ものづくりプレス
2025-02-10
ガラスの成形方法を形状別に解説
自動車やレンズなどの製品で使用されるガラスには、さまざまな成形方法が存在します。
ガラスを製造する際は、各方法の特徴を理解し、製品に適した成形を行うことが大切です。
本記事では、ガラス製品のタイプ別に採用される成形方法や、ガラス・樹脂の成形の違いについて解説していきます。
成形前に知っておくべきガラスの性質
ガラス製品は調合した原料を溶解し、成形・徐冷・検査を経て、商品として出荷されます。
成形の工程では
ロールアウト法
ダウンドロー法
フロート法
など
さまざまな製法が存在しますが、ガラス製品の仕様に応じて選ぶことが基本です。成形方法を選ぶ際には、事前に知っておきたいガラスの性質があります。
それは、溶融ガラスは温度に依存して粘度が変わり、低温になると粘度が著しく上昇する点です。弾性体となった溶融ガラスを製品に合わせて適切に制御すれば、高精度の寸法かつ大量製造が可能となり、コスト削減にも繋がります。
製品の歩留まり率を高め、製造コストの最適化を図るためには、溶融ガラスの各温度における粘度・表面張力・粘弾性を理解しておきましょう。
製品タイプ別ガラスの成形方法
ガラスの成形は製品に応じて、適する製法も異なってきます。ここでは、ガラス製品のタイプ別に、成形方法をみていきましょう。
◇板状ガラス
板状ガラスに適した成形方法が、フロート法・ロールアウト法・引き上げ法・ダウンドロー法です。主に、用途・ガラスの組成・コストなどで使い分けられている、各成形方法の詳細を解説していきます。
▼フロート法
フロート法とは、錫とガラスの比重差を利用した成形方法です。錫には、ガラスより重たく、なおかつガラスと混ざらない性質があります。
この性質を利用した具体的な成形手順は次の通りです。
溶融錫をフロートバス内に満たし、その上に約1,600℃で溶融したガラスを流し込んでいきます。溶融ガラスは錫より軽くて濡れ合わず、溶融錫上を浮かびながら広がっていくので、上下面が平行で鏡のような平滑な板状ガラスを製造することが可能です。
ガラスは円形に広がり、次第に厚みは薄くなっていきますが、幅や厚みはフロートバスへの流し込み量や徐冷炉の搬送ロールによるリボン牽引速度で調節します。後述のロールアウト法に比べ、大量生産に向いている成形法です。
▼ロールアウト法
ロールアウト法とは、水平な鋳込鉄盤上に溶融ガラスを注ぎ込み、2本の水冷ロールを通して製板する成形法です。ロールがガラスを押し広げていくため、ガラスの厚さは、鉄盤に固定されているロール間の高さで決まります。
浴室やトイレなど視界を遮る用途で使用する際は、型板ガラスに型模様を付けるため、2本のロールのうち下側のロールに模様の彫刻を施して転写します。
ロールを通したガラスは徐冷窯へ送られ、冷却した後、定められた寸法に切断して出荷します。型板ガラスに転写を行う関係で、研磨が必要なため、比較的少量多品種向きの製法です。
▼引き上げ法(アップドロー法)
引き上げ法とは、溶融ガラスを垂直に引き上げ、成形する製法です。別名アップドロー法とも呼ばれ、成形法を発明者によってさらに細かく分けると、フルコール法やコルバーン法などが存在します。
フルコール法とは、ベルギー人のフルコールが発明した方式です。溶融窯の前端の引き上げ室に、デビトーズという中央に細長いスリットがある耐火物を、ガラス面に押し込みます。押し込むことで、スリット部分からガラスが盛り上がってくるため、鉛直に引き上げて板状ガラスを製造する仕組みです。
一方、コルバーン法とは、アメリカ人のコルバーンが発明した方式で、溶融ガラスをストレッチロールの間に通し、垂直に引き上げていきます。その後、ベンディングローラーで水平に曲げ、徐冷炉に入れることで面精度の高い薄板ガラスを製造可能です。
▼ダウンドロー法
ダウンドロー法とは文字通り、アップドロー法と逆の原理でガラスを製造する方法です。溶融ガラスをスリットに通し、下へ引き出すことで、ガラスを成形していきます。
高精度な薄板ガラスの製造に適した成形方法です。
◇管状ガラス
管状ガラスで採用される成形方法が、ダンナー法・ダウンドロー法・アップドロー法・ベロー法です。順番に詳細を見ていきましょう。
▼ダンナー法
ダンナー法とは、傾斜して回転する筒状部材のマンドレルに溶融ガラスを巻き付け、回転軸内のパイプ内から吹き込まれるエアーと管引きの力で成形する製法です。選択するマンドレルの径により、製造するガラス径も変えられるため、柔軟に製品仕様に応えられるのがメリットと言えます。
ダンナー法は比較的粘度の低いガラスの成形に適した製法で、大量生産にも採用されるのが特徴です。
▼ダウンドロー法・アップドロー法
先述のダウンドロー法・アップドロー法は、管状ガラスでも用いられています。ダウンドロー法に関しては、決められた外径の管状ガラスを大量生産する際に、最適な成形方法です。
一方、アップドロー法は引き上げ管の外径・引き上げ速度などで、管状ガラスの外径を調節できます。しかし、外径の精度は低く、大量生産に向いていないのがデメリットです。アップドロー法は昨今において、一般的な成形方法ではなくなっています。
▼ベロー法
ベロー法とは、溶融ガラスが溜め込まれたタンクの底に、シリンダー状の開口部を設置し、流れ出るガラスを引くことで管状に広げる成形方法です。ガラスの流出量に関しては、円錐状のマンドレルの高さを調節することで、加減できます。
回転するマンドレルから流れ出た溶融ガラスは、ブローパイプから吹き込まれる圧縮空気により、管状に成形される仕組みです。引き出された管状ガラスは、そのまま切断、もしくは水平方向に曲げて管引きされます。
◇中空製品
中空ガラス製品では、主にブロー成形の製法が活用されています。その特徴を見ていきましょう。
▼ブロー成形
ブロー成形とは、溶融ガラスをパイプ状に押し出し(パリソン)、成形していく製法です。成形方法としては、大別するとブロー&ブロー方式と、プレス&ブロー方式の2種類が存在します。
ブロー&ブロー方式では、パリソンに高圧空気を吹き込み、成形を行います。一方、プレス&ブロー方式は、金型・棒状のプランジャーでパリソンを下方から突き上げ、成形を行う仕組みです。
ブロー成形は大量生産・少量生産いずれにも適した方法で、多彩なガラス製品の製造におすすめできます。
◇その他(レンズ、食器など)
最後に、レンズや食器などの製品で採用されるプレス成形について、解説していきます。
▼プレス成形
プレス成形とは、ガラスの加圧・押し当てなどを行うことで、成形する方法です。製法としては、ダイレクトプレス成形法やモールドプレス成形法などが存在します。
ダイレクトプレス成形法は、溶融したガラス塊を成形して型枠にセットし、リングとプランジャーを用いて目的の形へ圧縮する仕組みです。対して、モールドプレス成形法では、まず球状もしくは回転楕円体に成形したガラスを、金型内にセットします。そのまま加熱・加圧することで、金型内にガラスが行き渡り、成形される原理です。
ガラスの形状は型次第で変えられるため、自由度の高さや後加工なしで高精度な成形を行えるのがメリットと言えます。しかし、取り出し時に破損の恐れがあるので、利用可能な製品が限られている点に注意が必要です。
他にも、滴下した溶融ガラスを冷却し、ガラス製品へ成形する液滴成形法や、人体に安全な人工繊維を作るグラスファイバー成形なども存在します。
ガラスと樹脂の成形の違い
ガラスと同様に樹脂も成形され、さまざまな製品となって活用されています。ここでは、ガラスと樹脂の成形の違いについて、見ていきましょう。
◇その他(レンズ、食器など) ◇ガラス成形では射出成形が一般的ではない理由
樹脂では原料を加熱して金型へ流し込み、冷却する射出成形が採用されていますが、ガラスでは射出成形の利用が一般的ではありません。大きな理由としては、溶融温度と流動値の違いが挙げられます。
樹脂の溶融温度は200~350℃程度であり、流動値も高いため、比較的簡単に金型内へ射出可能です。一方、ガラスは溶融温度が1200~1400℃前後と言われており、温度をキープするのは容易ではありません。流動値に関しても、樹脂に比べると非常に低いため、金型へ射出するのは困難です。
射出成形に適さないガラスですが、一部製品においては利用されています。ただし、ガラスは脆い性質で離型も難しいので、単純な形状の製品にのみ採用されます。
◇ガラス成形に求められる金型の条件とは
ガラスは先述の通り、溶融温度が1200~1400℃前後であるため、金型には耐熱性と強度が必要不可欠です。これまで、溶融ガラスの金型材料には、鉄系合金や銅系合金が利用されてきました。
しかし、鉄系合金は銅系合金より熱伝導率が低く、ガラス製造時の温度勾配が大きいので、変形や割れを引き起こしやすく耐久性は優れていません。よって、昨今では離型性も高い銅系合金が採用されています。
繰り返しの高温にも耐えうる耐熱性や熱伝導性が、ガラス成形に使用される金型には必要です。
ガラス成形のまとめ
ガラス成形は利用する方法によって、製品の品質だけでなく、生産性やコストなど利益に繋がる部分にも大きく影響します。製造する製品により、最適な成形方法を選ぶことが極めて重要です。
正しい成形方法で品質の良いガラス製品の製造を検討してみましょう。
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