ものづくりプレス

2024-11-20

プラスチック加工方法と用途・特徴とは

日用品から電化製品の部品、業務用の機材など、いろいろな分野でプラスチックが用いられています。プラスチックは用途や原料によって適した加工方法が異なります。そのため、製造したいプラスチック製品に合わせた加工方法を選ぶのが重要です。

この記事では、プラスチックの加工方法に加えて、プラスチック加工に採用される材料と特徴について解説しています。プラスチックの加工を検討している人、プラスチック製品の試作や量産を検討している場合は、ぜひ参考にしてください。

プラスチック加工

プラスチック加工方法

プラスチックの基本的な加工は、「可塑化」「成形」「固化」の3工程で進められます。

・可塑化…材料のプラスチックを加熱して溶かし、液状にする

・成形…液状になったプラスチック材料を型に流し込む

・固化…型に入れた液状プラスチックを固める


またプラスチック加工には、成形で使用する金型の形や加工の方式によって、大きく分けて主に以下の4種類があります。

・切削加工

・射出成形

・押出成形

・真空成形


それぞれの加工方法により、メリットとデメリット、適しているプラスチック材料が異なります。プラスチック加工方法別の特徴と、メリットとデメリットを解説します。

切削加工

切削加工とは、材料を切ったり削ったりして加工する方法です。プラスチックのほか、金属や木材などの加工方法としても用いられています。

切削加工は、使用する工具や方式によって以下3つの方法があります。

・旋削加工(ターニング)

・フライス加工(ミーリング)

・穴あけ加工(ドリリング)


▼旋削加工

旋削加工は、材料を回転させて、チップと呼ばれる工具を同じ方向に動かしながら削っていく加工方法です。加工後はらせん状に仕上がります。チップのサイズや材料に当てる角度、材料の回転速度が仕上がりに影響します。


▼フライス加工

材料を固定し、回転する工具を当てて加工する方法です。立体的な加工品ができる一方、ハンドルやボタンなどの操作がやや複雑なため、技術が必要です。


▼穴あけ加工

ドリルを使って穴を開ける加工方法です。加工時に発生する切りくずを除去しながら作業しない場合、仕上がりに影響が出てしまいます。


切削加工は金型を使用しない加工方法です。金型を製作する必要がないため、初期の製作コストが安く、金型の納期を考慮しなくてよいというメリットがあります。一方、プラスチックの切削加工には技術が必要とされるのがデメリットです。


なお、プラスチックは加熱すると膨張し、冷却すると元に戻る性質があります。切削加工の工程では材料に熱が伝わりやすいだけでなく、力も加わります。そのため、これらの条件における寸法の変化や、加工する素材の選択などに対して考慮することが大切です。

射出成形

射出成形は、プラスチックの加工方法としてもっとも一般的な方法で、以下の手順で行ないます。

・粒状のプラスチック材料を加熱シリンダーの中に入れる

・液状になるまで加熱する

・注射器のようにシリンダーに圧力をかけ、金型の中へ液状化したプラスチックを流し込む

・プラスチックが固まった後、金型を開いて取り出す


射出成形は、金型の形を変えることでいろいろな形状のプラスチック加工品が製造できるメリットがあります。特殊な射出成形機を使用すれば、CDやDVDの製造も可能です。一方、金型の製作にコストと納期がかかることを考慮しなければいけません。


射出成形の性質上、加熱により軟化する熱可塑性樹脂には適していますが、熱を加えると硬化する熱硬化性樹脂に対する加工としては限定的です。

押出成形

押出成形とは、加熱して溶かしたプラスチックを、トコロテンの要領で押し出して成形する方法です。プラスチック材料をシリンダーの中に入れると、加熱融解されて押し出される仕組みになっています。


プラスチックが押し出される金口の形状により、丸や四角などの断面を持つプラスチック製品の成形ができます。特に光ファイバーケーブルやダクト、パイプのほか、シートといった長物かつ連続的な形を持つ製品の成形に向いています。


また製品の固化は、金型の中ではなく、押し出された後に行なわれます。そのため、内部での混練が充分に行なわれないと、外観不良が生じる可能性があるのがデメリットです。また金口の状態が成形に影響するので、まめなメンテナンスが必要になります。


なお、加熱により硬化する性質を持つ熱硬化性樹脂の加工には適していません。

真空成形

真空成型とは、シート状のプラスチック材料を使用した加工方法です。プラスチックを加熱して軟化させた後、金型とプラスチックの間を真空状態にすることで型に密着させ、成形します。単板状のシートを使用する「単発型」と、ロール状のシートやフィルムを使用して連続的に大量に成形を行なう「連続型」の2種類の加工方法があります。 


真空成形は曲線などの複雑な形状の加工も可能で、複合プラスチック材料やシルクスクリーン印刷されたシートを使用すれば、表面にバリエーションのあるデザインの製品がつくれます。また、射出成形などよりも金型の製作コストが安いのもメリットです。


なお、加熱により硬化する熱硬化性樹脂の加工には適していません。

プラスチック加工に使用される材料と特徴

プラスチックには、熱に対する性質の違いにより「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」があり、またそれぞれで適切な加工方法が異なります。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の特徴と、どんな材料があるかを解説します。

熱可塑性樹脂

熱可塑性樹脂とは、加熱すると軟化や溶融化するプラスチックのことです。容易に成形ができるため、ほとんどの成形方法に対応できます。成形した製品であっても加熱によって再び溶けることから、リサイクルしやすいというメリットもあります。


熱可搬性樹脂は、その特徴によって「汎用プラスチック」と「エンジニアリングプラスチック」に分けることができます。


▼汎用プラスチック

汎用プラスチックとは、価格が安く需要が高いため、主に大量生産に用いられるプラスチックです。ただし、性能はエンジニアリングプラスチックよりも劣ります。


主な汎用プラスチックには、以下のものがあります。

・ポリエチレン(PE)

・ポリプロピレン(PP)

・ポリ塩化ビニル(PVC)

・ポリ塩化ビニリデン(PVdC)

・ポリスチレン(PS)

・ポリビニルアルコール (PVA)

・ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)

・AS樹脂

・アクリル樹脂(PMMA) など


▼エンプラ(エンジニアリングプラスチック)

エンプラとも呼ばれているエンジニアリングプラスチックは、強度や耐熱性に優れるなど、一定の性質に特化した熱可塑性プラスチックです。明確な定義はありませんが、一般には長時間100℃以上の環境下でも使用可能であることや、引っ張り強度49MPa以上、曲げ弾性率2.5GPa以上など、卓越した機械的強度を備えた樹脂を指します。 


熱や紫外線に弱いといった汎用プラスチックが持つデメリットを補う存在であるエンプラには、以下の種類があります。

・ポリアミド(PA)

・ポリアセタール(POM)

・ポリカーボネートPC)

・変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE/m-PPO)

・グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET)

・ポリブチレンテレフタレート(PBT)

・環状ポリオレフィン(COP) など


また、エンプラよりもさらに耐熱性や耐久性に優れ、特殊な用途で使用されるスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)も存在します。

・ポリフェニレンスルファイド(PPS)

・ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)※テフロン

・ポリサルフォン(PSU/PSF)

・ポリエーテルサルフォン(PES)

・非晶ポリアリレート(PAR)

・液晶ポリマー((LCP)

・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)

・熱可塑性ポリイミド(TPI)

・ポリアミドイミド(PAI) など

熱硬化性樹脂

熱硬化性樹脂とは、加熱によって硬化するプラスチックです。熱可塑性樹脂よりも硬度が高く、耐熱性や耐電性、絶縁性などが優れています。また、熱可塑性樹脂にはない溶剤への耐性もあります。


一方で、熱可塑性樹脂よりも成形に時間がかかる、リサイクルしにくいなどのデメリットがあります。熱硬化性樹脂には以下のものがあります。

・フェノール樹脂((PF)

・エポキシ樹脂(EP)

・メラミン樹脂(MF)

・尿素樹脂/ユリア樹脂(UF)

・不飽和ポリエステル樹脂(UP/SMC/BMC)

・アルキド樹脂

・ポリウレタン(PUR/PU)

・ポリイミド(P)

プラスチック加工後のバリ取りも重要

プラスチックは加工後に、不要なプラスチックの突起である「バリ」が発生します。このバリを除去しないと、製品を扱う従業員または製品化後消費者が怪我をする原因になるほか、製品の見た目や品質、性能にも影響します。そのため、プラスチック加工後のバリ取りは必須です。


バリ取りは手作業で行なう場合と、機械で行なう場合があります。

手作業によるバリ取り

手作業でのバリ取りは、以前はヤスリや研磨シートなどを使用していましたが、現在はそれらの工具に代わり、ロータリバーや研磨ディスク、研磨ベルトなどを使用するのが一般的です。これにより作業の負担は軽減しましたが、依然として作業者への怪我やプラスチックの粉塵による影響などのリスクが伴う点を覚えておきましょう。

機械によるバリ取り

専門の機械を使用したバリ取り方法です。研磨剤や磁気を利用するものや、電解加工や化学的除去などによりバリを融解させて取り除く方法があります。機械によるバリ取りは、時間の短縮や作業人員の削減や安全性向上に貢献します。

製品に適したプラスチックと加工方法の選択肢を

プラスチックは材料によって熱によって軟化するものと、硬化する種類があります。また、加工方法によってもコストや生産できる製品の形状、大量生産の向き不向きが異なるため、材料や用途に応じた加工方法を選ぶのが重要です。プラスチック加工について不明な点がある場合は、まず担当者に相談してみましょう。

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