ものづくりプレス

2024-04-25

ウレタンゴムの特徴と加工方法

性質や特性などを知ることで、さまざまな用途に応用することができ、優れた製品づくりへとつながります。
この記事では、ウレタンゴムの特徴、メリット、デメリット、加工方法を解説します。

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ウレタンゴムの特徴

ウレタンゴムは合成ゴムの中でもゴムの弾性、プラスチックの剛性の両方の性質を持ち合わせたエラストマーと呼ばれる素材で、特に耐摩耗性は合成ゴムの中でトップクラスを誇ります。ポリウレタンゴムや(ポリ)ウレタンエラストマーと呼ばれることもあります。結合方式によって「ポリエステル系」と「ポリエーテル系」の2種類あり、一般に前者は耐油性が優れている反面で加水分解しやすく、後者はその反対の性質を持ち、機械的強度が高いのが特徴です。さらに配合する樹脂の種類により、熱を加えると軟化する熱可塑性と硬化する熱硬化性の2つのタイプがあります。

ウレタンゴムの用途

ウレタンゴムは、機械的強度や加工性の高さなどの性質を活かし、主に以下のような用途で用いられています。
・工業用品(シール、ベルト、パッキン、ライニング、カップリングなど)
・履物(サンダル、スニーカーなどの一般的なものから、スキーブーツなどのスポーツ用品まで)
・電気部品(高圧パッキンなど)
・タイヤ、ローラー、キャスター(フォークリフトやジェットコースターなどのソリッドタイヤ、機械製品などの工業用ローラーやキャスターなど)

ウレタンゴムのメリット

具体的にウレタンゴムにはどのようなメリットがあるのかをご紹介します。主に以下のような特徴が挙げられます。


▼耐摩耗性が高い
ウレタンゴムは合成ゴムの中でも最高クラスの耐摩耗性を持っていますが、ポリエステル系の方がポリエーテル系よりも優れています。


▼機械的強度が高い
引張強度や引裂強度などが優れています。中でも引裂強度は、二トリルブタジエンゴム(NBR)やクロロプレンゴム(CR)が5~25Mpa、天然ゴム(NR)が3~35Mpaなのに対し、ウレタンゴムでは20~45Mpaです。


▼耐油性が高い
ウレタンゴムはほかの合成ゴムと比較して高い耐油性を持っています。油と使用しても影響を受けにくくなっています。しかし、ポリエステル系の方がポリエーテル系よりも優れています。


▼耐荷重性が高い
弾性と剛性のあるウレタンゴムは圧縮永久ひずみにも優れているため、荷重による変形などが比較的少ないとされています。


▼弾性・柔軟性が高い
柔軟性やゴム弾性が高いため、優れた消音・防振硬化などを発揮します。


▼耐候性や耐オゾン性が高い
耐候性や耐オゾン性に優れており、屋外で使用する機械や製品に最適な素材です。


▼軽量
ウレタンゴムの比重は1.0~1.3程度と軽く、製品の軽量化にも貢献します。

▼加工性が高い
ウレタンゴムは加工しやすい素材のため、いろいろな加工方法が選べます。設備や型の製作コストも低く、種類によっては手作業も可能です。

ウレタンゴムのデメリット

機械的強度が高く、多くの長所を持つウレタンゴムですが、以下のようなデメリットも持ち合わせています。


▼耐水性、耐湿性が低い

ウレタンゴムのうち、エステル系は構造上の理由により加水分解を起こしやすいため、耐水性や耐湿性が劣ります。しかしエーテル系のウレタンゴムでは問題ないとされています。


▼耐熱性・耐寒性が劣る
一般的なウレタンゴムはその構造上熱に弱く、耐熱温度は80℃程度とされています。また耐寒温度もマイナス30~60℃ほどで、合成ゴムの中では比較的劣ります。しかしウレタンゴムの中でもポリエーテル系ウレタンゴムは、ポリエステルウレタンゴムよりも耐寒性に優れています。また耐熱性や耐寒性を高めたグレードのウレタンゴムもあります。


▼耐薬品性、耐溶剤性が低い
ガソリンや軽油には高い耐性を示しますが、酸やアルカリ、エーテル、ケトンなどに耐性はほとんどありません。

ウレタンゴムの主な成形・加工方法

ウレタンゴムの成形には、以下のような方法があります。


① 射出成形(インジェクション成形)
② 注型成形(キャスタブルタイプ)
③ プレス成形(ミラブルタイプ)

注型成形(キャスタブルタイプ)

液状の原料と硬化剤を混ぜたものを熱した金型に入れ、一次加硫します。その後二次加硫として一定期間熟成させた後、バリ取りどの処理をして完成します。金型の製作費が比較的安く、複雑な形状に対応する一方で、生産性は劣ります。

射出成形(インジェクション成形)

ペレット状の原料を加熱して溶かし、金型に注入して成形するため、熱可塑性ウレタンゴムに適した方法です。成形機や金型が高価ですが、大量生産が可能なため、数量が多い場合は単価を抑えることができます。

プレス成形 (ミラブルタイプ)

混練りしてシート状にしたウレタンゴムを金型にセットし、プレス機で上から圧力をかけて成形する方法です。上下で異なる形の金型をセットすれば、複雑な形状の製品の成形も可能です。大量生産向きで、射出成形よりも金型を安く製作できるのもメリットです。

切削加工/旋盤加工

ワークに刃物を直接あてて加工する方法です。切削加工は、固定したワークを刃物のついた工具で切断、穴あけ、削りなどを行なう加工で、旋盤加工はその反対に、回転するワークを刃の付いた工具で加工します。金型を使用しないため、金型製造にかかるコストや期間が節約できますが、基本的に1つずつ加工するため、大量生産には不向きと言えます。

ライニング、焼き付け加工

ウレタンゴムを金属などの表面や内側に接着剤や熱で定着させる加工方法です。主に金属の保護や摩擦を高める目的で行ない、工業用機械のローラーやキャスター、ソリッドタイヤ、ゴムリング、ゴム筒などに用いられます。

ウレタンゴムの特徴を生かした製品づくりを

プラスチックの剛性と合成ゴムの弾性を兼ね備えたウレタンゴムは、軽量で耐摩擦性などの機械的特性が優れているのに加え、加工がしやすいことから、汎用性の高い素材と言えます。しかしその一方で、種類によっては水や熱に弱く、用途が限られることもあります。
ウレタンゴムの特徴を理解し、目的に合ったグレードや加工方法を選択することが高品質の製品づくりにつながります。
ウレタンゴムや加工に関する質問やお問合せは、経験と実績が豊富な当社にお気軽にご相談ください。

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