ものづくりプレス

2024-12-15

特殊ゴムの種類と特徴

特殊ゴムは合成ゴムの一種で、天然ゴムでは得られないさまざまな特性を持つゴム製品です。自動車業界を中心に、業界問わずさまざまな製造ラインや製品に用いられています。
当記事では特殊ゴムの概要や汎用ゴムとの違い、特殊ゴムの種類・特徴・主な用途などを解説します。


AdobeStock_164163497

■特殊ゴムとは?特徴と種類

特殊ゴムとは、「タイヤに用いることを目的にしたゴムや天然ゴム以外の合成ゴム」のことです。特殊ゴム以外の合成ゴムは汎用ゴムと呼ばれます。
特殊ゴムは汎用ゴム(天然ゴム)が持たない耐油性や耐熱性、耐候性を得ることを目的に作られました。製品の使用目的や生産会社によってさまざまな品種が存在します。
ゴムの配合や製造方法の違いによって基本構造が異なり、構造の組み合わせによってさまざまな特性を得ることが可能です。


◇汎用ゴムと特殊ゴム

汎用ゴムのうち代表的なものは天然ゴムで、合成ゴムではスチレン・ブタジエンゴム(SBR)やイソプレンゴム(IR)などが当てはまります。比較的安いコストで得られる上に、タイヤや履物、防振ゴムなどの幅広い用途に使用されます。


ただし特殊ゴムが得ている耐油性や耐熱性、耐候性を持っていないことから、油を用いる製造現場や熱がかかる場所での使用、耐老化性を必要する用途は原則としてできません。


◇特殊ゴムの種類

特殊ゴムの種類は次のとおりです。
・ブチルゴム(IIR):イソブチレンへ少量のイソプレンを加えた混合液をカチオン重合することで製造されるゴム


・エチレンプロピレンゴム(EPDM):エチレンとプロピレンとの共重合体に少量の第3成分である非共役ジエンを共重合させ、ポリマー鎖構成単位上に二重結合をもたせ硫黄加硫を可能にしたゴム


・クロロプレンゴム(CR):アセチレン法やブタジエン法などでクロロプレンを乳化重合して製造されるゴム


・アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR):アクリロニトリルとブタジエンを共重合して製造されるゴム


・水素化ニトリルゴム(HNBR):NBRポリマー中の二重結合部分を水素化して製造するゴム


・シリコーンゴム(Q):ケイ素と酸素からなるシロキサン結合のシリコンを用いて製造されるゴム


・アクリルゴム(ACM、AEM):アクリル酸エステルを主成分としたゴム


・エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO、GCO、GECO):エピクロロヒドリンの単独重合体やエピクロロヒドリンとエチレンオキシドの共重合体などで構成されるゴム


・フッ素ゴム(FKM):組成の中にフッ素含有モノマー(6フッ化プロピレン-フッ化ビニリデン共重合体)を含んでいるゴム


・クロロスルホン化ポリエチレン(CSM、ACSM):各種ポリエチレンに塩素と二酸化炭素を反応させて得られるゴムで、ACSMはさらに側鎖にアルキル基を導入したゴム


・塩素化ポリエチレン(CPE):ポリエチレンを原料に塩素化したゴム


以下ではさらに、それぞれの特殊ゴムが持つ特徴を表でまとめました。

特殊ゴムの種類 主な特徴
ブチルゴム
(IIR)
・優れた耐候性、耐熱性、耐オゾン性、耐ガス透過性、耐水性
・EPDMと相性がよいが、それ以外とは悪い
エチレンプロピレンゴム
(EPDM)
・バランスのよい耐候性、耐寒性、耐熱性、耐薬品性
・耐油性はない
クロロプレンゴム
(CR)
優れた耐候性、耐熱性、耐疲労性、難燃性、耐薬品性
アクリロニトリルブタジエンゴム
(NBR)
・優れた耐油性、耐燃料油性、耐ガス透過性
・耐候性や耐熱性は配合によって改善が可能
水素化ニトリルゴム
(HNBR)
・NBRが持つ耐油性や耐燃料油性を維持したまま耐候性や耐熱性を獲得
・機械特性も優れる
・耐寒性が少し劣る
シリコーンゴム
(Q)
・優れた耐候性、耐熱性、耐寒性、電気特性、難燃性
・自動車だけでなく輸送機や電機、機械、エネルギー分野などで幅広く活用
アクリルゴム
(ACM、AEM)
・優れた耐候性、耐熱性、対潤滑油性
・アクリル酸エステルの種類や量次第で耐熱性、耐寒性、耐油性のバランスが変化
・架橋モノマーの種類や架橋剤の組み合わせ次第でも性能が変化
エピクロルヒドリンゴム
(CO、ECO、GCO、GECO)
・COは耐油性、耐候性、耐ガス透過性に優れる
・ECOは耐寒性を改良
・GCOとGECOは軟化劣化、耐オゾン性を改良
フッ素ゴム
(FKM)
・ゴム素材の中で最高レベルの耐熱性
・耐油性、耐燃料性、耐候性、燃料透過性なども非常に高レベル
・コストが高い
クロロスルホン化ポリエチレン (CSM、ACSM) ・CSMは耐候性、耐オゾン性、耐熱性、耐摩耗性に優れ、電気特性や着色性、色調安定性もある
・ACSMは耐熱性、低温特性、動的特性に優れる
塩素化ポリエチレン
(CPE)
優れた耐候性、難燃性、耐薬品性、耐衝撃性、電気特性

(参考:J-Stage(科学技術情報発信・流通総合システム)|特殊ゴム)

■特殊ゴムの用途

タイヤには用いることを目的としていない特殊ゴムですが、その他の自動車用部品には重宝されています。例えばエンジンの燃料ホースやクランクシャフトオイルシール、シャシー・機構のブレーキホースやミッションオイルシートなど用いられてきました。


その他、特殊ゴムの種類ごとにさまざまな用途が存在します。それぞれの詳細は次のとおりです。



特殊ゴムの種類 主な用途
ブチルゴム
(IIR)
自動車等のタイヤチューブや耐熱コンベアベルト、電線被覆など
エチレンプロピレンゴム
(EPDM)
自動車関連部品に多く、タイヤを除いた自動車部品の半分以上に使われていると言われる
クロロプレンゴム
(CR)
・自動車部品や接着剤、その他一般工業用
・土木や建築用のシールやガスケットなどにも利用
アクリロニトリルブタジエンゴム
(NBR)
・自動車部品全般
・製紙や製鉄用のロール、樹脂改質や接着剤などの一般工業用
水素化ニトリルゴム
(HNBR)
タイミングベルトやオイルホースなどの自動車部品全般
シリコーンゴム
(Q)
・自動車部品全般
・パソコンのキーボードや携帯電話、各種キーパッドなど
アクリルゴム
(ACM、AEM)
自動車用のガスケットやオイルホース
エピクロルヒドリンゴム
(CO、ECO、GCO、GECO)
・自動車用の燃料部品
・プリンターやコピー機の感光体周りのゴムローラー
フッ素ゴム
(FKM)
・自動車部品全般
・半導体装置やOA関連機器など
クロロスルホン化ポリエチレン
(CSM、ACSM)
・自動車の燃料ホースやベルト
・エスカレーターのハンドレールや電線ケーブルなど
塩素化ポリエチレン
(CPE)
・自動車部品
・OA機器関連


■特殊ゴムは日本の産業に欠かせないゴム製品

特殊ゴムは天然ゴムにはない耐油性や耐熱性、耐候性を付与したゴム製品です。油を用いたり熱がかかったりする箇所で用いられます。そのため自動車のエンジンや機構などの熱や油が関係する重要部分から、その他の一般工業用ゴムとして使われてきました。


種類ごとに適切な用途があるため、それぞれに合った場所で使用しましょう。

記事検索

NEW

  • エンジニアリングプラスチック
    2025/03/21
    エンジニアリングプラスチックの進化!軽量化と高強度の両立が可能に
    スーパーエンプラは、軽量化...
  • 硬そうなタイヤ
    2025/03/20
    ゴムの硬度で何がわかる?計測方法や硬さの目安
    ゴムが持つ硬さの度合いを数...
  • フッ素樹脂
    2025/03/20
    フッ素樹脂が注目される理由!環境負荷を減らす新たな用途
    フッ素樹脂と聞くと、フライ...
  • 射出成形
    2025/03/19
    射出成形における新技術!効率化と品質向上の鍵を握るポイント
    射出成形は、プラスチック製...

CATEGORY

ARCHIVE