ものづくりプレス
2025-01-22
積層成形とハンドレイアップ成形
積層成形(せきそうせいけい)とは、名前のとおりペラペラの紙のような素材を何重にも重ねたものを、加圧と加熱によって固めて成形する方法です。
樹脂加工(プラスチック加工)によく用いられます。
当記事では積層成形の概要やメリット・デメリット、積層成形で作られる製品、ハンドレイアップ成形、積層成形で使う樹脂の種類などを解説します。
積層成形とは
積層成形とは、紙や布といった表皮材に樹脂を染み込ませたものを重ねた後、それを規格どおりの形に固める成形方法です。
「加工対象物に対して金型による圧力をかける方法」であることから、プレス成形(プレス加工)の一種 に分類できます。加工の際は、1つのプレス機に複数の金型がついた「多段プレス」を用いるのが一般的です。
成形方法としては、まず樹脂が浸透した表皮材を、必要とする厚さまで重ね合わせます。次にその表皮材にプレス機などを用いて外部から圧力・熱をかけます。すると重なった表皮材同士が一体化して目的とする形に成形される、という流れです。
積層成形のメリットは、本来強度が弱い樹脂素材でも、強度不足を補強できる働きがある点です。一方、深さのある立体的な形状には不向きで成形できる形状が限られるのがデメリットといえます。
積層成形の種類は、かける圧力の強さによって「高圧積層」と「低圧積層」に分かれます。
高圧積層
高圧積層とは、100~200MPaの強さで加圧を行う方法です。
高圧成形は、ユリアやフェノール、メラミン樹脂などの縮合樹脂(単量体2分子間から、水やアルコールなどの簡単な分子を分離して結合して生成された樹脂)の加工に用いられます。これらは成形に際しガスが発生します。
低圧積層
低圧成形とは、0~50MPaの強さで加圧を行う方法です。
低圧成形は、不飽和ポリエステル樹脂やエポシキ樹脂などの、樹脂が硬化したときに揮発物質を副生しないものの加工に用いられます。これらは成形に際しガスが発生しません。
ハンドレイアップ成形について
積層成形と似た成形方法に「ハンドレイアップ成形」があります。ハンドレイアップ成形とは、ローラーを使ってガラス繊維へ液体の樹脂素材を染み込ませたものを、何枚か重ねて成形を行う方法です。原則としてプレス機は用いず、すべて手作業で行います。
成形の主な流れは次のとおりです。
1. 型に離型処理を施し、スプレーでゲルコート樹脂を吹き付けておく
2. 型にガラス繊維を貼り、液状の樹脂をローラーで塗って染み込ませる
3. ガラス繊維と樹脂の間にある空気をローラーで押し出す「脱泡」を行う
4. 目的の厚さになるまで2と3を繰り返す
5. 成形終了後に樹脂を硬化させ型から抜く
手作業で行われるため、作業者の熟練度や体調次第で品質が変化します。しかし作業者の腕次第では、複雑な形状にも対応可能です。
ハンドレイアップ成形は「FRP(Fiber Reinforced Plastic:繊維強化プラスチック )」の成形によく用いられます。
積層成形の対象はプラスチック製品が主
積層成形の対象は、主にプラスチック製品です。製品例 として、主に以下のものが挙げられます。
• 電気絶縁基盤
• プリント基盤
• 化粧板
• ドアの指詰め防止機能
• 積層棒
• 積層管 など
ちなみにプラスチック製品を成形する他の方法としては、以下の成形方法が挙げられます。
• 射出成形
• 押出し成形
• ブロー成形
• トランスファ成形
積層成形に使用される樹脂
積層成形に使用される樹脂は「熱可塑性樹脂(ねつかそせいじゅし)」と「熱硬化性樹脂(ねつこうかせいじゅし)」に分けられます。
積層成形で使用される主な樹脂の種類は熱硬化性樹脂です。
熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂とは、一定の温度まで熱を加えると柔らかくなり、再び冷やすと硬化するといった、熱によって個体と液体の状態を行き来する可塑性を持った樹脂素材のことです。
積層成形において、熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂ほど用いられませんが、まったく使えないわけではありません。
むしろ熱可塑性樹脂は積層成形を含め、射出成形や押出成形、ブロー成形など幅広い成形方法に対応できる樹脂素材です。
熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂とは、硬化した後は熱を加えても液体にならない、文字通り「熱硬化」する樹脂素材のことです。耐熱性や機械的強度に優れています。そのため積層成形において、プレス機による高圧・高熱を問題なく加えられます。
しかし熱硬化性樹脂は「一度固まると溶けない」という性質から、加工方法も限定されます。具体的には積層成形のような圧縮成形や、金型・注型に流し込んで固める成形です。
圧空成形や延伸成形、ブロー成形など、樹脂の伸ばしや溶かしを伴う成形には用いられません。
積層成形の注意点
積層成形における主な注意点は次のとおりです。
• 使用する樹脂の量が少なすぎると不均一になって成形物が脆弱になる
• 使用する樹脂の量が多すぎるとクラック(亀裂やひび割れ)が発生しやすくなる
• 加圧効果時間が速すぎると樹脂分がプレス機の外側にはみ出してしまう
• 加工前に表皮材の厚さの確認を怠ると目的の成形物にならない など
また作業にはプレス機を用いるため、作業前に以下の点を確認しておきましょう。
• プレス機が正しく動作するかどうか
• プレス機の周辺に作業員がいないか
• 作業前にプレス機の動作や安全装置などの点検作業を済ませているか
• 作業員はプレス機の操作や樹脂加工についての教育を受けているか
• 保護具と作業服は正しく装着されているか など
積層成形は素材を重ねて固める成形方法
積層成形は、樹脂を染み込ませた素材を重ねた後、プレス機で加圧・加熱することで固めて成形を行う方法です。熱硬化性樹脂がよく使用され、製造する製品もプラスチック製品が主になります。
作業前には「製品に必要な厚み」や「プレス機や作業手順の確認・点検」を怠らず、安全な作業を心がけましょう。
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