ものづくりプレス

2025-01-16

スチレンブタジエンゴムの特徴と用途

合成ゴムのなかでも、もっとも多く生産されているのがスチレンブタジエンゴムです。天然ゴムと少し似た構造と性質を持つスチレンブタジエンゴムには、ほかの合成ゴムとは違う性質やすぐれたメリットもあります。自動車のタイヤをはじめとしたゴム加工品を検討しているときには、スチレンブタジエンゴムが選択肢に入ります。これからゴム製品の加工や量産を検討している人のために、スチレンブタジエンゴムの特徴、長所、短所、用途について解説します。ほかの合成ゴムと比較して検討したい場合にも、ぜひ参考にしてください。

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■スチレンブタジエンゴムとは

スチレンブタジエンゴムとは、スチレンと 1,3-ブタジエンの共重合によって作られる合成ゴムです。重合の形式によって大きく分けて2種類があり、ラジカル重合である乳化重合から作られるESBR、アニオン重合である溶液重合から作られるSSBRがあります。


スチレンブタジエンゴムは品質が安定している、かつ加工しやすいため合成ゴムのなかでもっとも生産されているゴムです。合成ゴム全体の生産量を見ると、スチレンブタジエンゴムが80%ほどを占めています。


スチレンブタジエンゴムは、第一次世界大戦後の天然ゴムの需要高に対応できる代替ゴムとして、1930年代にドイツで開発されました。その後、第二次世界大戦時にはアメリカで軍事用に大量生産されています。


その後は世界的な自動車普及率の向上を受けて、現在でも自動車タイヤの用途としてスチレンブタジエンゴムの需要がさらに高まっています。合成ゴム全体の供給率からみると、スチレンブタジエンゴムは全体の36%を占めています。


■スチレンブタジエンゴムの特徴

スチレンブタジエンゴムは天然ゴムに代わる合成ゴムとして開発されたため、天然ゴムの主成分「イソプレンゴム」の構造を参考に作られました。そのため、スチレンブタジエンゴムは天然ゴムと少し似た性質を持っています。


世界でもっとも多く作られているスチレンブタジエンゴムには、長所と短所があります。スチレンブタジエンゴムが、ゴム製品の加工や用途に応じたものかを確認するのが重要です。スチレンブタジエンゴムの長所と短所それぞれを解説していきます。


◇スチレンブタジエンゴムの長所

スチレンブタジエンゴムには以下の長所があります。


・弾性にすぐれている
・加工しやすい
・強度特性にすぐれている
・耐磨耗性にすぐれている
・耐老化性にすぐれている
・耐熱性にすぐれている
・絶縁抵抗がある
・コストが安定している


天然ゴムと似た性質を持つため弾性が高いです。また、製造時の純度が高く不純物が入りにくい、加硫がしやすいことから加工面でのメリットが大きく、いろいろな用途で使用できる合成ゴムです。また、耐摩耗性や耐老化性は天然ゴムよりもすぐれ、機械的強度も高くなっています。
耐用温度範囲はおよそ −60 から 100 ℃で、耐熱性も天然ゴムより少しすぐれています。天然資源である天然ゴムよりも品質が安定していて、価格の変動もなくコストも安定しているメリットもあります。


◇スチレンブタジエンゴムの短所

スチレンブタジエンゴムには、以下の短所があります。


・引き裂き抵抗が弱い
・寒さに弱い
・耐溶剤性が低い
・耐オゾン性が低い


スチレンブタジエンゴムは、高温時の引き裂き抵抗が弱まっていくデメリットがあります。耐屈曲亀裂性そのものは低くないのですが、亀裂が一度入ってしまうと亀裂の広がるスピードが速いです。また耐寒性は凡用ゴムの中でもっとも低いため、寒い環境下での使用は向いていません。
有機溶剤(トルエン、エーテル、ベンゼンなど)、有機酸、石油類、高濃度の無機酸に対しての耐性が低くなっています。そのため、油や溶剤と一緒に使用するOリング、パッキン、オイルシールなどの用途には使用できません。


スチレンブタジエンゴムは天然ゴムの構造を参照にして作られたため、主鎖に二重結合を持っています。オゾンに触れると化学変化を起こし劣化してしまうため、オゾンへの耐性は低くなっています。


■スチレンブタジエンゴムの用途

スチレンブタジエンゴムは以下の用途で用いられています。


・自動車タイヤ
・自動車のブレーキ液系のシール用
・バッテリーケース
・リチウムイオン電池用のバインダー
・防振ゴム
・床タイル
・ベルト
・ホース
・履物
・ゴム引布
・運動用品


天然ゴムに代わる合成ゴムとして誕生し、かつすぐれた耐摩耗性や機械的強度を活かして自動車のタイヤや履物、運動用具などの負荷のかかる用途に多く用いられています。リチウムイオン電池やリチウムポリマー電池の電極を作成するときの、バインダー(結着材)としても使用されています。


■自動車普及にともなう需要が見込まれるスチレンブタジエンゴム

スチレンブタジエンゴムは、第一次世界大戦後の天然ゴムの需要高を受けて開発された合成ゴムです。天然ゴムのような弾性に加えて、天然ゴムよりも耐摩耗性や機械的強度がすぐれています。加工もしやすく価格も安定しているため、合成ゴムのなかでももっとも生産されています。


世界全体での自動車の普及を受けて、自動車のタイヤに多く用いられているスチレンブタジエンゴムの需要はさらに高まっています。ほかにも履物やスポーツ用品などの負荷のかかりやすいもの、絶縁抵抗があることからリチウム電池の結着材としても使用されています。


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