ものづくりプレス

2024-12-10

プラスチック中空成形(ブロー成形)

中が空洞になっているプラスチック製品を製造するときに用いる加工方法が、中空成形(ブロー成形)です。中空成形にもいろいろな種類があり、製造するプラスチック製品の用途や、重視したいポイントに応じた加工方法を選ぶのが重要です。
プラスチックの中空成形の概要や製造されたプラスチック製品の用途、中空成形の種類について解説します。中空成形での製造を検討しているときや、用途に応じたプラスチック製品の製造を検討しているときに、ぜひ参考にしてください。

プラスチック中空成形(ブロー成形)

■プラスチック「中空成形」とは

プラスチックの中空成形とは、名前の通り中が空洞になっているプラスチック製品を製造するときに用いられる加工方法です。中空成形は、以下の手順で行われています。


1.ペレット(粒)状のプラスチック原料をブロー成形機に入れる
2.溶かされたプラスチック原料がパイプ状になって出てくる(パリソン)
3.パリソンを外側のみが彫られている金型で挟む
4.パリソンの内側に空気を吹き込む
5.金型内でパリソンを冷却して固める
6.バリ取りをして完成


空気を吹いて中を膨らまし、冷まして硬化させる吹きガラスのようなイメージです。中が空洞になっているプラスチック製品を大量に製造したいときに向いています。

◇ 中空成形で製造されたプラスチック部品の用途

中空成形で製造されたプラスチック部品は、以下の用途で使用されています。


・化粧品、洗剤などの容器類
・灯油缶
・パイプ
・ダクト
・建材
・自動車用ダクト
・ホース
・サスペンションなどのカバー
・コースロープなどのスポーツ用品
・医療用タンク容器
・工業用タンクカバー
・農機具用タンク
・球場や体育館のベンチ
・自動車、車両製品
・薬品化学容器
・工業用容器
・家庭雑貨用品
・水泳コースロープ製品
・景品、販売促進品キャラクター製品
・健康・美容器具関連用品
・工業部品容器
・ジャバラ
・飼育容器
・水耕栽培容器
・スプレー容器
・農薬タンク


など
容器やタンクをはじめ、いろいろな用途で使用されるプラスチック製品に、中空成形が用いられています。中空成形にも種類があり、それぞれで特徴が異なります。次に、中空成形の種類について解説します。

■プラスチック中空成形の種類

プラスチック中空成形には、以下の種類があります。


・押出成形
・射出成形
・圧縮成形
・真空成型
・インフレーション成形
・熱プレス成形
・ディップ成形

それぞれの加工方法の特徴について解説していきます。

◇押出成形

ブロー成形機に押出機を組み合わせて中空成形する方法が、押出成形です。ブロー成形機から溶かされて出たパリソンを、押出機を使って押し出します。金型で挟み込み、空気を吹きこむと金型の内側の形に沿って膨らみ、空洞のあるプラスチック製品に成形できます。そのまま冷却して金型から取り出します。
空気を吹きこむ方向は上の場合もあれば、下や横から吹き込む場合もあります。


ブロー成形機のダイホルダー(プラスチック原料を練り込む場所)は単頭式、双頭式、4頭式があります。また、ブロー成形機も大型機、中型機、小型機があります。製造するプラスチック製品の大きさや量、プラスチック原料の種類によって使用する機械を選び、押出成形が行われています。


押出成形に使用するブロー成形機は、圧力もそれほど高くありません。ほかの成形機よりも安い価格で購入できます。金型にかかる負荷も少ないため剛性や複雑さも必要なく、金型の製造コストも低いです。


中空成形のなかでも歴史のある加工方法であり、容器にガスバリア性も付与できるため、マヨネーズやケチャップなどの食品をはじめとした多層ボトルの製造に用いられています。

◇射出成形

射出成形は、底のあるパリソン(有底パリソンまたはプリフォーム)を射出によって成形したあと、ブロー成形機に移して空気を吹きこみ、成形する方法です。底のあるペットボトルやヤクルトの容器の製造に用いられています。


成形した有底パリソンを都度ブロー成形機に移すホットパリソン法と、先に必要な有底パリソンをまとめて作っておき、再加熱してブロー成形機にまとめて移すコールドパリソン法があります。


押出成形よりも、よりボトルの寸法精度を求めるときに用いられます。量産にも向いています。


◇圧縮成形

熱を加えることで硬化する、熱硬化性プラスチックの中空成形方法として使用されているのが圧縮成形です。少数生産の場合は熱可塑性プラスチックの中空成形方法としても使われることがあります。


プラスチック原料に硬化前の熱硬化性プラスチックを混ぜ、金型の凹型のすみずみまで仕込みます。ガス抜き後凸型の金型で押しつぶし、金型の温度を200℃近くまで加熱します。金型に仕込まれた熱硬化性プラスチックが熱によって固まります。


化粧板などの種積層板、積層管、積層棒の製造のほか、近年ではプリント基板や絶縁材料として使われる種積層板の製造にも、圧縮成形が使われています。


圧縮成形はほかのプラスチック中空成形よりもかんたんにできるのが特徴です。圧縮成形の機会や金型の製造コストも低くなっています。一方で成形後はバリ取り作業が必要なこと、プラスチックが硬化する際に発生したガスが液化し、金型に付着するためこまめなメンテナンスが必要なのがデメリットです。

◇ 真空成形

真空成形とは、プラスチックのシートを原料にした成形方法です。シート状のプラスチックを加熱してやわらかくした後、シートの両端から空気が漏れないように中を真空にします。その後型に吸い込まれ、冷却して固めます。


お弁当のパックや食品トレー、卵のパックなど平らな形状のプラスチック製品の製造が可能です。なお、発泡した材料を使うとファストフード店のハンバーガー容器やインスタント麺の容器の製造もできます。

◇インフレーション成形

インフレーション成形は、円形のノズルからプラスチック原料を押し出した後、プラスチック原料の内部から空気を入れて膨らます中空成形方法です。膨らませたあとは、内側、外側から冷却して固めます。


内部から膨らませることでプラスチック原料の縦横に繊維が配向し、強度が高くなるのが特徴です。スーパーやコンビニのレジ袋、ラップフィルムの製造に用いられています。

◇熱プレス成形

シート状のプラスチック原料に熱を加えてやわらかくし、上下からプレスして形を整える中空成形方法です。熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック両方に使用できます。


熱可塑性プラスチックは、200℃ほどまで加熱したあとに金型に仕込み、冷却して硬化させます。熱硬化性プラスチックはあらかじめ低温であたためておき、200℃ほどに加熱しておいた金型に仕込んで内部で硬化させます。

◇ディップ成形

凸型の金型に離型剤を塗布して余熱し、液体状のプラスチックの槽に漬けます。液体状のプラスチックを凸型の金型の周辺に付着させ、加熱炉のなかに入れて加熱します。凸型の金型に接触している部分のみを硬化させ、冷却してから内部に空気を入れて型からはぎとり、成形します。


■プラスチック中空成形はプラスチック原料や製品の用途で選ぼう

プラスチック原料の中に空洞を作る中空成形は、容器やトレーをはじめとしたさまざまなプラスチック製品の製造に用いられています。それぞれの成形方法によって機械や金型の製造コスト、適しているプラスチック原料、作れる形状、量産に向いているか向いていないかが異なります。


プラスチック製品の用途や量などに応じて、適切な中空成形方法を選ぶのが重要です。
プラスチック製品製造を検討しているなら、コストや製造できる製品を踏まえてプロに相談するのが重要です。用途に応じたプラスチック製品製造に適した中空成形の選定につながります。


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