● フリータイム(無料保管期間)、デマレージ(超過保管料)及びディテンション(返却延滞料)の適切な運用
● 実際の予定を上回る過剰な予約(ブッキング)や直前のキャンセルの自粛
● 国際海上コンテナ輸送の利用にあたっての日程上の余裕や経路上の柔軟性のある計画
<外航コンテナ船社>
● 国際海上コンテナ輸送力の増強及び空コンテナの確保のための努力(臨時船の運航、日本発着貨物へのスペースの割当の確保、コンテナの新規調達の増加の検討など)
● 国際海上コンテナのフリータイム、デマレージ、ディテンション及びカット日の適切な運用
今後のコンテナについて
コンテナは、2022年はじめの時点で完全な改善には至っていません。これまでの国際物流の混雑などを念頭にいれると、2023年以降も注視する必要はあるでしょう。
しかし、世界中のアフターコロナにより物流の動きが活発化するほどコンテナ不足のリスクは減少します。まだ世界経済の動きは、戦争なども含め不透明な部分もありますが、各社の担当者は情報収集を怠らず、慎重な生産計画や受発注スケジュールを組みましょう。
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